また告白されてる
またあの後輩、告白されてるよ。
僕は本から顔を上げて、屋上の真ん中あたりに立っている、髪の長い女の子を眺めた。
そしてまた断ってんだよなあ。
なんかモテて大変って人もいるんだなあ。
ま、僕の知ったことではない。
ところでなんで僕がこんな告白されてる人とかリア充カップルしかいない屋上にいるのかというと、屋上の端が好きだからである。
外で風を受けながら、ページをめくりにくい状態で本を読むのが好き。
まあ変わってるとは思われそうだけどそうなのだ。
あともう一つは、陰キャなのに、陽キャの人々の人間関係について詳しくなれることに優越感を覚えるからである。
なんとも情けない。
昼休みが終わったので僕は屋上を後にした。
で、自分の教室に入ったら、僕の席に……ええ、なんか置いてある。
なにこれ。
お弁当箱かよ。ピンク色。どう見ても僕のじゃないのにどうして僕のところに置いた。
「あ、谷口くん帰ってきた」
一人のクラスメイト……山本さんに話しかけられた。
おお、女子との会話発生なんて、めずらしき事態。
「はい帰ってきました」
「あ、これ、屋上に落ちてたの。誰のか知ってる?」
「いや……ていうかなんで僕が知ってると……」
「えだって、谷口くん、よく屋上にいるから、誰のか知ってるかなあって」
「あー、なるほどね?」
と言いながら思った。屋上においとけば、勝手に取りに来るからわざわざ僕に渡さなくても。
めんどくさい。
よく見ると、山本さんは何か企んでいるように見える。
どういうことだ?
わからんけど、わかってしまったことがある。
この弁当、さっき告白されてた人のだわ。
片手に持っていたのを覚えている。
仕方ない……届けに行くか。
次の休み時間にでも。
えーとあの人のクラスってどこ?
知るわけないな、そういや。
と、休み時間になって教室を出たら気づいてしまった。
ところが、
「あっ、それ私の弁当箱です!」
向こうから近づいてきたまじかよ。
すごいな。まるで僕が持ってるって知ってるみたいじゃんかよ。
「はい。よかった」
とりあえずお弁当箱を渡した。
「あ、ありがとうございます」
お礼をなんか緊張して言っている女の子。
たぶん制服バッジ的に一つ後輩かな。
まあとにかくよかった。
「あ、あの! なんか不思議がられてる気がするので、自白します!」
自白?
やばい。よくわからん。
このお弁当箱の中に爆弾でも入ってるの?
「僕に興味があるから、話すきっかけが欲しかった……ってマジですかそれ」
女の子の自白? を聞いた僕は言った。
「そうなんです」
なんで。
あ、もしかして顔の好みが独特すぎて、今まで告白してきたそこそこイケてる男子たちよりも僕の方がイケメンに見えたりとかしてます?
「あの、なんかいつも一人で本読んでて、面白いです!」
あ、ほんと? 一人で本読んでてかっこいいって言わないあたりほんとかもしれない。
「ありがとう」
だから素直に美少女後輩にお礼を言ってみた。
「あ、それで、あ、ききたいこともあったりするんですけど」
「おお」
「あの、どんな本をいつも読んでいるんですか?」
「あ」
美少女と仲良くなれるかもと思った僕が馬鹿だったなやはり。
やばいな。
なんでやばいかというと……僕が読んでる本は、後輩がヒロインのラノベや漫画ばかりだからである。
と、思ったのだが、
「おー!可愛い女の子が表紙に書いてあります! これ、面白いんですか?」
もう二度と会話はないな、と思いながら本を見せた結果、めっちゃ無邪気に対応されてしまった。
「面白い、と僕は思うけど」
「じゃあ貸してください!」
「マジかよ」
なんで展開の速さだ。
僕はそう思いながらも女の子に本を手渡し、女の子はすごく嬉しそうな雰囲気をまとって去っていった。
お読みいただきありがとうございます。
思ったより時間ができたので物語を進めます。お願いいたします。




