【八十九話】私の弟2。
私が九歳の時、この弟と姉弟になった。
彼は六歳で、まあ随分と小さかったわよね。
私と三歳違い。
シンデレラと二歳違い。
そしてオリヴィアお姉様とは五歳違いだ。
その頃から、可愛い容姿をした少年で、しかも性格は従順だったと思う。
それこそ、記憶の中では喧嘩なんかした事がない。
「踊ろう?」と言えば。
「はい」と二つ返事で返って来そうなのですが。
ニコニコして、子供の頃は姉達の後ばかり追ってきていた。
三人の姉から、大概可愛がられてたわよね。
誰と一番仲が良かったかと考えると、やっぱり一番歳の近いシンデレラじゃないかしら?
「シンデレラに、ダンスをしようと言われたのよね?」
「まあ、そうですね」
「そんなに頑なに断るような事?」
「………」
あくまで姉弟だ。
別に他意なく一曲くらいは良いだろう?
というか家では練習で踊ってるじゃん。
みたいなさ。
「ミシェールお姉様。僕と踊りますか?」
「いえ、結構よ。さすがにシンデレラの手前、心証が悪くない?」
なんなのだ。
この弟は。
私と踊れるなら、シンデレラと踊れば良いでしょうよ?
同じ姉だし。
「あなた、私とは踊れてシンデレラとは踊れないの?」
「まあ、そうですね」
「オリヴィアお姉様とは踊れるの?」
「踊れますよ」
「意味、分かんないんだけど」
「意味が分からないのは、きっとミシェールお姉様だけだと思いますよ?」
「…………」
弟のキースが、姉の中でシンデレラとだけ踊れないとはどういうことよ?
「??」
「なんか、深い意味があるの?」
「それなりには」
「教えてよ?」
「じゃあ、一曲踊ってくれますか?」
「………」
踊れば教えてくれるんだ。
謎??
しかし、踊るのはタダだ。
安いものではなかろうか?
「シンデレラが見てないところでならね」
「見てないと思いますよ。まだ会場には帰って来られないでしょ?」
そう言って、弟はニコリと笑う。
結構、酷いな。
私の弟って、こんな酷い感じだった?
三番目の姉を泣かしておいて、二番目の姉に笑いかけてますよ?
罪ですね。