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33頁


――――――――――――

玄関の鍵を開け、中に入ると丁度風呂から上がった姉ちゃんと鉢合わせた。


3人で肩を寄せ合って帰ってきた俺達を見て姉ちゃんが微笑んでいる。


「おかえり!唯ちゃんこんばんは〜、悠太なんで女装してるの?めちゃ可愛いんだけどー!」


姉ちゃんがキャッキャ声を上げて喜んでいる。

「おう、約束だったから仕方なくな、それより姉ちゃん。唯をうちに泊めたいんだけどいい?今日だけじゃなくて定期的に。両親が仕事で居ない日が多いらしいんだ。」


簡単に掻い摘んで説明する。唯がえ?それでいいのと言いたげに横目で俺をみているが、姉ちゃんにはこれで充分だ、何故なら。

「分かったわ。女の子が1人なんて危ないからね。唯ちゃん。遠慮なく泊まりに来てね、お姉ちゃんは大歓迎だよ」

姉ちゃんは母性を感じさせる微笑みを浮かべながら唯の手をとった。


あの事件以来一人になる事に抵抗を覚えている姉ちゃんなら、麗奈の時然り、静香の時然り受け入れてくれる確信があった。

それがなくても優しいしな、うちの姉ちゃん。


「あ、ありがとうございます……嬉しいです」

姉ちゃんに、手を握られ顔を赤らめた唯。

「唯ちゃん……いくらでもお姉ちゃんに甘えてね」

見つめ合う2人、ん?百合の気配が。なるほど、こうやって静香の事も堕としたのか。いいぞ、もっとやれ。


「……私、昔からお姉ちゃんが欲しいと思ってたんです」


「いいよ。お姉ちゃんて呼んで?タメ口でもいいのよ」


「お姉ちゃん……ありがとう」

まるでドラマでも見せられてるかのような目の前で繰り広げられる2人のやり取りを麗奈と黙って見つめる。

なんにせよ。これで唯もうちの家族と言うことか。静香も時々泊まりに来るし、一層賑やかになるな。

麗奈も唯も姉ちゃんも喜んでくれている、良いことだ。


「体冷えたでしょ、お風呂に入ってきたら?麗奈ちゃんも」

見つめ合いの百合空間を程々に姉ちゃんが2人に風呂に入るよう促した。

確かに、体が冷えたのでさっさと風呂に入りたい気分ではある。


「ええ、そうさせてもらうわね、お、お姉ちゃん」

どうやら慣れるのには少し時間がかかりそうだ。


「麗奈ちゃん案内してあげてね」


コクリと頷くと、俺のシャツの裾を掴んだ。

「……ゅーたも」


ズキューン!

「い、あ、良くない。2人で入ってこい。俺は後で入るから」

「……ぁ」

きっとさっき俺がした怖い話が効いてるのだろう。一緒にお風呂に入ろうと、可愛く声を出して言う麗奈に思わず承諾してしまいそうになった。

麗奈の手を優しく外し、背中を押して送り出す。

「…………むぅ、ぃぉ」


一つ唸り声をあげた麗奈はお風呂に関しては絶対に俺がOKするわけがないと悟ったのか唯の手を握って脱衣所へと向かっていった。


2人の背中を見送って俺と姉ちゃんもリビングに入る。

ただいまソファー、その柔らかさで俺を包んでくれ。ソファーに飛び乗る。やっと帰ってきた。

今日は沢山歩いたので癒される、余った座席に姉ちゃんが座ると、俺の肩を持って自分の膝に乗せた。


「悠太、ありがとうね。お姉ちゃんの為にみんな連れてきてくれてるんでしょう?」

姉ちゃんの手が伸びて来て俺の頭を優しく撫でてくれる。懐かしい、昔は良くこうしてたっけ。

「まぁ、俺1人でも良いけど、いっぱい居た方が安眠できるだろ?」

姉ちゃんは誰かが居ないと1人で寝る事が出来ない。


「ふふっ、そうだね。悠太が昔の悠太に戻ってくれたようで嬉しいわね」


「昔の悠太どころかこんな格好になっちまってるけどな」

「ふふふっ、ますます女の子みたいになっていくね。お姉ちゃんとしてはこんな可愛い弟を見れて幸せだよ」

小首を傾げ、可愛さアピール。もう誰がどう見ても完璧美少女なのだ。それならこの格好をしている時くらい可愛い仕草をしてみても良いだろ。姉ちゃんが喜ぶ。



「そうかそうか、今日で見納めだ。目を見開いてよーく見ておけよー」

ぐでーっと手を伸ばし、姉ちゃんのやわっこい太腿に顔を伏せる。

「くすぐったいなぁ、こうしていると本当に姉妹みたいね」

「そうだな。美人で才色兼備の姉と出来の悪い妹だ」


「そんな事ないわよー、悪い子を演じていても本当は誰よりも優しくて、正義感に溢れてる。自慢の妹よ」


姉ちゃんの太ももに顔伏せててよかった。俺の顔はきっと照れやらなにやらでニヤニヤしている事間違いなし。

「……なぁ、姉ちゃん」

「なぁに?」

「妹バージョンの俺……好きか?」

「悠太はやっぱ可愛い弟だけど……そうね。たまには見てみたいかも」

「……そうか。俺も、たまに、ならしてみてもいい。姉ちゃんが喜ぶなら」


女装を好き好んでやっている。なんて勘違いを受けないよう、物事をするには理由付けが必要だ。


世間的にみて、姉が喜ぶから女装をする。なんて言ったらこのシスコン野郎が、引くわとか言われるかもしれん。


でも俺の場合は姉が喜ぶからと言う理由付けがあれば俺の中では成立する、ここに連れてきてくれた姉ちゃんは俺の全てだから。


「へぇーこれからも女装を見せてくれるの?嬉しいなあ」


「まぁ、そんなとこ……この格好の時は由奈とでも呼んでくれ」

「わかったわ。確かに女の子の格好なのに悠太じゃ目立つもんね……ねえねえ由奈ちゃん」


姉が何か思いついたのか、伏したままの俺の頭を軽く撫でた。

少し顔を上げ、姉ちゃんと目を合わせる。キラキラ輝いてんなあ。

「どした?」

「一緒に、写真撮ろ?家族写真」


「それなら麗奈と唯が風呂から出てきて、涼夏と蓮さんも呼んでみんなで撮ったらいいんじゃね?」


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