2-10
アルファポリスの2-14
アルファポリスの方では先行して完結済みです
遥は記憶通りの茜の部屋のままだ。
ベッドの位置も、本棚の位置も小学生の時に一緒に遊んだ時とまったく変わっていない。
変わっているのはカーペットの柄ぐらいのものだった。
女の子の特有の甘い良い匂いが部屋の中に充満していて、遥は思い切りそれを吸い込んでしまってから恥いるように眉間に皺を寄せる。
ほんとうなら然るべき時に茜と一緒に部屋に入りたかった。
念のためメモ帳を広げる。ナーガみたいな……下半身が蛇の形の香櫨……大きさは大体手のひらサイズ……
夢の中の茜曰く、押し入れや引き出しの中はぐちゃぐちゃでそう簡単に手をつけられる状態じゃないから、見えやすい場所にでも置いてるんじゃないのか、と言っていた。
ベッドの横には三段式のカラーボックスが置いてある。一番上には教科書やマンガが無造作に押し込まれていて、二段目にはごちゃごちゃと様々なものが詰められた引き出しがあって、一番下には遙も遊んだ覚えのあるブロックが収納されている。
1番上の板の上には所狭しと人形がひしめき合い、山盛り積み込まれて、床に転がり落ちているものもある。ゲームのキャラクターのぬいぐるみが転がってるいるのをそのままに、遥はカラーボックスを起点にして目当てのものを探した。
顔がちょうどよく見える大きな置き鏡の横には申し訳程度に化粧品らしきものがいくつか置いてある。
買う大きさをミスったのかと思うほどでかでかとした香水瓶がある。
その横に、香水瓶と同じぐらいの大きさの銀色の置物のようなものがある。
到底茜の趣味とは思えない。
茜の部屋の雰囲気にまったく合っていない大人びた不思議な雰囲気を放っている。
鈍い色合いの銀色に、ピンクを混ぜ込んだような色をしているか、見ようによっては白色にも見える見たこことのない材質をしている。精緻な彫り物で、夢の中で茜が蛇と言っていたが、これは龍だろうと思う。
上半身は女と言っていたが、女の形をしているのは首から上だけだ。長くウェーブした髪の一本一本まで掘り込まれていて、かなり値が張りそうな高級感が出ている。
上半身と下半身の間に隙間がある。
蓋を開けるように上半身を持ち上げれば、中にはきめ細かな灰が入っていた。
中央には、燃えかすが黒く残ったままになっている。
これだよな。
遥は蓋を閉めて、中の灰がこぼれないように近くに置いてあったマスキングテープで香櫨をぐるぐる巻きにする。
バチ当たり感がすごいが、背に腹は変えられない。
上着のポケットにそれを捩じ込んで、茜の部屋から脱出する。
しかしあんなに堂々と机の上に置いとくか普通?
それとも知らないのか、これが大事なものだってこと……
俺なら絶対肌身離さず持ち歩くけどな。
いや、もう役割を終えたものだと思っているのかもしれない。なにせ、もう入れ替わりは成功している。
元に戻る方法があるなんて知らない可能性はあるな。
……向こうの金髪の彼女は元に戻って、なにを思うんだろうか。
茜はこちらに戻りたいはずだ。
しかし彼女は、自分で入れ替わって……
赤の他人のことを考えるのはやめにしようと遥は、気だるさが抜け切らないままで玄関に向かう。
玄関にはまだ冴の学校の先生が手持ち無沙汰に立っていた。
親父さんはまだ来てないのか。
「冴、俺もう帰るからな」
部屋の奥に居るらしい冴に声を掛けると、陰気な先生の横をすり抜けてマンションの共用部の廊下に出た。




