2-9
アルファポリスの2-13
アルファポリスの方は先行して完結済みです
遥は茜の家のドアの前で立ち尽くしていた。
……ダメ元でドアノブを回してみたり、チャイムを押してみたりしたが、まったくドアが開く気配はない。
管理人に言っても開けてくれないだろうな…いくら仲がいいと言っても赤の他人だ。
どうしようかと表札の辺りを睨みつけていたら、エレベーターの到着音が聞こえる。
誰かこの階の住人が来たのか、と遥は棒立ちになっている不自然さを誤魔化そうと、携帯を取り出して触る。
世の中には頼めば鍵を開けてくれる業者もある。が、ここは遥の家ではない。依頼をするのは難しい。
鍵開けのページなど検索してみるがどれも一朝一夕にはいかなさそうだ。針金で開く!とか完全に泥棒だしな……
はぁ、とため息をつくと、「遥じゃん、なにしてんの なんか用?」と声がかかった。
誰だと顔を上げると、そこには右足にギプスをつけ松葉杖をついた冴と、見知らぬ男性が立っていた。
声をかけてきたのは、茜の弟の冴だ。
遥が去年まで通っていた中学の制服を着ている。
「骨折か?」
「ヒビだって。ヒビの方が治るの遅いだって、最悪」
「……小嵐くんのお兄さんですか?」
冴に付き添ってきていたらしい男が、聞いてくる。
そっちこそ誰だという目で見ていたら、「あ、私小嵐くんの担任の磯場といいます。小嵐くんが学校で負傷したので、付き添って病院に行って戻ってきたところなんですが……」
「そいつ俺の兄貴じゃねぇよ。ご近所さん」
冴は反抗期まっさかりのつんけんどんな態度を取っている。
「あー、そうなんです。まぁ、幼馴染ってやつです」
磯場先生の顔つきが険しいなと思っていたが、遥は自分が今金髪に染めていることを思い出した。
そりゃ、ギンギンの金髪の男が廊下で立って待っていたら不信感を抱かれても仕方がない。
磯場先生の視線はやたらとうろうろしていて、こころなし、怯えられているようでもある。
「なにしてんの?」
冴は制服のブレザーのポケットに手を突っ込むと、遥のしらないキャラクターのキーホルダーのついた鍵を引っ張り出して玄関のかぎ穴に差込んだ。
……遙の問題は一気に解決に向かった。
完全に運が味方についているとしか思えない展開だ。
さすがにドアを開けるのは難しそうだと、遙は開いた音を聞くと、冴の身体を少しだけ押してドアの前からどかせてドアを開けてやった。
「先生、親父がもうすぐ着くらしい」
冴は、玄関に座って靴を脱いでいる。
「あー、じゃぁ玄関先で待たせてもらってもいいかな?」
磯場先生は、時計を見てから冴に聞く。
「上がらないんですか」
「親御さんに少し説明したらがっこうに戻るからね」
上がり込むと長引いてしまうかもしれないと、あえて玄関先で待つことを決めたようだ。
もしかしたら何か用事があるのかもしれない。
「遙は? 上がんの?」
「あー、一瞬だけいいか? 茜の部屋にあるものを取りに来ただけだから、五分もかからないから」
「まーたあかねぇ借りパクしてんの?」
冴は呆れたような半眼になる。
「俺も貸したマンガ返ってきてない」
明日新刊出るから前の巻返してほしいんだよな、などとぶちぶち言っている。
オレは止められる前にあえてずかずかと家に上がり、入ってすぐ右の茜の部屋のドアを開けた。




