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【三十話】回復魔法の使い方

二日間、空いてしまいすみません。


「可愛いミシェール」

「なんでしょうか? ルーファス様」


 彼の髪色にばかり注目していたので、ドキリとしてしまった。

 びっくり。

 気を抜いていたつもりはないのだが、このタイミングで話かけられるとは、思っていなかったのだ。


 そして、可愛いミシェールって……。

 愛しいの次は可愛いかぁ……。

 うん。

 次のバージョンが見つからないね!

 どうするルーファス(笑)


ところでさ……。

 今まさに魔法発動中で、話している余裕とかなくね? 普通にないよね?

 だって、魔法陣が安定していないというか、この空中に顕現している魔法陣に何かしらの役目を与えるのでしょう?


「魔法を見るのは初めて?」

「ええ、初めてです。ルーファス様」

「君に手を挙げたバカな男共を、君は口だけの忠誠で今後、信じることが出来る?」

「………」


 どう答えて良いかが分からない………。

 聞かれた通りに答えるならば、答えはノーだ。

 信じちゃいないし、信じる事も出来ない。

 彼らと私の間に信頼関係という名のものは結ばれないのだ。

 そりゃ、仕方がないと思う。

 人間性の問題だからね。


 しかしー


 私は令息共をチラリと横目で確認する。

 ルーファスの中で、彼らは貴族令息でもなんでもなくて、ただの男共に変わっていた。スゴイ、庶民より格下状態だわ。

 今後、何が起こるか分かったもんじゃないというか……。

 魔法で、ルーファスが彼らーー男共? に何をするつもりなのかが分からないというか……?


 回復魔法だもの。大事ないわよね?

 私は少し乾いた笑いになる。

 大事か大事じゃないかなんて知ったこっちゃない。

 素直にそのまま小細工なしで行こうと思う。

 人を信頼するという行為はとても難しい。

 男女の好意より、人と人が信頼関係を結ぶという事の方が難しいんじゃないかとすら思う。


 当たり前の話だが、人の全てを理解することは出来ないし、心の中を覗くことも出来ない。

 じゃあ、何を持って人は人と信頼を結ぶのか?

 家族や親族のような血縁者だから? 恋人だから? 友達だから?

 違うような気がする。私の価値基準を考えるなら、そこは否だ。

 

 古来血の繋がった兄弟間で争い事なんて日常茶飯事ではないか。

 古くは旧約聖書に書かれている、カインとアベルの骨肉の争い。

 アダムとイブの息子達の話だ。

 この『創世記』に書かれた兄弟間の殺し合いは、人類初の殺人と言われている。

 人類初の殺人は兄弟間で行われたというのは、なんだか象徴的よね。

 きっと信頼って、血が繋がっているからする分けじゃない。


 じゃあ、恋人は? 恋人は恋人だからという理由で信用している訳ではないと思う。

 だって親が決めた許嫁でも恋人と言うのだろうし。


「ルーファス様。わたくしは言葉による忠誠は信じる事が出来ません。もっと違う何か……。行動の蓄積が必要なのではないでしょうか?」


 そう。行動だと思う。

 例えばーー

 例え話を考えていて、私はドキリとした。

 ちょっと困ったことに、最近、紛れも無い信頼関係を築けた相手に気が付いたという所だろうか。

 私の命を助けてくれた人。いるよね? 私、最近死にかけた訳だし。

 家族の反対を押し切って、十四日間、公爵家に通い続けてくれた人間。

 そして今日もまた、一番困っている時に助けてくれた人。


 私は何故だか呆然とルーファスを見た。

 彼の真珠色の髪の毛は、陽射しを浴びて七色に輝いていた。

 見られていることに気が付いたルーファスはニコリと笑う。

 あらやだ、笑うと可愛い。


「では、この令息方には未来永劫、行動と言う名の忠誠心で、強制的に信頼関係を結ばせて貰いましょうね?」


 ああ。可愛い笑顔が、悪い企みの笑顔に変わってしまった。

 一瞬でしたね。残念です。   





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