【二十七話】古(いにしえ)の魔法?
血は大切に。
魔法? ルーファスの口から思ってもみない言葉が飛び出して、私の時が止まった。
いやー。魔法って。今、魔法って言ったよね?
昼の陽射しは高くて、私達の影を濃く作っている。魔法かー。
場の空気が、一瞬静まり返ったよ。
みんな我が耳を疑っているんじゃないかしら?
まあ、私も自分の耳を疑っている訳だし。
異世界転生した身ですが、こちらの世界でも魔法という単語は日常語ではない。
だがしかし、前世よりも、非現実ではない。
それはそうだろう。目の前にいる王子様が使える分けだし。
そして隣国のフィラル王族も使える。
民衆にはどう対処しているかは知らないが、王族間では周知の事。
もの知らずのミシェールの事は置いておいて、まあ、知っている人間は知っているということだ。
ちなみにアッシュベリーの王族は第二王子様が魔法を使える事を知っているだろうし、それが王妃様の血によるものだと理解している。
そして、王妃様のお里である海洋国フィラルの王族も、順当に考えてアッシュベリー王国の第二王子に魔法能力が遺伝しているのは聞き知っているだろう。
後は、側近よね?隠し通すのは難しいであろう、第二王子であるルーファスの側近。
私はちらりとブレットの表情を確認すると、あの無表情鉄仮面は顔色一つ変えていません。
ああ、そうなんだ?これも予定通り?
じゃあ、王子様が魔法だ何だと言い出したのも予測範囲内。
でも、全然読めないのよね。 少なくとも、ここにいる貴族令息方は寝耳に水だろう。
敢えて言う必要はないだろうと思う。
しかし、わざわざ言ったからには、何か理由があるのが定石だ。
その理由がまったく読めないのだ。
ルーファスの行動が読めなくなったのは、血判辺りからかしらね。
血判が出て来た時も。アレ?となったものだ。
順当に考えれば、領地内で謹慎辺りが関の山。しかも三ヶ月とかの期限付き。
それ以上の罰を下すと、やはり後々まで尾を引くというか、まあ、ぶっちゃけ敵が増えて余計な面倒事が増えるわけだ。
所詮は非公式の場で、王子の婚約者である令嬢を、押したとか押さないとかの痴話騒ぎである。
私の心とか、令息方の面子とか、些末な事はそれなりにはあるのだけど、大事にはしないと読んでいた。血判というのも、別に大事ではないのだが………。
男の子らしい? というか。
そういう風な収め方もあるの?
と思っていたのだが………。
準王族(?)になる予定の私に言うだけならまだしも、口の軽そうな四人の令息に魔法の事を漏らす? その心は?
まさか、本当に土に還すつもりでいる………。なんて事はないわよね?
ご婦人の前では、血を流さないんでしょ?しかし、ご婦人っての? どうなのって話。
だって婦人は、既婚者か成人女子に使う言葉よね。
私、今年卒業だけど、辛うじて学生よ? どっちも当てはまんないんだけど。
まさか婚約者というのが、既婚者と訳されたのかしら?
第二王子様も大概フライングよね。 ちょっと失礼な種のフライングだわ。
そもそも血判は男子らしいが、ルーファスらしくない?
何度も言うが、彼は暑苦しくないタイプの人種だ。
「古来より、魔法はその者が生まれた時からその者であると形容している呼び名である真名と、物理的な個人情報である血液を必要とする」
ああ、ルーファスが私の疑問を高々と講じ始めましたよ。
聞き逃せませんよね?
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