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「眩しいな」
カーテンから差し込んできた朝日で目が覚めた。
朝日で目が覚めるなんて清々しいな、自由に動ければだが……
「まあ、そうなるよな」
昨日と同じく姉ちゃんに拘束されている。
クイーンサイズのベッドで眠る俺たちは、そのサイズに合わないくらい省スペースで済んでいる。
でかいベッドを買った意味が無いよな。
これを見越して水分をあまり取らなかったので昨日と同じような失敗はない。
だけど姉ちゃんって力弱いはずなのに、この拘束を解けないのは何故だ。
「姉ちゃん、朝だぞ、起きろ」
自由な右手で、肩を叩きながら声を掛けるが、反応はない。
時計を確認すると時刻はすでに6時半を指している。
このままだとチビ怪獣が来てしまう。見つかれば昨日みてえにフルコンボにされかねない……困ったもんだ。
朝から大きな声は出したくはないけど、迷っている時間はない。
顔を出来るだけ姉ちゃんの方に向けて大きく息を吸う。
「おーきーろー!」
「うにゃぁああ!」
飛び起きた。
まるで寝起きドッキリみたいだな。
姉ちゃんは胸を押さえて茫然自失。視線はうようよと宙を漂っている。
「おはよう姉ちゃん、気持ちの良い朝だぞ」
皮肉たっぷりに朝の挨拶を送る。
自由になった身体で立ち上がり、ぐぐっと背中を捻るように動かすとパキパキっと小気味のいい音が鳴った。
「ゆうただぁおはよ〜」
落ち着きを取り戻し始めた姉ちゃんがアホそうに間延びした声で返事を返してくる。
「おう、悠太だ」
と返事をしてやると満面の笑みを浮かべた。実の姉ながら、まあ可愛い。
「ふふ、朝起きて悠太が居るって、これから当然になっていくけどぉ新鮮だねぇ」
「一昨日まで面と向かって話すってことが少なかったからな…ほら目覚ましに顔を洗いに行くぞ」
未だベットに座ったまま立ち上がりそうにない姉の脇に手を差し込み、立ち上がらせる。
「ふふん、力持ちだねぇ男の子だぁ」
「男の娘じゃねえよ!」
「ふぇ?男の子でしょぅ?」
どうやら漢字を勘違いしたようだ。
いかん、山本さんに毒されている……。
「お、おう、ほら顔洗いに行くぞ」
「連れてって〜」
がしっと肩にしがみつかれた。
仕方ない、このまま連れて行こう。
自分で歩く気は無いようだ。
俺が歩くと姉ちゃんはズルズルと膝を擦ってついて来る。
「はぁ、おんぶしてやるから乗れ」
「わーい!」
このまま階段を降りていったら姉ちゃんの膝小僧が平になっちまう。
だからおんぶを提案してやると、姉ちゃんが背中に飛び乗ってきた。
部屋を出て一階に降りると、丁度玄関の扉を開けた涼夏と鉢合わせた。
間に合った、後5分遅かったら俺は……。
「お、おはよう!悠くん!なっちゃん今日は起きれたんだね!朝ごはんの時間だよー!」
涼夏の顔が心無しか顔が赤い。
きっと昨日の事を気にしているんだろう。俺も気にしていない訳ではないが、九死に一生を得た今、そんな事は今はどうでもいい。
「おはよう、大声出したら起きたぞ、寝起きドッキリみてえな反応してたわ」
「おはよぅすずかぁ」
「あはは!反応の割にはまだ寝ぼけモードみたいだけど…」
「きっとわたしはぁひとりじゃいきてけなぁい」
うるせえっての。このアホ姉。
「顔洗って着替えたらすぐ行くから、ありがとうな涼夏」
アホな姉を無視して涼夏に返す。
「うん!じゃあうちで待ってるね!」
涼夏の背中を見送って、肩にしがみ付く姉ちゃんをそのまま洗面所まで連れて行くと、背中から降ろし、歯ブラシに歯磨き粉を着けて手渡してやる。
何から何まで世話が焼ける。まるで昔に戻ったみたいだ。
「ありあとうひゅーた」
御行儀が悪いから口に物入れたまま喋るな。