思い出してしまった
とりあえず、あの先輩が読んでいる本を借りることまでは成功したね。
私は夜、自分の部屋で一人でうなずいた。
なんかこう、ああいう一人でも気にしないタイプの人と、静かに本の貸し借りとかしたかったんだよねー。
早速開いてみようか。
なにせ、唯一頼れる先輩と言っても過言ではない人に協力してもらってまで、話すきっかけを作ったんだから。
私は本を開いてみた。
む、難しい文学的思考とか、は、ないよね。
たぶんこれは読みやすいタイプの本だと思う。
というわけで表紙をめくり、とてもカラフルなページを見てみれば、
ぱ、ぱんつ見せてる女の子がいる……。
え? これ読むのめっちゃ難しいじゃん!
いや、でもちゃんと読まないと……借りたし。これで、先輩の思考がわかるかもしれない。
そしてそれから二時間後。
ああ。物語が終わってしまった。ほんと頑張って読んだよ。というか読むのを頑張ったというよりは少しエッチな挿絵を頑張って見た。
確かに面白かったけど、結構いきなり地味な主人公がモテ出すからびっくりした。
なるほどなあ。先輩はこういうのが好きなのか。なるほど。
「とても納得いたしました」
私はそう言って、次の日、先輩に本を返しに行った。
「な、何について納得したの?」
先輩は不思議そうに本を受け取って、さっさとポケットにしまった。
「そうですね、何に納得したかというと、先輩が屋上に入れるメンタルを手に入れた理由についてです」
「おお……」
「つまり、こんなに恥ずかしい思考の主人公の本ばかり読んでいるから、余裕というか……」
「常識がなくなってしまっていると?」
「そうかもしれませんね」
私はうなずいた。
いや、きっと本当はそんなことはないのだ。
でも、私は、なんとなく、やっぱりこの先輩にも興味は持てないな、と思い始めていた。
やはり私から見たら趣味が謎である。
いきなり地味な主人公がモテ出すような話が好きだということは、自分自身もモテたいと思っているということだ。
ということは、私が当初先輩に抱いていた、恋愛とかそう言うのにはあまり興味がないというイメージは、外れだということになる。
ま、そんなもんだと思う。世の中みんな誰かに好かれたいと思っているのだ。
そんなことを考えて、また先輩の顔を見た時。
私は……頭が破裂しそうなほど一気に回転した。
……思い出してしまった。