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【八十八話】私の弟。



 視線の先で、柔やかに踊る第二王子様から視線を外す。

 長く見ていても、きっと辛くなるから。



 見ないにしよう。

 眩しいくらいにお綺麗な王女様から視線を逸らすと、私は胸を押さえて深呼吸をする。



 落ち着いて。

 想定外の事が起こるのは、想定内でしょ?



 乱れかけた呼吸を整えると。

 私は辺りを見回す。



 どこに行っちゃったのかしら?

 私の妹と弟は。



キョロキョロとしながら、ダンス会場を一周する。


すると、南のテラスにチラリとシンデレラらしき女性を確認する。



 よし。

 見つけた。



 水色のドレス。

 硝子の靴。

 間違いないわね。



 私はそもそもが家族なので、なんの遠慮もなく、合流しようとした。


 けれどーー


 はたと足が止まる。



 何?


言い争ってない?


 しかも、男女の修羅場的な?



 シンデレラと、男の人。

 というよりは男の子?



 まあ、普通に弟のキースなのですが。

 彼はまだ十三歳なので、アレですよね。



 少年ぽさが残っているというか。

 背もシンデレラより低いか高いか同じくらいかというようなもので。



 その我が従順な弟と、妹が言い争ってますよね?

 こんな所で?



 兄弟喧嘩なら、家でやれっていうの。


 しかもーー


男女の修羅場的内容なのは、何故?



「一曲くらい踊ってよ!」


 とか。


「どうしてなの!」



 とか。



私の妹と弟は、なぜにこんなことになってんの?



 一曲くらい踊りなさいよね、キース。

 景気付け? にさ。



お姉ちゃんと踊るのは恥ずかしいお年頃なわけ?



 この二人って、結構、仲が良かったと思うのよ?

あんまり喧嘩とか、しなかったと思うのだけど。



 そうこうしているうちに、泣きながらシンデレラがこちらに駆けて来る。

 顔をハンカチで覆ってたせいか、私には気付かず一目散に駆けて行った。   



 ああ、アレはレストルーム直行ね。

 泣いてたものね。



 良い年をした、兄弟が泣くほど喧嘩って。

 しかも出先で?



 私は、シンデレラを追うか、キースに説教をするか一瞬迷ったが、後者を選んで

キースの元に歩いて行く。


 

 シンデレラには弟にがっつりとお説教をした後、会いに行こう。

 その方が、フォローに成るだろうし。



 思えば、この弟と会ったのも久し振りだ。

 落馬する前になるから、半月は会っていないのだろうか?



 お姉様が落馬して、生死を彷徨ったのよ?

 お見舞いくらい来なさいよね。



 私は二重にお説教するつもりで、キースに声を掛けたのだが、彼はシンデレラと違って私の気配に気付いていたのか、驚きもせず、姉との再会を待っていた。



「ミシェールお姉様、ご機嫌は如何ですか?」



 くすんだ金髪に紫紺の瞳。

 彼は彼で、大変な美少年ですよね。



 我が弟ながら、そう思います。 




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