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37頁


「わかった。今回だけだからな……買い物終わったら消せよ?」


「こんな子が生で見られるなら約束さえ守ってくれたら消すわよ。」

涼夏が見たならドン引きであろう気持ち悪い笑顔で写真を見つめている。

お前が可愛いって言ってるの今目の前で男子生徒の制服を着てポケットに手を突っ込んでお前を睨んでいる俺だからな。

「俺のも約束だからな。破ったら許さないぞ」


ムスッとした顔で俺を見るなよ。せめて写真見てるときの…いやそれも嫌だな。


「うるさいわね、言われなくても守るわよ。それより悠太くんなら涼夏の誕生日プレゼントくらい。もう用意してるものだと思ってたわ」


美鈴の何気ない一言にビクッと一瞬肩が上がってしまう。

こいつに忘れてたなんて告げたらどうなる…?校舎裏に呼び出された理由が買い物のお誘いから、体とのお別れに変わってしまう……。

ここはなんとしても隠し通さないと。

「いやー俺も選びきれなくてな!美鈴より良いものを探そうと思ったら中々決まらないんだよなー!」


我ながら完璧な言い訳だと思う。こう言えばこいつは勝負を仕掛けてくるはず……あれ?

俺の思いとは裏腹に美鈴は目尻が下がり、ジトッとした目線を向けていた。


血の気が引く。ジトっとした目つきの奥にある瞳からは光が消えている。


「本当の事を言ってみなさい」

「いやだなー。俺が嘘なんt」

お前の言い訳なんぞ聞く必要は無い、と言わんばかりに美鈴の手が伸びてきてガッと胸ぐらを掴んで引き寄せられた、身長差がある筈なのに俺の足は宙に浮いていて同じ高さでジト目の美鈴と見つめ合う。顔が近い。怖い。


「これで最後よ、本当の事を素直に言いなさい。悪いようにはしないわよ」

ジト目から目が見開かれ、これ以上嘘をついたら殺すと目が物語っている。

「……忘れてました」

「よろしい……素直なのは大事よ?嘘をついたら信頼関係ぶっ壊れちゃうんだから」

あっけらかんと元に戻り、掴み上げられていた体を地面に下ろされた。

暴力は信頼関係ぶち壊さないんですか?と喉まででかかったところで抑える。折角キレずに喋っているんだ。下手に刺激せず穏便に済ませて帰って貰おう。


「本当なら一発くらい引っ叩いてあげたいところだけどリハビリ中でしょ?完全復活するまで取っておくわね」

出来る事ならそのまま忘れて欲しい。

「何年も祝って無かったから忘れてたんだ、心の余裕もなかったし。自分の事ばかりで悪かった、ごめん」

「最初から素直に言えばいいのよ。由奈ちゃんが悪いのよ?変に嘘つくから」


唯のやつ、どこまでペラペラとしゃべりやがった!!

あいつ、今度うちに来たらお説教だな。確定。


「その名前を今言うんじゃない」

「わかってるわよ。プリの格好してる時だけよね?それにしても可愛いわね。悠太くん来週から女子用の制服で学校に来ない?」

「来ねえよ。話なら明日聞いてやるからそろそろ俺は戻るぞ、お前も気をつけて帰れよ」


返事を聞かぬ内に後ろを振り返り、手をひらひらと振って別れを告げ、歩き……だせない。

何故か支えるように腰に手を回され、俺の腋に美鈴の肩が差し込まれた。


「私が連れ出したんだから、送って行くわ。まだ本調子じゃないんでしょ?」

あらやだイケメン……でも中身はクレイジーなストーカーだ。

「いいよ。折角歩けるようになってきたんだ。自分の足で歩く」

「遠慮しなくていいのよ。ほら行くわよ」

「おわっ!」

介護してくれると申し出たはずなのに引っ張られるように歩き出す美鈴に慌てて歩幅を合わせる。

こいつ。涼夏のことになると我を忘れる癖がなけりゃ良いやつなのにな。



「悠太くんて本当に男なの?匂いまで女の子みたいな匂いしてるけど」


教室に向け階段を登っていると美鈴がそんな事を言い出した。

「完全無欠に男だ。みてくれこの筋肉、男らしいだろ?」

右肩は支えに使っているので、左腕を前に出して筋肉がある事を主張する。

「どうみたってプニプニじゃない。本当に男か疑わしくなってきたわね」

「男だ。匂いは姉ちゃんが買ってきたシャンプーを使っているからだし。筋肉が無いのは体が動かせなかったからだ」

「へぇ、お姉さんと同じシャンプーかぁ、通りで甘い香りがすると思った」


俺だって、メンズコーナーにあるシャンプーを使ってみたい!駄々っ子のようにこれを買ってくれとごねた事がある。けど、何故か姉ちゃんが断固として買ってくれないのだ……。一度こっそり買って帰った時は、麗奈に取り上げられ、姉ちゃんに告げ口をされた上俺では届かない棚に仕舞われた。

苦い記憶を噛み締めていると、教室まで戻ってきた。


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