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3話①

とある日の放課後、帰り支度をしていた涼夏たちを尻目に、俺は美鈴に拉致されて、人気の少ない校舎裏に来ている。

麗奈が迎えに来るから戻らないとまずいのだが…、目の前にいる幼馴染をストーカーする暴力系女子が見逃してくれる訳がない。


今日涼夏になんかしたかな。校舎裏でボコボコにされる程悪い事はしてないはずなんだけど……。

幸い足も手も自由に動かせるようになってきたから殴られそうになったら逃げよう。


それにしても先程から借りて来た猫のように静かだな。不気味だ。



「ね、ねえ!」

俺に背を向けてもじもじとしていた美鈴が、パッとこちらを振り向いて、ようやく口を開いた。

「なんだ?そろそろ保護者(麗奈)が迎えに来る頃だから教室に戻らないといけないんだ。手短に頼む」



「悠太くん、明日時間ある?」


なんだ?遊びの誘いか?俺を誘えば涼夏もついて来るって言う算段か?ほほう、悪いがその手には乗らん。涼夏を誘いたければ直接誘えば良い。


「明日は忙しいな」


「……そう」


あからさまに下を向いてシュンとする美鈴、いつもならさっきみたいに強制連行されるのに調子狂うな。


「まあ、なんだ、言ってみ?」


「あの…その買い物に付き合って欲しいの」


「買い物?俺と?」


「そうなの……来週涼夏の誕生日じゃない?だから涼夏には内緒で付き合ってほしいの!」


スズカノタンジョウビ……?






あああああ!忘れていた……。

今日が6月の25日と言うことは……涼夏の誕生日まで後3日……土日を挟んで月曜日になる。あいつ、忘れてたなんて言ったら悲しむだろうな。それはいかん。

ここ数年祝っていなかったので盲点だった。むしろ美鈴の申し出には感謝して然るべきだ。


「わかった、速やかに予定を空けよう。何時にする?」


「そ、そうねお昼を食べて13時集合でどう?」

俺の切り替えの速さに驚きを隠せないのか、美鈴が若干引き気味に引き気味に時間の指定をする。


「いいぞ?多分麗奈も一緒に来るけど構わないか?」

「いいわよ。麗奈さんの知恵も借りたいところだし」

「助かる、一緒に行くって言って聞かないだろうから」


高嶺の花と言われる麗奈と毎日一緒に居るのはクラスメイトどころかほぼほぼ全校生徒に知られており、そのおかげで、時々男子生徒からの熱い視線を受けているので、もちろん美鈴も知っている。

その原因は、麗奈が授業終わりの休憩時間になるたびに俺の元へとやってくるからだ。

俺も噂が立つから控えるように言ったのだが、約束。と言われなし崩し的に受け入れている。


そろそろ怖い人達に呼び出し受けないよな……?帰り道に刺されそうで怖いんだけど。


「あの人、本当悠太くんに懐いてるものね」

懐いていると言う表現であってるのか?あってるか、所構わずパパとか言い出すし。


「まあそんな感じだ。唯とかは誘わなくていいのか?」


「それが唯も静香も海もみんなもう買ってるのよ……唯とは一度出かけたけど選べなかったの……納得のいく物が見つからなかったの!!」


興奮してきた美鈴が俺の肩を掴みブンブンと前後に揺さぶってくる。

なるほど、だから最後の砦として俺を選んだのか。


「1日、探して、見つからないって、どんな物、買うつもりだよ」

ガクガクと頭が揺れているので詰まり気味に聞いてみる、いかん、酔いそうだ。

「だって!!愛しの涼夏に渡すプレゼントよ!!1番良いものを渡したいじゃない!!」


俺の肩から手を離すと、ダン!と大地を踏みしめ、声高らかに、天を仰いで、言った。

あ、窓から女子生徒が指差して笑ってる、こいつ恥ずかしい奴だな。


「わかるけど声がでけえよ。涼夏に聞こえたらバレるだろ?」

「はっ、しまったわ。ありがとう悠太くん。私は涼夏を思うあまり我を見失っていたみたいね」


「そうだな。じゃあそろそろ行こうぜ、多分麗奈と涼夏が俺を探してる」


「待って悠太くん……もう一つお願いがあるの」


もじもじとしながらスマホを取り出し、少しタップして俺の事を熱を帯びた視線で見つめる美鈴に、正直嫌な予感しかしない。


向けられたスマホに映っていたのは、先週唯とのデートで撮ったプリクラのセンターに映る俺。おのれ唯め……。

「この格好で来て欲しいの……」


「駄目だ。外で女装するのはあの一回きりってきめたんだ!」


勿論断る、偶にならしてもいいと姉ちゃんに言ったのは家の中でだけだ。

あんなに視線を集めるなら外で女装するのは嫌だ。

「……そう」


また下を向く。ダメだダメだ。落ち込めば要求を飲むと思ったら大間違い、何があっても徹底抗戦してやる。


「なら、この写真を涼夏に見せるのはどう?」


それはそれはとてもいい笑顔で、スマホの写真をスライドして見せた。

出てきた写真はキスプリ。あいつ絶対許さん。


「勘違いしないでよね。唯がものすっっっごく嬉しそうにしてたから私が聞き出したら教えてくれたの、これはいい脅迫材料になると思って唯に内緒で保存させてもらったわ」


この子今、脅迫材料って言いました?内緒で保存。おまわりさーん、ここですよー。


「それで、どうする?この格好でくるか。涼夏にバラすか」


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