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神田さんの騒動から一夜明けて今日は美鈴とお買い物の日。ただのお買い物ではない。涼の16歳の誕生日を祝う為のプレゼントを買いに行く為、非常に大切なミッションである。

ただでさえ四年も心労をかけたんだ、あいつが1番喜ぶ物を用意してやりたい。と言う気持ちで、日曜日も出社して行く蓮さんと姉ちゃんを送り出し、張り切って着替えているのだが……。


「はぁ、また外でこの服を着ることになろうとは……」

非常に憂鬱である。

今日のコーデは美鈴の指定通り2週間前唯と出かける時に着ていった服装と全く同じ。誰得絶対領域をこさえたハイソックス&ショートパンツ。誰得肩出しのオフショルダーシャツに黒のタンクトップ。

髪はシンプルに後ろでショートポニーテイルにされている。

鏡に映る自分を見て思う。可愛い。

麗奈に施してもらった化粧をした自分…とは言え化粧自体はナチュラル。元々姉ちゃん達に顔が似ている為、鏡に映った自分を見てときめいたりなどはしないのだが。


洗面所の扉が開く。麗奈が入ってきた。

全く同じ服装、髪型をしている。

俺が着ているのを見て気に入ったようで、姉ちゃんに貰った小遣いを握りしめて先週買いに行ったので記憶に新しい。

所謂お揃コーデの俺たちはきっと誰がどう見ても仲の良い姉妹だ。

だが俺は男だ。勿論麗奈の妹ではない。


「……ゅーた」

『どう?お姉さんも君と同じ服装にしてみたの!(*゜▽゜*)』


「おう、めっちゃ似合ってるぞ」

流石高身長で足の長い麗奈だ、ハイソックスとショートパンツから覗く絶対領域が俺以上に映えている。

いや、そもそも俺は男だから映えなくていい。

足の筋肉だけでも鍛えてゴツゴツになってやろうか、それなら女装を強要されることもなくなるだろう。


『ほんと!?嬉しい!\(//∇//)\君もその格好にあってるよ。めっちゃ可愛い(*゜▽゜*)』


「男だから嬉しくないけどそりゃどうも」

言葉の通り、本当に嬉しくない。だからこの頬の火照りはきっと、微熱があるのだろう。最近気温の変化が激しいから、風邪か?こうしては居られない、今日はベッドに戻って寝るとしよう。


『ホントは嬉しいくせに(*゜▽゜*)どこへいくの?』

「いや、ちょっと寝室のベッドで寝ようかなって」

俺が言うや否や、麗奈の顔が無表情のまま真っ赤に染まった。なんか勘違いしてないか?


『お姉さん達……まだ高校生だからそう言うのは早いと思うの……(//∇//)それにお出かけ出来なくなる(〃ω〃)』


やっぱりかー!!どこに勘違いする要素があったと言うのか。

この頃の麗奈は耳年増と言うか。好奇心旺盛というか。自分の性癖という名の欲望に従いすぎだと思うの。

相変わらずトイレにもついてくるし。昨日なんて浴室の鍵を閉めてなかったら突入されていた。

全ては俺を辱める為とは言えやりすぎだ。


少しお灸を据えてやるか。俺も男だと言うことをわからせてやる。


「いいからいくぞ」

麗奈の手を掴み、自分の方へ引き寄せる。


『お姉さんホントそう言うの初めてだから……キスから優しくしてね(//∇//)』


あるぇー……思ってた反応と違う…………。

男性恐怖症どこいったんだよ。いや、男性恐怖症の麗奈にこういったことをした俺も頭悪いけどさ!!


ドキドキとビートを刻む心臓の鼓動。目の前には目を閉じて何かを待つ麗奈。


「さて、冗談はやめてそろそろ準備するか」

そんな麗奈を置き去りにして洗面所を出ようとすると、今日来てる服には襟首が無いので、直接首を掴まれた。


『お姉さんの乙女心を踏みにじった。許さない』

いや、マジか、これ本当に怒ってるやつだ。


「わ、悪かった」

『君の事なんてもう知らない。顔も見たくない』

それだけ書いて見せると、プイッと顔を背けられてしまった。


れ、麗奈に嫌われた……。

あまりの衝撃に洗面所の床に膝から崩れ落ち、手をつく、

頬を自然と暖かい何かが伝う。あれ?どうしてこんなにも涙が溢れてくるんだろう、たった数ヶ月一緒に居ただけじゃないか。


『冗談だよ!冗談!泣くとは思わなかった!!』

「いや、俺が悪いんだ。すまなかった、許してくれ」


まさかこれ程の衝撃を受けるとは思わなかった。

優しく麗奈という存在に甘えすぎて人間強度が下がってるのかもしれない。

いや、麗奈だけじゃない。ここ数ヶ月で人との関わりが急激に増えた分、嫌われる事に敏感になってしまったのだろうか。

一人でいた4年間は全くそんなこと気にならなかったんだけどな。


『そりゃ、冗談って分かっててお姉さんものったんだから、お互い様だよ。ほら、涙でお化粧崩れちゃったから、直してお出かけの準備しよう(*゜▽゜*)』

そうだ、これから涼夏の誕生日プレゼントを買いに行くのだ、落ち込んでいられない。

麗奈が差し出してきた手を握り立ち上がる。鏡に映る自分の姿は化粧がくすんで不恰好になっている。

もう一度やり直しか。化粧はくすぐったいから嫌なんだよな……。

でもそうは言ってられない。もうそろそろ美鈴がうちに来てしまう。


「ありがとう」


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