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24頁


「もうあの事故から3年もたったのよ」

「…………そぅか」

「………………あなたの意識が戻って良かった」

「」

目の前のスクリーンで繰り広げられるやり取りをボーッと眺める。

2人の男女が病室で抱き合ってキスをして、画面が暗転し、スタッフロールと共に軽快な主題歌が流れ始めた。


内容の方は、男女が夜中にナンパから女を助けるお決まりのパターンから始まり、なんやかんやあってやっと付き合う事になったと思ったら喧嘩して事故に合いそうな女を男が救って代わりに轢かれ、男3年間寝たきりになったのを女が介抱し続け、やっと男が目を覚ましてキスをしてハッピーエンド。

いやーとても良い子守唄になる良い映画だった。




「めちゃくちゃ泣いてるじゃない」

筈だった。

「だっでよぉ!」

由奈………………結人が目覚めて良かったなあぁああ!

なんで寝たきりから目覚めて言う言葉が3年前の謝罪なんだよおおお、つい心のダムが決壊しちまったじゃねえか!

てな感じに、俺は今、大号泣している。唯と麗奈はドン引いていた。


誰だ、恋愛物はつまらないとか言ったやつ、ぶん殴ってやる。


『お姉さんもうるっときてたのに君があまりにも泣くから出てきた涙引っ込んじゃったよΣ੧(❛□❛✿)』


無表情で見つめてた癖に何言ってんだ。

「さて、映画も終わった事だし、向かいにある喫茶店で感想でも話し合いましょ」

席を立ち、出口へと向かう。

「姉ちゃんいい泣きっぷりだったなぁ!こっちまで聞こえてきてたぞー!」

見知らぬおっさんに茶化された。それなりに席は離れていたのにあそこまで聞こえてたのか……恥ずかしい。


「唯、早く行け。俺が恥ずか死ぬ」

「そんな事言ったって、春日くん足が不自由だから私が早く行ったら置いてっちゃうでしょ」

唯を急かすが、至極真っ当なカウンターパンチを食らった。

ちくしょう、公開処刑だ…………。


場所を喫茶店に移した、先に飲み物を購入するタイプの喫茶店だ、たくさん泣いたのでラージサイズのコーヒーを購入して席に着く。

地獄の公開処刑も終わった事だ。俺は早る気持ちを抑えきれず席に着くなり映画の感想を話し始める。


「結人、いい奴だったな……」

『ねーっ、不良なのに頭のいい大学に行く彼女と付き合う為に黒染めして学級委員長になって、すごく一途だよね(//∇//)』


「男気溢れるいい男だったわね。ヒロインの女の子もよかったと思わない?」


「ああ、頭が良いのに王道じゃない方法で人助けをするあの感じ、かっこよかったな!ヤンキー相手に女の子が啖呵切るなんて想像できないぜ」


「ふふ、そうね。友達助ける為だから!私はその為なら全力を尽くす!なんて普通の女の子だったら言わないわよね」


元ヤンという事で結人がヤンキーに絡まれるが由奈との喧嘩をしないという約束で頑なに手を出さず、一方的にボコボコにされるシーンの話だ。

由奈が武器を片手に登場した所はめちゃくちゃかっこよかった。


『由奈ちゃんもかっこよくて可愛かったねえ(о´∀`о)』


「結人も由奈もかっこよかった。俺も帰ったら黒染めするぞ、明日から真面目に生きるんだ」


そして結人のように約束をきちんと守れる人間になるんだ。

「影響受けまくりじゃない。髪を黒染めするのは止めないけど、春日君の金髪は似合っているからそのままでいいと思うわね」


「まあ、似合うだろうな」


「ふふ、なにそれ、自画自賛?」

「姉ちゃんが金髪だったんだよ。母さんの遺伝だな。俺と菜月姉ちゃんは父さんの遺伝で黒髪だけど」


姉ちゃんが似合っていたので似合わない筈がない。

『葉月お姉ちゃんの写真見たけど、菜月お姉ちゃんを金髪にしたらそのまま葉月お姉ちゃんだもんね(о´∀`о)』


双子だからそっくりで当たり前なのだが、俺まで似なくても良かったのに……。


「じゃあ春日くんはお姉さんを思って金髪にしてるの?」


「ああ、女々しいもので、金髪にして髪を伸ばして鏡の前に立つと葉月姉ちゃんに会えたようで嬉しいんだ」


「……そう」


「葉月姉ちゃんは凄えぞ、今も生きてたならきっと偉業を成し遂げてただろうな」


「良いお姉さんだったのね」


「ああ、自慢の姉ちゃんだ。勿論菜月姉ちゃんもな」


そんな姉を亡くした事で俺は道を踏み外してしまったわけだが。


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