記念パーティーにて
私たちが入場したすぐ後に王族の方々が入場されるという合図があった。すると私たちが入場してきた扉とは反対側にある扉が開かれた。最初に第一王子で王太子になったのジュン様が扉を潜り、その後国王夫妻が入場した。
王族の方々は壇上にある特別席に座った。通常国王陛下は玉座に座るが記念パーティーで貴族一人一人と挨拶を交わしたり、政治の場ではないので装飾品が施されているものの普通の椅子に座っている。今代の国王や側近たちは敏腕らしく、図書室に置いてあった政治新聞には色々な政策や生活水準を上げる案などを提案していて貴族や平民からの支持が高い。歴史的に見るといつでも派閥争い等が起こっていたが、今代の国王に対する不満はかなり少ないため争いが全くと言ってない。
お父様も家では残念な性格をしているが、職場での人気や仕事の速さなどはさすが側近といったところらしい。家では私に甘くニコニコしているお父様は外に出ると途端に無表情になる。現に今も怖いくらいの無を貫いており、表情筋の発達を心配しそうなくらい表情が動かない。お母様もお父様同様家で見せるのとは違う表情をしている、お父様のように無表情というわけではないがこちらは怖いくらいの作り笑顔だ。ただ、すごく自然な作り笑顔。素の笑顔を見たことがない人は気づけないくらい自然な。。。私もマナーのレッスンで淑女の笑顔という名の仮面を持ち合わせているがお母様のようの自然かどうかは不明だ。
「今宵は公式な社交の場ではない。あくまで記念パーティーという名目であるため皆大いに楽しんで欲しい。」
国王陛下からの挨拶が終わり、皆挨拶したり料理を食べたりしている。
「一応陛下には挨拶しとこうか。」
お父様に連れられ家族で挨拶に向かった。私とリントは初めましてなので緊張している。ただ緊張と同じくらい楽しみでマナーの成果を見せられるのでそれだけで胸が躍る。心臓の音が緊張なのかウキウキなのかは分からないが、前世で言うところのお偉いさんへの挨拶みたいで気が引き締まる。お偉いさんと言うより総理大臣に会うようなものだけど。
「陛下。挨拶に参りました。」
「ライナスか。それと、久しいな公爵夫人。」
「お久しぶりです。陛下。今日は家族揃って出席させていただきました。」
「長男のリオンはご存知かと思いますが、長女のユナと次男のリントは陛下と初めてお会いするので御挨拶に伺いました。」
「お初にお目に掛かります。シアーズ公爵家長女のユナ・シアーズです。」
「国王陛下並びに王妃陛下にお会いできて光栄です。」
私史上一番出来の良いカーテシーをして挨拶をする。顔を上げると満面の笑みでこちらを見ている両親と国王夫妻がおりうまく出来ていたことを肯定してくれているようだった。今日の主役である王太子殿下は挨拶まわりに行っておりこの場にいなかった。国王夫妻はオーラが凄く背景に星が降るエフェクトがかかっているかのような美しさで恐らく王太子殿下は最強の顔面なのではないかと予想している。入場してきた時は遠目だったので顔までは見えなかったが綺麗な金髪に真っ青な瞳だった。国王陛下と同じ色の組み合わせで私が読んだ本の通り王族は皆金髪碧眼らしい。
「次男のリントです。お会いできて光栄です。」
リントはまだマナーのレッスンをしていないにも関わらずボウアンドスクレープをして挨拶をしている。私の天使は天才か?!
「ライナス、お前の子供は皆しっかりしているな。」
国王陛下が私たちを褒めてくださり、お父様は当たり前かと言うほどに笑った。ただ皮肉っぽい笑顔だった。いつものお父様と違う顔を何度も見てしまったせいで、今後対応を間違えそう。前世の上司でも居たなー後輩にはめっちゃ優しくて良い人なのに先輩や同期には毒舌でバッサリ斬る人。お父様絶対そのタイプだわ。