【七十三話】胃洗浄の彼方
別の部屋に移った私達は、続き部屋の奥、ベッドルームに移っていた。
まあ、普段は使われていない、客室のような部屋だと思う。
ベッドに座らされて、肩を抱かれて、そのままチュー。
??
しかもーー
グッと深い感じにチュウ。
ちょっと予期せぬ展開に息が止まりそうになりました。
別に、「チュウします」と宣言して欲しいとまでは言わないが、何というかそういう雰囲気の時にして欲しいわー。
とは思うがそれどころじゃない。
通常、胃洗浄というのは、胃にチューブを入れて、生理食塩水等で洗う。
経口摂取してしまった毒を、体内に吸収させない為だ。
光は体外で発された場合、条件下で目視出来る事もあるが、体内は出来ない。
当たり前と言えば、当たり前の話。
そもそも体内自体が見えない訳だし……。
つまりはきっと、今、私の体内は光が溢れている。
そういう事でしょ?
経口摂取はしていないのだが、多分、光の胃洗浄。
私はルーファスの唇の熱を感じながら思う。
いや、マジで、過保護だろ。
と。
飲んでないってば。
大丈夫だってば。
とは思いつつも抵抗は出来ないけど。
なされるがまま。
毒とは。
基本は口に入れない。
もし入ってしまったら。
体内に吸収させない。
もし体内に入ってしまったら。
全身に回ってしまう。
古来貴族とは、暗殺を恐れ銀の食器を使っていた。
しかし、それだけではなく、血眼になって解毒剤の開発も行っていたのだ。
もちろん前世の貴族の話だが。
その割りには、解毒剤の種類が少なすぎる。
つまりは、難しい訳だよね。
うん。
それはそうか……。
毒自体は自然界に存在するものを採取すれば良いけど。
解毒薬はそんな簡単な話ではない。
例えば、ヘビ毒。
毒を採取して、哺乳類に打つ。
その哺乳類にうまく抗体が出来れば、血清を採取。
血清とは怪我した時に出る、血液とは別の透明な液体だ。
やや黄色身がかっている。
しかし、前世の医学ならまだしも、今世の世界でそこまで出来るかな?
理論的にも確立されていないだろし、技術的にも難しそうだ。
しかも、確実に出来る保証はない。
なんだろうね……この徒労感。
でも……、逆に言うと、この解毒剤、開発できたらバカ売れね。
間違い無いでしょ?
私の頭の中はかなり不謹慎な事を考えていた。
いやいやいや。
キスの最中に考えることじゃねー。
というか胃洗浄だけど………。