【三十七話】薔薇の温室とクリムゾンレッド
薔薇は紅
アッシュベリー王国、王立学園の卒業式は、国の花でもある、薔薇が咲き誇る季節に行われる。
前世では桜の舞い散る季節だったが、そういうのは国によって違うものなのだなと実感する。
日本の国花は桜で、卒業式に咲くのも、入学式に咲くのも桜だ。
桜は桜吹雪や花筏になるものだが、薔薇は舞い散るという雰囲気ではないわよね。
ダンスパーティーには、みんなここぞとばかりお洒落をするもので、令嬢のドレスで色鮮やかな花が咲く。そのドレスの色に合わせて、薔薇の生花を髪に飾る分けだが、これはエスコートをする男性から送られるものだ。
悪役令嬢といえば、真っ赤などぎついドレスか、濃紺色の夜空のような大人の色と相場が決まっている。女の子の定番色、ピンクとか白とかラベンダーとか淡くてふわふわした色は似合わないらしい。顔の作りがキツいからかしらね?
私も例に漏れず、やはり淡いパステルカラーが似合わない。
卒業式に新調したドレスは赤ですけども何か? 仕立屋は、紫も大変お似合いですよ?
と押ししていたが、十六の乙女が紫という色に袖を通すのもなかなか勇気のいるものだ。
しかし、これも日本を思えば最上級の色になるのだろうが……。ある時代まで、紫という色は禁色だった。庶民は使ってはいけない色。殿上人の色だ。
ちなみにアッシュベリー王国が翳す色は真珠色。
光沢のある白っぽい色は王族しか身に付けてはいけないというルールだ。
王家のカラーというやつ?
まあ、ぶっちゃけ絹ということなのだろうが。高価な物の象徴だからかしらね? 手触りも良いし。
海洋国フィラルは瑠璃色。ラピスラズリにちなんでいる。海っぽいしね。
だけど、瑠璃色って結構あるわよねー。
薔薇の温室内は、小道のような可愛らしい作りになっていて、中央が開けている。
そこがサンルームになっているのだ。正面に噴水があり、この噴水に光が振り注ぎ、虹を作っている。もはや、温室というレべルじゃないよね。
そこに金属を流し込んで作る鋳造の椅子が置いてある。二三人座れる横長のベンチタイプ。
促されるようにそこに座ると、第二王子様がこちらを見つめてくる。
随分長く見つめるわね? ちょっと視線に耐え切れなくなりそうです。
さて、どうしようかな? と考えていると、王子様の手が首筋に掛かる。
そうしてそっとボタンを外して行くのだ。今日はハイカラーのブラウスを着ていた。
喉元まできっちりと締まるタイプ。白いレースになっていて、首筋はまったく見えない。
もちろん意図的にこの服を選んだのだ。
だって、そうでしょ?
レースはいつでも女の子の味方だもの。汚いものを隠してくれる。悍ましいものを包んでくれる。
ボタンが、一つ二つと開けられて行くと、私の体が小さく揺れる。
彼の手は何個のボタンを解いてしまうのだろうか?
今すぐ第二王子様の手を振り解きたい。
ーーでも
こんな時でも私は気が強く出来ているのね………。
エメラルド色の瞳を見つめたまま、目を逸らせずにいた。
彼もまた、私の露わになった首筋から瞳を逸らさずにいた。
そこには、見苦しくも赤黒く爛れた絞首の痕があるのだから。
誰にも見せたくない。誰も見ないで。
クリムゾンは深紅色です。
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