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【九十二話】血筋の話2。



 彫刻の様に固まってしまった私をキースが覗き込む。



「ミシェールお姉様、曲が変わりますよ?」



 そう言って、彼が差し出した手に、私は呆然となりながらも、手を置く。



 ダンスホール中央までエスコートされると、私は曲に合わせて踊り出す。

 惰性で中央に来てしまった。



 目立つわー。

 何とかしてー。



 ダンスは小さな頃から叩き込まれてるので、心ここに在らずという状態でも踊れるのだが……。



 ああ。

 皆が見てる。



 弟と踊っている私を?

 それとも、この人が誰かを知っている人達が、好奇の目を向けているの?



 私には分からなかったが、後者だったら、身が竦みそうだ。



 何という事だ。



 それに尽きるではないか。

 私が弟だとばかり思い込んでいた人物は、驚いた事に、非常に高貴な身分の人だという事になる。



 大変だ。



 一体全体どうした事か。



 それにまったく気付かなかった自分が呪わしい。



 ダンスをしながら話をすると、舌を噛んでしまいそうだが、私は果敢にもキースに話しかけた。



「オリヴィアお姉様は知っていらっしゃるの?」


「もちろん。家族として暮らし始めたその日にしっかりと言われました。『あら第三王子様の降下先はカールトンに決まったのね? 私達三人の誰かとご結婚されるということね。宜しくね』と笑いかけて頂きましたね」



 私はダンスをしながら、足がガクガクと震え出しそうだった。


 嘘?

 ホントに?


 私の間抜けさが、尚際立つわ。



「シンデレラはどうなの?」



 まさか、あの子まで知っていたら洒落にならない。



「知っていますよ? オリヴィアお姉様ほど直ぐには気付かなかったようですが。シンデレラお姉様は、そもそも僕がどこからやって来たのか不思議に思ってましたからね」



 ガーンと来た。

 衝撃がガーンと。



 立ち直れないかも知れません。

 オリヴィアお姉様なら兎も角、シンデレラよりは鋭いと自負していましたからね。



「落ち込んだ?」


「落ち込んだわ」



 キースに問われて、私は素直に認めた。



 つまりはーー


 この目の前で笑っている少年はーー



 アッシュベリー王国第三王子。



 七年前に、第三王子様の臣籍降下先はカールトン公爵家ということに決まり、準備的なものの為か、婿養子的なものの為か、兎にも角にも理由があり、カールトン家に預けられ、家族として生活を共にしていると。



 そういう訳よね。

しかもーー王子という身分は伏せて。



 気付けば、まあそれでも良いし、気付かないならそのまま。

 というような対応。



 そして、姉達の中で、私だけが気付かなかったと。



 私は盛大に溜息を吐いた。

 自分自身に向かって。



「だからねーー」



 キースは私の耳元に口を寄せる。



「本当は、カールトン公爵家の美人三姉妹は、僕のものだったんだよ」


「?」


「三人の中から、妻を選ぶ予定だったんだよ?」


「………」


「それが王家と公爵家の約束事」



 キースは耳元から口を離すと、静かに笑っていた。



 あれ?


 この子、こんな感じに笑う子だったっけ?



 なんか、少し、ご立腹???




 

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