2-7
アルファポリスでいうところの2-10
「おーい、もうお昼だよ、調子はどうかな?」
保険医の声で覚醒した俺は、ぼんやりとした視界を瞬きでクリアにする。おしゃれすぎるメガネの保険医は、くい、とメガネを上げてから遥の顔を眺める。
「まだちょっとぼーとしてるね。顔色もまだ悪いし……」
「お昼はどうしてるの? お弁当があるなら取りに行ってここで食べる事もできるし……購買はちょっと買いに行くのしんどいかもしれないけど、何か食べた方がいいと思うんだけど」
保険医が聞いてくれるが、弁当なんていう高尚なものはない。
時計を見ると、昼休みになってから10分ほど経ってしまっている。今から行ってもろくなものはないだろう。とはいえ空腹のまま午後を迎えるのは嫌だし……
購買にいつも残っているのは甘い系のパンだ。
今の遙の気分は甘いものではない……が、背に腹はかえられないか。
のそっと起き上がり、持ってきていた携帯を確認する。
みると、彼方からメッセージがいくつか来ている。
《遥保健室にいんの? めずらしッ!》
《昼どうすんの? 帰る? 昼メシいるならついでに買うけど》
《返事ないからとりあえず焼きそばパンとか買った》
最後のメッセージは3分前だ。そのまま持ってくるとすればもうすぐ来る頃だ。
「しつれいしまー」
でかい彼方の声が保健室に響く。
「保健室ではもう少し静かにな」
「はーい、遥まだ寝てます?」
「起きてるよ。お、お昼持ってきてあげたの? 優しいね~」
「まぁ、俺の身体のすべては優しさで出来てるからね」
保険医と軽い会話をしながら、彼方の足音が近づいてきて仕切っていたカーテンを開けた。
「うわ、まだ顔色変なままじゃん」
彼方の手首には白い買い物袋がぶら下がってガサガサと音を立てている。
「そうか?」
「なんか悪いもんでも食べたんか?」
「……別にいつも通り」
心当たりといえば茜の出てくる夢しかないが、夢を見るとなんらかの影響があってもおかしくない。
茜は特になんにも注意してこなかったし、知らないんだろう。
「ほい、焼きそばパンと、女子に大人気サンドイッチ~! このサンドイッチ最後の一つだったんだぜー! オレ、かつコロッケてんこもりの方。お前はたまごハムサンドな」
「彼方にしてはいい選択だな」
いつも妙に甘いパンを買ってくるのに今日はちゃんとしたラインナップだ。
「まぁね~! てか食欲は普通にあんのか」
「ちょっとだるいだけだ」
「顔色悪すぎるからちゃんと休めよ」
「……」
「さて、保健室名物くそあっついお茶でも飲むか」
「お前……ここで食べんのかよ」
「くそあっついお茶は保健室の外に出すのは御法度だからな」
「なるほど、それ目当てか」
「いや、純粋に遥が心配でさ……」
うさんくささしかない心配顔を作った彼方をみてため息をついた。
どこでそんなあざとい技を身につけてくるんだか
「……お茶俺の分も」
「わかってるって」




