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普通なら断られる提案をしてみると店員さんはあっさりと頷いて

「いいですよ!麗奈ちゃんが悠太くんの同居人。美鈴を姉として紹介するので」

と言ってのけた。その返答はわかってました。さっき姉ちゃん同伴でOKって言われた時点で。


でも何そのハーレム系主人公みたいな彼氏。俺だったら男性経験0で心配している女友達がそんなやつ連れてきたら、絶対に別れさせるまである。


もしかしたらそれが狙いか?いや、そうしたらまたせっつかれるから無いか。逆に同居人、姉含めてこれだけ懇意にしている彼氏が、居るとアピールして友達からの攻撃を無くそうという算段なのかも知れない。


「これで悠太くんが年上お姉さんに食われてヤンデレ化する未来から涼夏を救えたわね」

『私も年増から悠太を守るよ( *`ω´)』

なんでお前ら年上に対してそんなに攻撃的なんだよ、

麗奈の文章に関しては、目の前に店員さんが居るのにも関わらず無遠慮な単語を用いている。流石に配慮して俺にしか見えない角度にはなっているが……。

山本さんの時から年上に対して敵対心をいだいているようだが、お前も俺より一個だが年上だぞ。


「落ち着けよ。麗奈にもさっき言ったばかりだけど、俺は今恋愛をする気はない」

「あんたになくても相手はわからないでしょ。飢えてたら悠太くんみたいな、小動物はイチコロよ」


その小動物にワンパンも入れれなかった美鈴は……いや、筋力が落ちた今なら小学生にすら負けるかも知れないな。

「友達も彼氏持ちなので流石に悠太くんを取って食ったりはしませんよ……でも悠太くんは可愛いから別枠も有り得ますかね」


フォローするならちゃんとフォローしてくれ。あなたまで自信なさげに言われると俺も心配になってくる。

『別枠だろうとなんだろうと君はお姉さんが守るからね、この拳で( ´_ゝ`)』

琥珀さんにでも習ったのか、ファイティングポーズを取り、拳を突き出す麗奈。その拳には傷一つなく、指の柔らかさ、手の甲の肌のきめ細かさ、どれを取ってもその拳では俺を守れそうにないけど、ここは黙っておこう。可愛いから。

「おう、頼りにしてるよ」


『お姉さんに、任せなさい』

「あら、私も守るわよ。この拳で」

ぶおん!!と風切り音を立てて、俺の鼻先で止まった美鈴の拳に、拳風を受けた俺の前髪が横に靡いた。

ん?俺を仕留める拳じゃなかったか?今。このゴリラのような威力の拳をか弱いお姉さんに、叩き込んだら冗談じゃ済まなそう。俺を守ったとしても涼夏が悲しむ未来が垣間見える。


「お、おう、お前は力を抑えるんだぞ。人間はお前と違って壊れやすいんだ……100分の1くらいで良いんだ。全力を尽くす必要はない」


「失礼しちゃうわ!私も人間よ!!」


「そうだな。美鈴がそう思ってるならきっとそうだ、だからその振り上げた拳を納めて、後一回でも入院したら俺、進級できない」

「それは……涼夏が悲しむから出来ないわね……でも次同じ事を言ったらもいじゃうから」

「わかった、肝に命じておく……そろそろ会計済ませて出るか。いつまでも店にいたら店員さんに迷惑がかかる」

と言ってる間にも店の扉を抜けて入ってきたお客さんがちらほら。他の店員さんが対応してるみたいだが、買いたいものが決まっている以上、この店員さんをこの茶番に付き合わせるのも忍びない。

「そうね。それじゃあ会計を済ませて出ましょうか」


『私これ買います(*´꒳`*)』


「わかりました!悠太くん達とお話しするの楽しくて、つい羽目を外しちゃいましたねっそれではこちらへどうぞー」


店員さんの案内について行き、会計を済ませた俺たちが、デパートの外に出る頃にはすっかり太陽が沈みかけ、夕方の日差しが眩しく差し込んでいた。

帰り道を3人で腕を組んで歩いている。俺は拒否したが2人によって強制だ。

3人とも思い思いのプレゼントを買えたのでご満悦だ、帰りの足取りも軽やかな物になっている。むしろ3人とも別々の種類の物を示し合わせて買ったのでラーメンの全部乗せのような合わせ技も期待できる。

俺の服を着て、麗奈のエプロンをつけて、美鈴の髪留めをつけた涼夏は普段制服以外では履かないスカートを履いて恥じらう姿を見せつつ。俺たちにお礼を言うだろう。


「何ニヤニヤしてるのよ」

「俺たちのプレゼントを受け取った姿を想像してな。あいつの事だからもちろん喜んでくれるだろうけど」

「それはニヤついてしまうわね。私も今から妄想してみてもいいかな?」

『やめて、収集つかなくなるよ(^◇^;)』

麗奈にまで言われるとは、流石クレイジーストーカーは伊達じゃない。

美鈴は俺の事を放って置けないと表現したが、美鈴の方こそ放っておけない。色んな意味で。


「そうね。悲しいけど麗奈さんのいう通りだわ。帰ってから妄想するとしましょう」

その辺は今日の出来事の中で成長したみたいだ。

「ところで悠太くん、ずっと言おうと思ってたんだけど……その……店員さんから貰った服」

歯切れの悪い言い方で、美鈴が服の首元を指差す。


「何だ?なんか変か?」

そもそも俺は男なので、変で当然だが。

「タグがつきっぱなしで一緒に歩いてるのも恥ずかしいわね」





「取ってくれ!!!!てか気付いてたなら店にいた時に教えてくれよ!!」

「ふふ、いつ外すのかなって思っていたわ。全く、しょうがない。本当に悠太くんは放っておけないわ」


お前にだけは言われたくない。確実に。


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