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――――――――――――

ファミレスでの食事をトラブルにもぶち当たらず、つつがなく終え、お節介な店員さんに料金を払って退店した俺たちはバス停を目指して夜道を歩いて居る。

そもそもただ飯を食うだけでトラブルに巻き込まれるのがおかしいのだ。全く、この街はいつから世紀末みたいになってしまったのだろうか。


「それで、幽霊が怖い理由ってなんなのかしら?」


唯が気になった様子で聞いてくる。


「ああ、昔な、小学生くらいの時の話だ」


「その頃も可愛かったのかしら?」


「どうだろう、昔は短髪だったしな。それはまあ置いといて……夏の夜だ、ホラー映画を見たあいつは夜中に姉ちゃん達と寝る俺を連れ出して肝試しをしようと言い出しやがった」

怖い話をすると言う事で声のトーンをいつもより少し落とす。

「涼夏って昔はおてんばだったのね。続きを聞かせて」


「提案されたのは近所で出るって噂の森……めんどくせぇ、と思う俺とは裏腹にあいつは、るんるん気分で言う物だから俺は仕方なくついて行ったんだ……それが間違いだった」


一呼吸置いて記憶を探り探り話を進めて行く。

「森に入るまではよかったんだ、街灯が俺たち2人を優しく照らしてくれからな……だが問題は森に近づいた時に発生した……なんだと思う?」


「話しぶりからして、明かりがないとかかしら?あの子大事なところで抜けてるところがあるから」


うんうん、と唯に同意して頷く麗奈。

君達あいつの事そんな風に思ってたの?俺も思ってるけど。

「そう、涼夏は手ぶら、俺も手ぶら。小学生だからスマホも持っていない。もっとも?小学生の頃なんてスマホじゃなくてガラケーだったんだが……俺はあいつに、足元も見えないと危険だ、今日は帰ろうと縋る想いで提案した……けどあいつは「今の私なら暗闇でも動ける、だから安心してついてこい。嫌なら帰れ」と意味不明な事を言って俺の手を握ると森の中に向かって歩き出した……」


「嫌なら帰れといいながら凄い矛盾ね、ふふっ」


きっと幼い俺たちを想像して笑っているのだろう。恐怖はこれからだ。

「森に入るとすぐに異変が起きた。真夏の夜って言ったよな?寒いんだよ……体が震えてしまうほどに。なのにあいつはそんな俺の様子を物ともせず、ズカズカと草木を踏みしめて獣道を進んでいくんだ、俺の手を握ったまま」


「あら、あの子は気づいてなかったの?」


「全く気づいてない。あの頃は今と違って察しの悪さも随一だから鈍感だったんだなと思ってる。続けるぞ……10分くらい暗闇を歩き続けただろうか。パチパチと折れる小枝やガサガサと揺れる葉っぱの音に混じって女の子の泣き声が聴こえてきたんだ……」


「馬鹿ね、幽霊なんて居るわけないじゃない、居ないわよね」


『お姉さんも歩きスマホはダメだから黙ってたけどちょっと怖くなってきたよ』


「ここまではまだ序の口、本題はここからだ。流石に能天気な涼夏にも、この泣き声は聞こえた見たいで、俺達はふと立ち止まった……もし女の子が居るなら助けなきゃ、と涼夏は言った。でもこんな夜更けの森に女の子が1人でいるはずがない、でも俺たちの耳には確かに泣き声に混じって……ママ……ママと女の子の声が聞こえている。きっと迷子になったんだよ!って涼夏が俺の手を引いて進む」


「そこで突き進むのはあの子らしいけど……」


「獣道を手を引かれながら突き進んで行くと開けたとこにでた……立ち止まって涼夏が指を指した。悠くん、あそこに女の子がいるよと呟く涼夏の視線の先には小さな祠名前でうずくまって泣く小さな女の子がいたんだ、昭和のモンペって言ったらわかるか?それを履いて上着は補修だらけのシャツを着てたかな……明らかに異常なオーラを放っていたんだ、近寄ってはいけない。緊張感に包まれた……それでもあいつは駆け寄って、どうしたの?と声をかけた。すると……」


2人がごくりと唾を飲む。


「女の子はこちらを振り返ると、手の中に握ったものを見せてきた。ママのもう一個のお目目探してるので……と聞こえた泣き声が嘘のように満面の笑みで……その手には眼球が乗っていt」


「ももも、もういいわ!やめましょう!作り話がお上手なのね!全く怖くなんてないのだけど、いいお話だったわ……」


『お姉さん怖かったよ!(;_;)』

唯の静止する声が俺の声を遮った。

ここからがいいところなのに。でも俺も思い出して怖くなってきたので止めてくれたのは助かる。


「この辺でやめておくか。じゃあ唯。また明日学校でな」

「待ちなさい。今日はあなたの家にお泊まりの約束よね?寧ろ泊まりに行くわよ」


意地悪で言ってみたのだが効果は抜群のようだ。

そう言えば、今日は夏目前の夜なのに冷えるなあ、もしかしたらあの時の女の子が近くに寄ってきているのかもしれない。

居ないよな?怖いんだけど……。

俺たち3人は昼間以上に固まって歩くのだった。

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