表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/171

【五十七話】浅からぬ縁



「ハァー」


 なんか、王太子様に会ってから、溜息が止まんないのよ。

 何度目かしら?


 ちなみに会ったのは昨日。

 一晩ぐっすり寝て、今日は静養中。


 私は自室の丸テーブルで、チビリチビリとイチゴレモン水を飲む。

 リンゴと人参は保存が効くが、イチゴは砂糖と一緒に煮詰めて瓶詰めにすることで保存が効く。


 そこにレモンを垂らして水割りにすると、さっぱりして美味い。

 レモン入れすぎ注意だけどね。

 胃が痛くなるので。


 あの二人は浅からぬ関係だということは、ハッキリ、キッパリ分かったわ。

 王太子様とオリヴィアお姉様。



 どんな関係なの?

 という話。



 甘い関係とは少し違うわよね。

 恋人とか、好意とか、そういう前向きな関係ではない。



 どこか苦いというか、憎悪と表裏一体というか。

 紅い髪にトラウマがあるというか、でもそれだけじゃないみたいな。



 後ろ向きな関係。

 もしくは完全な過去



 ほんのりピンク色に染まるイチゴ水って、なんだか甘い甘い女の子の色よね。

 可愛くって、微かに甘くって。



 オリヴィアお姉様というのは、見かけは完全な悪役令嬢だ。

 王太子様に言い寄る令嬢に水を掛けてたって言ってたもんねー。



 素でそんなことやる令嬢っているのねー。

 実の姉ですがね。



 私より更に、キツい感じの顔だ。

 なんというか、紅髪に紅い目をしていて、あの目に睨まれると怖いのよ?



 何でも見透かすような、強い眼光の持ち主なのだ。

 ちなみに頭の回転が早く、エゴイスト。



 座学もそれなりに出来るし。

 運動も出来る。



 ただし、座学が出来るのは学問への純粋な興味などではなく、その方が色々と有利だと考えての事だと思う。



 損得勘定では右に出る者はいないのではないかしら。

もちろん私は姉の足元にも及ばない。



 昨日聞いた時は、突拍子もないと思えた姉の行動だが、今日は全てに紐付けして考えてみる。

 なんせ無駄な事はしないタイプなのだ。



 座学で王太子様に勝負を持ちかけたというのなら、もちろんその賭けの見返りが重要なんだと思う。



 つまり、掛けに勝って何かが欲しかったのよね?

 話の流れ的には、王家の秘密……。



 第二王子様の治癒魔法について。



 第二王子様と同級生だった私が、まったく気が付かなかったのに、何故二つ上の姉が気が付いた?



 男子の授業に潜り込んだのは、剣術か体術か弓術か何かじゃないのかしら?



 着替えがあったり、そういうの。

 例えば二日前に出来た傷はどうなったのか?



 確認したかったんじゃないかなと思う。

 王太子様の体を見たかった。



 多分、治癒魔法の恩恵を多分に受けている体を調べたかった。

 そう考えれば辻褄が合う。



 もしくは、王太子様が何かの拍子に怪我をしないか見張っていた。

 もちろん、王太子様のお体を心配してなどという殊勝な心根ではない。



 姉は、兎にも角にも治癒術の正体を知りたかった。

 徹頭徹尾、自分の為に。



 王太子様はそんな姉がうっとおしかった。

 空気を読めるのに、わざと読まないあの姉が。



 普通は王族には遠慮しそうなものだが……。

 姉には遠慮の文字がなかったーー。



 あの姉に食い付かれたら大変よ?

 どこに逃げれば良いのって話。



 しかも、どこか深くに刺さり合って、傷を負った関係っぽくない?



 どちらにしろ公には秘密の関係だったのでしょうけど。

 親友と言うには収まりが悪く。

 悪友と言うのは体裁が悪い。



 そういうドロッとした関係って、影は知っているのでしょうね?

 私は天井を見る。



 王族一般に詳しいんでしょう。



 私を排除したい対象って、多種多様なのね。

 王太子様は、あの事故の詳細な語り方からして、少なくも私に好意は持っていない。



 オリヴィアの妹だから憎いのか。

 大切な弟の婚約者として不適切だから憎いのか。



 どちらか分からないけれど。

 あの人、私の中にオリヴィアお姉様の一部を見た。



 私を通して、姉の気配を感じていた。

 それだけは、はっきりと分かる。


 

 だから、つまり。

 ドロッとしてるってこと。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ