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56頁


レジにて料金を払い終えると、ようやく妄想から帰ってきた美鈴が店員に連れられてレジへとやってきた。

「なんで止めてくれないのよ、店員さんに注意されちゃったじゃない」

やめろ、話しかけるんじゃない、身内だと思われるでしょうが。

「お連れさまですか?」


若干訝しげな表情の店員さんが訪ねてきた。

いえいえ、全然知りません。もし彼女が俺の事を知っていたとしても他人の空似ですと言ってやりたい。

だがまあ、今度こそ放っておけないよな。


「友達がご迷惑おかけしたみたいで、すみませんでした」

仕方がないので店員さんに誠心誠意物すごく、申し訳なさそうに頭を下げる。横目で見ると麗奈も頭を下げている。

ここまでやっておけば、店内で騒いだ程度のことくらい、余程のことがない限りは許してもらえるだろう。


「ふぅ、お友達に免じて今回は許します」

「ありがとうございます。本当にすみませんでした!」

「そこまで丁寧に謝れるなんて……最近の子にしては偉いわねー!あなたも、もう店内で騒いじゃダメよ?」

「……ごめんなさい」

一度顔を上げ。美鈴と共にもう一度念入りに頭を下げると、店員さんは「じゃあ、もう行くわね」と言ってレジへと戻っていった。


「ごめんなさい……」

3人で店員さんを見送った後、美鈴が謝ってきた。

いつもの美鈴に似合わず、あからさまに肩と眉を下げ、うるうると瞳を潤ませている。

「気にすんなよ、愛が溢れてしまったんだよな?」

『好きな人に夢中になっちゃうのは仕方ないよ、ただ場所を考えないとねえ(*´꒳`*)』

「うぅ、気をつけます……」


姉が妹に言い聞かせるようにして、美鈴を優しく叱りつける麗奈はとても姉感が溢れている。

「まあ、言い返さないとこ見ると本当に反省してるみたいだから本当気にすんな……そうだ、髪留めは決まったのか?」

「うん、これ」

そう言って美鈴が見せてきたのは、1枚の白い羽がデザインされたヘアピンだった。

大飯ぐらいの割に痩せていて軽やかに走ったり、飛んだりするあいつにはピッタリだな。


「いいんじゃねえか、あいつに似合うと思う」

『そうだね(๑>◡<๑)お姉さんも涼夏が天使に見える時があるよ(๑˃̵ᴗ˂̵)』


それは言い過ぎ、と言いたいところだけど、四年も姿を見せず心配ばかりかけていた俺の力になってくれる涼夏は天使というか、女神というか。麗奈の言い分を認めざるを得ないので否定せず、黙って出かけた言葉を飲み込んでおく。


「今日はすんなり決まって良かったな」

正直、美鈴のプレゼント選びが1番時間かかると思っていたので、拍子抜けしている。

「元々一度来た時に候補は絞ってあって、今日はその中から選ぶだけだったから」


「そうか。んじゃ、それ俺が代わりに買ってきてやろうか?」


今からもう一度、あのレジに行くのは酷だろう。代わりを買って出る。

「いいえ、私がいくわ。このまま帰ったら涼夏と来れないじゃない」


一代決心!と言わんばかりに胸を張り潤んでいた目を拭いしっかりと前を向いた。

あくまでも行動原理は涼夏の為なのね、本人が行くと言うなら止めはしないけど。

それでも、美鈴の指先は不安げに震えている。


「一緒に行ってやるか、友達のよしみだ」

同意を求めようと麗奈の方を見ると、行く気満々で俺と美鈴の腕を組んで、自分は俺の隣に落ち着いた。

「いや、腕は組まなくてもいいだろ」

『君が安心するなら美鈴ちゃんも、安心するでしょ?(*゜▽゜*)』


「麗奈さん……!」

美鈴の、麗奈を見る目が熱を帯びているのは、気のせいではないだろう。

なんだ?麗奈と美鈴の百合が始まるのか?見たいのは山々だ。でもこれ以上この場所で騒いだら今度こそ出禁にされてしまう。

「おい。いくぞ」


美鈴の腕を引っ張ってレジへと向かうと、先程の店員さんが、腕を組んで仁王立ちして俺達を待ち構えていた。


「あの……さっきはお店の中で騒いじゃってすみませんでした」


「きちんと謝って貰ったからいいのよ、それ買うんでしょ?誰かに送るの?」


店員さんが美鈴の持っている髪留めを指差し、笑顔で問いかけた。


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