40頁
活動報告に大事なこと書いてるかも!よかったら見てみてくださいねっ
「お前もか!!!」
さっきまでケロッとしていたのに美鈴と同じ反応を起こす麗奈に、思わずツッコミを入れてしまった。きっと火事場の馬鹿力的な一過性のものだったんだな……。
「涼夏、2人を運んでくれ。俺自販機で水買ってくるから」
少し先に見える金属の箱を指差す。
「うん、2人は私に任せて、行くよーっ美鈴。麗奈さん」
へばる美鈴と麗奈の肩を抱いて涼夏が店内へと消えていった。その様はまるで、車酔い?ちょっとあそこで休憩して行こっか、などと女性を言葉巧みに、お城のような建物に連れて行く、チャラ男のようだった。なんだあいつがハーレムの王だったか。
おっとふざけている場合じゃない、2人が熱中症だったら大変だ。
自販機に近寄り、財布から小銭を取り出して自販機へと投入する。
「あら、また会ったわね」
水のボタンを押す。ジャラジャラと小銭が落ちる音がしてげんなりする。
なんだこの自販機、ひとつずつしか買えないのか。
「おーい」
聞き覚えがある声が聞こえるが気のせいだ。
釣り銭口からさらに細かくなった小銭を抜き出して再び投入。水のボタンを押す。
「……襲っちゃうわよ」
ぞわわわわ!
突然、艶やかな声色と吐息が耳にかかり背筋が伸びた。
だが構ってはいけない。この声は先日ゲーセンで出会った山本さんとは違うタイプの変態にそっくりだからだ。
素知らぬふりで水を取り出し、そのまま歩き去ろうとするが変態が付いてくる。
おかしい。あの時は化粧をしていたので声を出さなければ俺だとバレるはずが無いのだが……。
「あくまでも無視するつもりなのね。それならっ」
ぎゅむっと後ろから抱きしめられた、姉ちゃんの方がデカい。その程度の誘惑に動じる俺じゃない。
どうしよう。両手が塞がっているので引き剥がすことも叶わず、取り敢えずそのまま歩いている。
だが待てよ。このままこの変態を弱った麗奈や美鈴に引き合わせたとする。その先は想像するのも悍ましい。
「名前も知らない誰かさん。友達が熱中症寸前で俺急いでるんで、離してくれない?」
女性には優しく、姉ちゃんの教えの一つがあるけど仕方がないけど、冷たく突き放すことにした。
「あら、やっと反応してくれたと思ったら随分と冷たいのね」
「ええ、名前も知らない相手とは基本的に会話をしてはいけないと敬愛する姉から言いつけられていますので、取り敢えず離してくれませんか?」
「でもそんな冷たいところもいいわぁ…ねえ、お姉さんあれから考えたの……本当は女の子がいいんだけどね。君みたいな男の子だったら抱いてもいいなって」
駄目だ。相変わらず俺の話を聞いてくれず、自分の要求のみだ。
それに俺が抱かれる方なのかよ、俺は愛の無い行為に興味はないのでほんっっとうにお断り願いたい。
「いや、本当に急いでるんで」
「急いでるなら今日はサクッと、どう?」
女性の手が、緩やかに俺の下腹部へと伸びてくる。
「ひぃっ」「ひゃぁっ!!」
ヤクザ事務所で見た男の顔が頭をよぎり、トラウマが蘇った俺は次の瞬間、女性を肩で突き飛ばしてしまった。
「いったいわね……」
尻餅をついてしまった女性が尻を摩りながら俺を睨んでいる。
「ご、ごめんなさい……でも、さよなら!」
「……あっ……つれないわねえ……」
女性の反応も待たず、走り出す、きっと大丈夫だ。
幸い女性はついてきていないようなので急いでアイス店に入る。
あんなヤバい人、出来れば二度と会いたくないけど、2度あることは3度あるというし……嫌だな。
息を荒くして戻ってきた俺を見て3人が驚いた表情をしている。
「悠くん、そんなに汗かいてどうしたの?」
「……っへ、変態がっ」
「………………!」
その言葉にへばっていた麗奈が食いついた。
『変態って』
「……ゲーセン、の、時の」
「ゲーセンの時って先週唯が言ってたあの?」
「……そうだ」
『ついて来てるの?』
「突き飛……ばして急いで……戻ってきた……その時はついてきてなかった」
ようやく息が戻ってきた。店内の色々なアイスや文字の書かれたガラスから外を見る限り、あの変態の姿は見えない。
『何された?』
「話しかけられて、無視してたら抱きしめられて、下腹部に手を伸ばしてきた」
説明が後半にいくにつれ涼夏の顔が般若のように、目がつり上がっていった。
「は?」
普段の涼夏からは想像できない底冷えのするほどの低い声だ。
「麗奈さん」
涼夏の問いかけにコクリと麗奈が頷いて、俺に手のひらを向けてきた。
『水頂戴』
「お、おう」
いつもの優しい2人とはかけ離れた姿に俺は水を手渡した後思わず後退りをしてしまう。それぐらいどす黒いオーラといったらいいのか、そう言ったものが溢れて見える。