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「ありがとうな、助かる」

麗奈の頭を撫で、とりあえずお礼の言葉を述べておく。

『約束、だからね』


「むーっ2人でわかり合ってますみたいな感じ出されると寂しいわね。私も!」

そう言って俺の右腕に美鈴が組みついた。

高身長2人に挟まれる俺は確実に子供。

なんだよ。俺のこと嫌いなんだから麗奈の方行けば良いのに。

「麗奈の左側も空いてるぞ」


「麗奈さんは尊すぎるのよ。だから悠太くんで妥協してるの。それにあなた、まだ病み上がりなんだから歩き過ぎると足疲れちゃうでしょ、だから体重かけていいわよ」


ぐぬぬ、良い奴だけど前半の言い草がムカつく……!

「はぁ……憎まれ口叩かなきゃ、本当にいい奴なんだけどな、お前は」


「思ってること言っただけよ。さ!時間は有限、さっさと涼夏のプレゼント買いに行くわよ!」



ほぼ確実にお前の所為で足止め食ったんだの。とは言わない、言ったところで更に入店が遅れる。

「どっからいく?」

『まずは美鈴ちゃんの髪留めから選ぼ(*゜▽゜*)』


1番時間のかかりそうな用事から終わらせてしまおうと言う麗奈の配慮だろう。だが麗奈、同じくらい俺も時間がかかるぞ。きっと。


「そうですねっ、私のを選んでしまえば2人が買うのは同じ店ですし。じゃあお言葉に甘えてアクセサリーショップから行きましょ!」

2人とも足が長いから一歩一歩が大きい。俺は引き摺られるようにしてついていくが、側から見たらこれは両手に華なのでは?

いや、そんなわけねえか、俺、今、由奈だもんな……。


エスカレーターで2階にあがると、ファンシーな小物が立ち並ぶ雑貨店に到着。うん、あいつが好きそうなものばかりだ。

「よし。選ぶわよ」

空いている方の手でガッツポーズをして店に入ろうとする美鈴の腕を引いて引き止める。

「どうして止まるのよ」


「見ろ、店の入り口を、このままじゃ入れないだろ?」

意外と広い店の入り口の真ん中にはポールが立っていて左右に分かれている。入り口と出口だと思うけど。

つまりこのまま直進されると俺が激突する。


「そんなのやってみないとわからないじゃない」

正気か?美鈴の顔を見るとニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。

このアマ、確信犯か……。

「こんな可愛い系の店じゃ男も居ねえだろうし、離してくれ」

『美鈴ちゃん離していいよ(*゜▽゜*)』

「いえいえ、麗奈さんこそ、これは私が面倒見るので離して良いですよ」

『悠太は私が面倒見るからいいよ(*´꒳`*)』

「そんな麗奈さんの手を煩わせるまでもないですよ。こんなやつ、私が」

『悠太連れてたら美鈴ちゃんが物色し辛いから(=´∀`)』

「私くらいになるとこの程度のやつを連れてようが問題ないですよっ、麗奈さん歩き疲れましたよね!」


なんだか張り合う2人について行けない俺。

なんで会話が進む度に俺がコケ落とされなきゃいけないんだ。泣くぞ!泣いちゃうぞ!

麗奈はわかるけど美鈴は張り合わなくていいだろ。


ん?グイグイと引っ張りあってる気がする。

このままいくと……。

「おい、2人とも離してくれ」

「悠太くんは黙ってなさい!」

『君は黙っててね( *`ω´)』

ぐぐぐっと左右から引っ張られ、俺の腕が限界まで引き伸ばされる。

これ以上いくと肩が外れてしまう。


馬鹿力の美鈴と張り合える麗奈のフィジカルはどこからくるんだ、約束。という言葉に対して発揮される不思議なパワーでもあるのか?そうだな、この現象はマジカル麗奈ちゃんとでも名付けておくか。


この場合、痛がったら優しい方が手を離すと言うのがセオリーだ、ちょうど今痛くなりはじめたので、演技をしてみるとしよう。


「………………いたっ!」

「あっ、ごめん!」

「……ぁ」

よりにもよって2人同時に手を離した為、受け身も取れず前のめりに倒れこむ。ゴスン!と鈍い音がして額がデパートの硬い床に打ち付けられた。


そうなるよね……2人とも根がいい子だもん。試すような真似をした俺が悪いんだ……。


「大丈夫!?痛かったでしょ今の!」

「大丈夫だ、気にすんな」

ジンジンと痛む額を抑えつつ、痩せ我慢で立ち上がる。

おっとと、ちょっとよろけやがる。

「頭を打ったんだから……ちょっと待ってなさい」

美鈴がどこかへ走り去っていった。


『ごめんなさい……お姉さん調子に乗り過ぎちゃった……』


「大丈夫だよこれくらい。俺は頑丈だから」

『でも膝が震えてるよ、何処かで休む?』

軽く脳が揺れたのかもしれん。確かに膝が笑っている。

「少し経てば落ち着く……美鈴も待ってないとかわいそうだし」


『じゃあお姉さんに寄りかかってていいよ』

後ろから包み込むように抱きつかれ、体が麗奈の方へと傾く。

「悪いな、助かる」

『元はと言えばお姉さんが悪いんだから。いいの』



「あー!少し目を離した隙にまたイチャイチャしてる!じゃないわ。はい、これ」

美鈴から手渡されたものはペットボトルの水だった。

「本当は氷の方が良いのかもしれないけど。自販機で買ってきたから使って」

「ありがとう。いくらだった?」

「いらないわよ。私が悪いんだから、差し出しても受け取らないわよ」

それじゃ、素直に受け取るとしよう。

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