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【五話】 ハッピーエンドを目指しますよ 

巌窟王って強固なイメージ?



 そうと決まれば話が早い。

 彼女には童話通りの結末を歩んでもらう。


 ダンスパーティーだ。


 貴族子女が通う王立学園の卒業イベント、ダンスパーティーが近々あるはずなのだ。


 そこで私は断罪を受ける(泣)

 はい! 受けますとも(大泣)


 これも身から出た錆だ。

 潔く受けます!


 前にも言ったけれど、何度でも言う。

 私の中で覚悟を決める意味合いもある。

 

 覚悟が決まったところで……。

 大切なのはキーアイテムだ。


 王子様。

 もうこれは外せないメインディッシュ。

 王子なくして、このイベントの成功なし。



 しかし、この国には王子様は四人いる。

 ………。

 結構いるのだ。



 二人は現王妃様のお子さま。

 そして後の二人は第四側室、つまり王の寵愛を受けている序列四番目の妾妃様のお子さま。


 定石で考えれば第一王子で間違いないわ。


 なんと言ってもシンデレラロードだ。

 妾妃様のお子さまとは考えにくいじゃないか。

 ただ、気になる点もある。


 今回、王立学園の卒業を迎えるのは、第二王子だ。

 王立学園は十六歳で卒業を迎える。


 男子は後の、文官、武官、領主の養成所として有り、女子は良妻賢母を目指す。

 もっと言えば婚約の場だ。


 学生時代に家同士の婚約を成立させ、卒業を迎える。


 私は十六歳。まさに卒業イベントど真ん中だ。

 つまりは断罪イベントど真ん中とも言う。


 そしてシンデレラは十五歳。

 花の十五歳。

 一つ年下になる。

 オリヴィアお姉様は、若干行き遅れの十八歳。


 そして肝心の第一王子様は十八歳で、もう公務に携わっている。

 もちろん、陛下、皇后陛下、並びに王族方の多くが御列席される予定だ。

 第一王子殿下もいらっしゃるだろう……。

 


 が……

 メインじゃなくない?

 立ち位置的にさ?

 どうなの?


 ダンパの主役は当然卒業生だ。

 つまりは誰が何と言おうと今回のダンスパーティーで主役を演じるのは第二王子様。



 私を断罪するのも第二王子?

 いやもうしつこいようだけど、大切なのでセットで考えさせて下さい。



 衆人は第二王子が誰と一番最初に踊るか?

 ということに興味津々な筈。  

 そうなって来るとシンデレラの相手は、第二王子という事になるだろう。


 童話では、王子様が第何王子か等と詳しくは書かれていない。

 というか、童話で何番目の王子だと書いてあったら吃驚だ。


 私だって絵本を読んで、王子様は王位継承権二番目の第二王子です。


 なんて書いてあったら、ちょっとどうだろう? と思う。


 白雪姫だって眠りの森の姫だって親指姫だって、王子様が何番目かの王子様です。

 などという無粋な記述はない。

 


 絵本には必要がないから書いていない。


 だが…しかしー。


 現実は至って現実というか。

 王子だって人の子だ。

 兄弟くらいいるだろう?

 という話。


 その証拠に我が公爵家にだって、末の弟が存在する。

 もちろん童話には影も形も存在しない。


 王子様と貧しい女の子が結婚するという話に、弟なんて登場させようがないものね。


 私は深く黙考する。


 私は第二王子の人となりをある程度知っているのだ。


 令息と令嬢は基本学科がまるで違うのだが、そこは何と言っても同じ年というか同級生というか……。


 つまりは接点があるにはある。


 第二王子というのは得てして、第一王子程ストレートな王子様タイプではない。


 やはりどこか次男的な性格になる。


 太陽と月を比べて月タイプだったり。

 光と影で影だったり。


 クールというか。

 一筋縄でいかないというか。

 


 まあいいわ。

 とにかく、少し斜に構えたタイプってことよ。

 そんな男が超王道のダンスパーティで婚約者をこれ以上ないくらい辛辣に振って、国外追放または修道院送りにするか?


 イメージじゃないのよね。

 性格が悪いってところは、確かに有りっちゃあ有りだが……。

 あいつ、逆上するタイプには見えないのよ……。


 王子身分の人間をあいつ呼ばわりとはどうかと思うが、これは前世が身分社会ではなかった所為か、基本個人の人格を元にして人を評価する癖が抜けないために出た言葉だ。


 私は第二王子のやや切れ長の瞳を思い出す。

 けっこう冷たそうな顔をしていて、実際冷たい男だ。


 ダンパであんなに熱くなるかしら?

 どうなのかしら?


 というか……。


 第二王子の婚約者って誰よ?

 基本的な事、押さえてないじゃない。


 立場的には断罪を受けるはずの私だ。

 だが…もちろん婚約者ではない。


 ないよね?


 もしやお父様と陛下の間でこっそり何かしらの遣り取りがあった?

 そんなことってあるかしら?


 しかしは、断罪イベント。

 婚約者がいないんじゃあ、これもまた話にならない。

 高慢ちきで身分だけが取り柄の娘がいるはずだ。


 それ、私だって!


「シンデレラ?」


 私は耐え切れなくなって、目の前にいるシンデレラに声をかける。

 情報を知っていてくれたらありがたい。


「第二王子様の婚約者って誰か知ってる?」


 私は私なりの理路整然とした話の展開をしているつもりなのだが、ガラスの靴からかなり飛んだ話題になってしまい、またもやシンデレラを困惑させてしまった。


 これはマイペースで理論型の前世が色濃く出ているわ。

 私はシンデレラという絶世の美女に嫉妬を感じない。


 むしろ眼福というか? 

 なんというか。

 目の保養なんです。


 つまりは彼女は私にとってライバルではないということ。

 容姿で競おうとなんて思わない。

 身分で競おうとなんて思わない。

 恋で競おうとなんて、絶対に思わない。

 きっと永遠に思わないわ。



 私が好きなのは静かで、本が沢山あって、適度に仕事もあって、猫がいて、穏やかな暮らしだ。

 権謀術中の王侯貴族の生活には憧れていない。

 人それぞれ理想が違う。

 求めるものが違う。

 幸せの形が違う。


 幸せになるのよ、シンデレラ。

 私は心の中で呟いた。


 私が虐めた過去は、シンデレラの幸せでしか贖罪出来ない。


 つまりーー


 ミシェールという少女の人生も、シンデレラの幸せを見届けないと始まらないのだ。


 この身で罪を濯ぐのよ。

 ミシェール。

 人を無意味に虐めた罪は重い。


 第一王子だか、第二王子だか、微妙に分からないけど、とにかく最善へ向かって走り抜けてみようと思う。


 その為に、まずはお父様に事実確認だ。


 私は令嬢に有るまじき事だが、胸の奥に戦意を燃やすのだった。








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