家庭教師
お父様の仕事部屋に呼ばれた、随分前に我が儘だった時に邪魔しにいったのが最後だった気がする。何となくどんな用事かは分かっているけれど緊張している。恐らく家庭教師が来てくれたのだがこの世界の教育水準がどれほどか分からないので気が張っている。そうこうしているうちにお父様が居るであろう執務室に着いた。
コンコンーー
「お父様。ユナです」
「ああ、こっちにおいで〜」
部屋にはお父様しかいなかった。
「今日はどうしたのですか?」
「ユナにお願いされていた家庭教師が見つかったから紹介しようと思って。」
「でもちょっと早かったかな。」
「座っていていいよ」
「お父様、ちなみに私の家庭教師になる人はどんな方なのですか?」
「伯爵家の方だよ。学園を卒業したばかりだからまだずいぶん若いし。」
「この後会えるから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」
「そういえばユナ、陛下がユナに会いたいって。」
「断っておこうか?」
ん?陛下が私に会いたい?確かにお話しするのは楽しかったが会いたくなるのは意味がわからない。そしてそう易々とお断りできるのだろうか。
「どうして会いたいのかはお聞きになりましたか、お父様?」
「。。。」
お父様固まっちゃったよ。ただ固まっているというよりかは悩んでいる様に見える。
「陛下はユナと王子をあわよくば婚約者にしたいそうだ。。。」
「はぁ。ん!?婚約者ですか?確かに家は筆頭公爵家ですが政略結婚をする必要は今のところないですよね?」
「一応上位貴族である方が良いと思いますが、恋愛結婚しても大丈夫なくらいこの国は今安定していますよね?」
「そうなんだけどね。ユナは結婚に希望はあるかい?」
「私も乙女なので王子を夢見ることは多少なりともありますが、現実的には誠実でお金・女性・お酒にだらしなくない人が理想ですかね。」
「その点王族の婚約者になるとデメリットしか今のところ考えられません。」
「デメリット?例えば?」
「例えば世継ぎ問題だとすれば必然的に男の子を産むことに圧をかけられますし、もしかしたら側室ができるかもしれないしややこしくなるのは目に見えています。」
「そして私が婚約者になったところでこの家にとっての利点が一切ありません。」
「確かにそうだな。ではお断りさせてもらおう。」
「明日陛下にお伝えしてこの件は無しに。」
お父様生き生きしてるな〜
私としても王族の婚約者になることを拒否することによって面倒ごとを回避でき候補からも外されるのは嬉しい。
コンコンーー
「旦那様。お客様がお見えです。」
「失礼します。」
「初めまして、ハロルド・コフィンです。よろしくお願いします。」
黒髪黒瞳の青年で綺麗な礼をして自己紹介をした。ただ私が想像していた家庭教師像とは違いどちらかというとガサツな印象を持った。何故かはわからないが礼は綺麗だったのに言葉遣いに違和感があった。
「ライナス・シアーズだ。娘をよろしく頼む。」
「始めました。ユナ・シアーズです。」
「よろしくお願いします。」
流れ作業の様に会釈と自己紹介を済ませた。