美少年に薔薇を渡す
少年は金髪碧眼だった。つまり、つまりどういうことだ!?王太子と違い肩にかかるほどの長髪であるこの少年は誰?現在王族は3人だけな筈だ。隠し子かという疑念もふと浮かんだが先程のお茶していた時を思い出して無いなぁと思った。政略結婚だと思っていたが、二人から漂う空気はカップルのような甘いものだったのでその考えは消えた。となると、今目の前にいるこの子は一体全体誰なのか?気になるがここは一旦気まずさを無い物にするべく手を振っておこう。
手を振り返してくれたので近くにいって挨拶しようかと思った。基本的に身分が上の者からしか声を掛けてはいけないけれど7歳なので大丈夫かなと思い、少年の立っている方に足を進めた。
「はじめまして、こんにちは。」
近くで見るとより一層綺麗な容姿をしていた。現実世界なのに漫画みたいに背景にキラキラのエフェクトがついているような錯覚に陥る程整った顔立ちにかっこいいと言うより綺麗な儚い雰囲気を纏っており今にも消えそうな空気を漂わせている。
「私の名前はユナです。あなたのお名前は?」
「僕はカイト。」
めっちゃ戸惑っているのが目に見えているが私はとにかく気まずい空気が苦手なのだ。なのでこの気まずさを強行突破するべくなぜそうなったかは自分でも分からないが手に持っていた青い薔薇を渡した。オリジナルの魔法を付けて。初めての試みだったものの成功した。劣化しないように時間停止魔法ができないかなと魔力に乗せてみたら案外イケた。流石に根っこごと渡すのは気が引けたので茎を折って。
「これあげます。私が創ったのだけど」
いるいらないの返答も待たず手を取り渡した。
「この薔薇もあなたの瞳と同じで綺麗でしょう?」
「だからあげます」
「。。。ありがとう」
我ながら謎理論だったが結果的に受け取って貰えたみたいなので満足した。もう少しお話しをしたかったが日も落ちて来てそろそろ帰らなければならなかった為、そこでバイバイした。
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お茶をした部屋に戻り、ノックをするとドアが開いた。
お父様と国王夫妻そしてもう一人男性が同じテーブルに座っていた。
「お父様、お仕事は終わりましたか?」
「ああ、終わったよ。」
「それと、この人は宰相で侯爵のイーサン・アイビーだ。」
「お初にお目にかかります、アイビー侯爵。ユナ・シアーズです。」
「父がいつもお世話になっております。」
「はじめまして、ユナ嬢。」
「イーサンって呼んでね」
見た目めっちゃ硬派な感じなのに気のいいおっさんみたいな喋り方なの宰相としてどうなのかしら。
「よろしくお願いします。イーサン様?」
宰相って私と歳の近い息子さんがいる筈なんだけどこんな気安く呼んで良いものか。
「ずるいぞ、イーサン。私はレオン様と呼ばれたいぞ」
「じゃあ私はアリアって呼んでね?王妃様って堅苦しいじゃない」
「は、はい。」
私は現在親戚の集まりにでも来ているのだろうか。一応返事はしたものの、難しいお願いされたもんだわ。というか気に入って頂けたのは嬉しいが気にいるポイントが分からない。確かにお話しは楽しかったし共通の話題もあって距離は縮まった気がするが、私の認識ではあくまでお父様の上司との雑談みたいな。この先もお世話になる訳で早いうちから関係を気づければ良いなと言うのと、有名人と話せる機会があるから話してみたいなという下心的な側面もあってそこまで気さくに話せる関係を望んでいた訳では全くない。
「じゃあユナ、帰ろうか」
「はい。今日はありがとうございました。」
会釈をして帰路に就く。お父様とどんなお話をしたか、楽しかったかなどを聞かれて話しているうちに家に着いた。
夕食時にもお母様にお父様と同じことを聞かれ全く同じ話をした。そして冗談半分に婚約者の話をしたらお父様がとにかく否定的になり面白かった。お母様はお父様を呆れ顔で見ていたが二人の仲がラブラブなのを知っているのであまり心配はしていない。お兄様やリントは私が王宮に行っていたことを知らなかったらしく驚いていた。お兄様も今日王宮に王太子の側近として行っていたが王太子の住まいと両陛下の住まいは別なので知らなくても仕方が無いと思う。
明日こそ授業があると信じ、筆記用具や筆記帳を用意し机に置いた。要約した手書きの資料も確認して自作のファイルに入れ机に置いた。その後安心して眠りについた。