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【五十八話】悪役令嬢の姉A



 私は姉を目の前に固まっていた。

 姉、恐っ。

 

 ここは公爵家ーーではなく、王宮のラウンジ。

 私はこのラウンジで、四人の皆さんと会うのね?


 一昨日に比べれば、緊張のしない相手ではあるが、もうね。

 メデューサだから。


 目を見ただけで石だよね。

 カチンコチンになって、言われるがままになんでも話してしまいそう。


「お久し振りね、ミシェール」

「はい。お久し振りです、お姉様」


 人と話す時は、目を合わせる。

 という言葉が前世にはあるのだが……。


 アレってホントなのかなー。

 目と目が合うと、戦闘開始の合図っていう動物結構いるんだけど?


 日本でもさ、不良とかそういう感じだったし、相撲の立ち会いとかもある意味そういう感じじゃない?

 目を見るのって危なくない?

 

 私、予感がするわ。

 次にお姉様と目が合った瞬間、きっと切り込まれる。


 と言っても、目を見なければ始まらないのだけど。


 恐る恐る視線を上げる。

 そして、バチンと静電気が弾けたのかと思うほどの体内音響が響き、目が合った。


 魔王だ。

 魔法降臨だ。


「私ね、学園にいる四年間の全てを掛けて治癒魔法の存在を調べていたのよ?」

「…………」


 いきなりド真ん中。

 もうちょっと言うことありますよね?


 あなたの妹は生死の境を彷徨っていたのですよ?

 大丈夫とか?

 お加減はいかが?

 とか。

 あるよね。

 普通。


「でも、トップシークレットでしょ? 中々掴めなかったの」


 そりゃそうでしょうとも。

 簡単に掴めたら吃驚だ。


「王妃陛下がフィラル国、国王陛下の妹君でしょ? だからね。第一王子か第二王子のどちらか、もしくはどちらにも精霊のご加護が遺伝している筈だって思っていたのよ」


 まあ、どちらにも遺伝しない確率もありそうですけどね。


「それによって、私の婚約者が変わって来ると思ったから、必死だったのよ?」

「婚約者ですか?」

「そう。王族にならなければ、大手を振って恩恵を受けられないじゃない?」


 そんな。

 本当に自己中の鏡。


「私は、お金も知性も美貌も持っているもの。でも魔法は持っていない。手に入れるなら魔法でしょ?」


 いっそ清々しいです。

 お姉様。


「第一王子が精霊のご加護を受け継いでいるのなら、第一王子と婚約し、第二王子に受け継がれているなら、第二王子と婚約するつもりだったわけ」

「お姉様は、私が第二王子様の婚約者だと知らなかったのですか?」

「当然知っていたわ。お父様がお母様とコソコソ話していたもの」


 やっぱり知っていたんですねっ(涙)

 父も母も姉も!

 ホントに知らぬは本人ばかりという状態で。

 セイ、天井裏から笑ってやって下さい。


「じゃあ、その時点で第二王子様は難しくないでしょうか?」


 だって妹の婚約者ですし。


「当然、妹から奪ってたわね」

「ーーーーーっ」


 声にならない声が。

 酷いお姉様っ

 やっぱり私を殺そうとしたのはお姉様!?

 

 私が項垂れていると、姉にポンポンと背中を叩かれた。


「まあ、安心しなさい。今となってはそんなことをしなくても良くなったわ」


 メデューサは恐ろしい笑顔で微笑んだ。


「あんたが落馬してくれたお陰で、一発で分かった上に、私は王家の秘密を手に入れた。今更誰の婚約者にならずとも、治癒魔法の恩恵は得られると思うわ」


 この人、大丈夫?

 こんなに調子付いていて消されない?

 

 逆に心配になるレベルなんですけど。

 私よりずっと暗殺対象になりそうじゃない?


 しかも王家の影に筒抜け。

 ここ、王宮のラウンジなんですけど。


 私がチラリと天井を見ると、姉に目敏く見つけられた。

 そして、敵はふふふと微笑んだのだ。


 そして小さな声で呟いた。

 

「妃にもつくのねー」と


 ヤベェ。

 影の存在がメデューサにばれた。

 この女の前だと、自分が丸裸になっているんじゃないかと錯覚する。

 妹の落馬すら利用してのし上がるタイプ。

 あ、いたよね。

 平気で妹の婚約者を奪う主人公。


 スカーレットよ。

 スカーレット・オハラ。


「モンテクリスト伯」に並ぶ、割と時代の洗礼を受けた作品。

「風と共に去りぬ」ね。


 そっくりよねー。

 問答無用なところが。

 わたしはしみじみと感じていた。

 そうやって少し、自分を励ましたのです。



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