既視感のある空間への転移
「ハロルド先生、もうちょっと難しくできませんか?」
「できれば他の言語も学びたいですし、数学も難易度上げて欲しいです。」
私は先ほど行なったテストの結果を見て満点ではあったものの簡単過ぎて学習欲が満たされず、問題数が多いにも関わらず偏った問題が多く満足できない結果となった。前世から知的好奇心及び探究心から勉強に取り組んでいたので改善点のない満点はかなり不服で先生に難易度を上げて欲しいと頼んでみた。
「分かった。次は難しいものを持ってくる。」
「だが、言語の方はもう少し待って欲しい。」
「準備が必要だ。」
「分かりました。次回は楽しみにしていますね」
「今日はこれで終わりですか?」
「ああ。俺は週3で勉強を教えることになっている。」
「明後日また来る。」
私はハロルド先生をお父様のところまでお送りして別棟に向かった。その道中習えるであろう言語のことを考えていた。この国の公用語はセレソ語で日常的に使用している。多言語を習得したいのは我が家が外交に携わっている為である事と異世界の言語への興味があるので是非挑戦してみたい!
前世では日本語・英語・韓国語・中国語(広東語)・スペイン語に興味を持ち、話せるようになった事から言語習得はかなり得意だと思う。学校に交換留学に来た子やインターネットを通して仲良くなった同年代の子たちとコミュニケーションを取るうちに言語能力が向上したのだがこの世界にインターネットなど存在しないので多言語を習得する術がない。その為家庭教師をお願いしたのだが待たなければならないと言われすごくショックを受けている。
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やることがないので別棟で妖精たちと遊ぶことにした。
「シトリン〜」
「居る〜??」
「いますよ」
私から呼んだけれどいきなり出てきてびっくりした。
「あそぼ〜?」
「他のみんなを呼んできますね。」
するとシトリンは消え、数秒後に他の妖精たちが姿を表してくれた。
「「「やっほー」」」
「何で遊ぶ?というか魔法教えてよ!」
「いいですよ、ただ別の場所に移動しましょうか」
そう言ってシトリンたちは私を囲って別の場所に転移した。するとそこは既視感のある真っ白な空間で私が死んだとされる日を思い起こし、天界に酷似していることに気づき思わず聞いてしまった。
「シトリン、ここってまさかとは思うけど天界?」
「はい。そうですよ。」
「え。私生きてるよね?」
「はい勿論。」
「どうかしました?来たことありましたか?」
「うん。一回ね、天界に来たことあったけど”私”は『私』じゃなかったからちょっと困惑しちゃった」
「ここで魔法の練習ができるの?」
「はい。ここなら女神様に会えますし、魔法も使い放題。」
「どんな魔法も何の弊害もなく使用できます。」
「へ〜」
「そうなんだ!ちなみに私は何属性?」
「ユナさんは全属性使用できるはずですよ。」
「現に私たち全員と契約しましたし、契約はその属性でないとできませんし。」
今全属性使えるとか言ってた気がする。
「ねぇ、今まで全属性の人ってどのくらいいたの?」
「いませんよ。私が知る限りユナさんくらいです。」
「それにユナさんは女神様のお気に入りなので当然かと。」
「ん?どういうこと?」
「女神様のお気に入りって何?」
「ユナさんが生まれた時に女神様から祝福を受けているんです。」
「なので全属性扱え、その為に突出した魔力量を保持しているんです。」
面倒だな。女神様のお気に入りで妖精の契約者。厄介な匂いがぷんぷんしているのは決して気のせいではないと思う。下手したらせっかく拒否した王子の婚約者のポジションがまた戻ってくる可能性がある。
「なるほど。面倒なことは置いておいて、魔法を教えてくれるんだよね?」
「何から教えてもらえるの?」
「魔力循環からです。」
「何それ?」
「魔力を体内で動かしコントロールしてください。」
「まずは体の魔力を全て手先に集めてみてください。」
そんないきなり言われても魔力を感じたのは契約した時だけだったのでその時の感覚を思い出し、体内を囲っているであろう魔力を探りながら手先に集めてみた。
「やってみたけど、出来てる?かな?」
「はい。まだ少し巡りが悪い気がしますけどユナさんの魔力量でなら問題ないです。」
「次は満遍なく身体全体にやってみてください。」
「分かった」
先ほどとは違い集めるのではなく血液の巡りを感じるように身体全体に魔力を動かしてみた。コツを掴んできて、その後シトリンから言われるがままに魔力を動かし魔力循環はシトリン的合格だそうだ。