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28頁


現実逃避から引き戻された、葉月姉ちゃんと真姫ちゃんはどこ?

「プリクラを撮るわよ」

「あ、あぁ」

何故プリクラ機の中にいるのか忘れていた。この姿を写真として残すのは嫌だけど一度口にしてしまった事だ、仕方ない。


お金はすでに入れてあるのか、普段は地味目な格好で遊んでいる印象が薄い唯が軽快なBGMと共に流れる音声案内に従って慣れた手つきでパネルをタッチして選んでいく。

人は見かけに寄らないな、まあ美鈴や涼夏、静香と出かけることくらいあるか。

おかしいな、カップルモードって文字が見えたんだけど……。

「はーい!じゃあまずはニャンコのポーズ!1!2!3!」

何!?ポーズの指定までしてくるのか!?驚きに思わず言われた通りのポーズをしてしまう。

「お次は抱きあって!?1!2!3!」

2人が両サイドから抱きついてくる。

これは……。

「最後にちょっと恥ずかしいけどほっぺにちゅー!1!2!3!」

「ちょっま!!」

俺の静止も聞かずに2人の唇が俺の頬に触れる。柔らかいしっとりした感触だ。


「これでおしまいです。タッチパネルで落書きしてね」

そうですか、キスされたとこだけ塗りつぶしてやろうか。


「唯、タッチペンを貸せ。俺が塗りつぶしてやる」


「ダメでーす。麗奈さん押さえててください」

唯が握るペンを奪い取ろうと動いた時麗奈に羽交い締めにされ、取り押さえられた。

「離せ!卑怯だぞ」

怪我をさせてしまう可能性があるので、力任せにもがく事はできない。

「こういうのはやったもの勝ちなのよ。私だって恥ずかしいのだから気にする必要は無いわ」


あくまで先手必勝を貫く魔王を前に、俺は囚われの勇者と言ったところか。

だとしたらヒロインは何処に?お助けキャラはどこ?


「ハートマークとかつけちゃおうかしら?」

キスだけでもコーヒーに砂糖をこれでもかとぶちまけた程に甘いのに、3人の周りにハートマークを散らしていく。激激激甘だ。

「ちくしょう……覚えてろよ」


「忘れないわよ。あなたとの事はどれも大事な思い出になるもの」

手を止め、こちらを向いて物憂げな表情を浮かべる。

「……ぐっ」

俺の抜け落ちた記憶の中で、この女の子との間に何があったのだろうか。もし、唯があの時助けた女の子だったとしても姿が変わり過ぎている。

だから普段は見ない映画を見せたのか?由奈と結人を俺たちの関係に当て嵌めて。

それなら合点がいく。由奈って誰かに似ていると思わない?あれは恐らく俺の事。

一途で髪の色を染め直して、真面目になった元ヤンの結人は……唯。だとしたら抜け落ちた記憶というパズルのピースが埋まっていく。

「なあ、唯」


「何かしら?塗りつぶしには応じないわよ」


「唯の髪の部分だけ、黄色に塗ってくれないか?」

「……………………!!」

モニターに目を戻して落書きを続けていた唯が目を見開いて、ばっとこちらを振り向く。

何か言いたいようで口をパクパクしているが声が出ないようだ。


「わりい。でも、お前も遠回りすぎるぞ」


大きな瞳が湿り気を帯びて、溢れた水滴が唯の頬を伝い、プリクラ機の床に落ちた。

麗奈の手を優しく離し、手を伸ばして唯の涙を拭ってやる。

「泣くなよ。折角化粧もバッチリ決まってるのに台無しになるぞ」


「だっで……だっでぇ!」

女の子が泣いていたら涙を拭って慰めてあげなさい。葉月姉ちゃんの教えの一つを実践してみたところ。逆効果のようだ、逆に嗚咽を上げて大泣きになってしまった。そう言えばあの教えには続きがあったはず。

「もしガチ泣きに変わった時は優しく抱きしめて頭を撫でてあげなさい」


それは流石に恥ずかしいのだが……ええい、恥は掻き捨て世は情け!泣いてる女の子1人慰めてあげられないようならあの世で葉月姉ちゃんにしばかれる。


「泣くな。君が泣いてるのを見ると私も悲しい。私はもうどこにも行かないから泣かなくていいよ」


映画の由奈の台詞をそのまま借りた。

「本当?……グスッ次の日、病院に行ったら、もう居ないとか、もうない?」

「あぁ、あの時は事故の影響で記憶に混濁が見られたんだ。だから女の子を助けたってことは知ってたけど詳しくは覚えて居なかったんだ……それに医者に無理言って翌日に退院したから。ごめんな」


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