【九十三話】私と第三王子様。
美人三姉妹って……。
その中に、次女も入れてくれるとは吃驚だ。
まあ、そこは重要な所ではないのですが……。
嬉しかったので、一応反応して置く。
つまり、王家とカールトン公爵家で約束事がされていたと。
第三王子様の臣籍降下先。
カールトン家の娘を一人娶り、爵位を継ぐ。
三人の娘の内、家族でもしつつ、相性を見定めようと。
そういう予定だったって事でオッケー?
言われてみれば、貴族としてそんなにおかしな行いじゃない。
まったく気付かなかった私がむしろ哀れというか。
オリヴィアお姉様は既に初日に感づき。
シンデレラすら後日に気が付く。
そして次女のミシェールだけは、延々気付かずに、今に至る。
そんなのーー
とっとと、長姫であるオリヴィアお姉様に決めておいてよ!
こんがらがるじゃないの!
私は文句の一つも言いたくなった。
事態が微妙に複雑化しているわ。
だって、その後、第二王子様と私は内々で婚約し。
オリヴィアお姉様は第一王子様を追いかけ回していた。
そして、シンデレラはーー
今、私の手を取りダンスをしている相手、キースに恋情を抱いている。
この七年間も家族をして来た男の子。
第三王子様に。
キースとオリヴィアお姉様は年齢にして、五歳の差が合った。
オリヴィアお姉様の方が年上。
その辺を鑑みられて、相手を特定しなかったのだろうか?
しかし、どの娘を選んだところで、年上ですがね……。
硝子の靴を拾う、シンデレラの王子様は、目の前の少年。
私の弟であり、アッシュベリー王国第三王子、キース・アッシュベリーということになる。
ん?
第三王子様のお名前は、カーリー・アッシュベリーよね?
アッシュベリー王家は、母方の姓をミドルネームには入れない。
他家の姓は残さないのだ。
つまり名乗る予定のない名前か姓か洗礼名か。
そういった扱いの名かも知れない。
カーリー・(キース)・アッシュベリーかな。
どうだろ?
キース・カーリー・アッシュベリーという事はないわよね。
公式に出しているネームがカーリー・アッシュベリーだものね。
まあ、今更、キースはキースで弟は弟なのですが。
今から、第三王子様とか呼びにくいわ。
キース様ともちょっと呼べない。
ええ。
もう七年間、がっつり姉をしてしまったので……。
沽券的に無理です(汗)
十二時の鐘が鳴り、魔法が解けそうになるシンデレラを追い掛ける王子様。
あんまり急いでいたから、階段の中腹で靴が片方脱げてしまう。
王子様はその靴を拾い、城下を隈無く探すのだ。
硝子の靴の持ち主を。
サイズのぴったり合う女の子を。