表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/171

【二十一話】王宮図書館の日差しの中で

古文書には興味津々



 食べ物が喉を通らない二つ目の理由は、一つ目よりシンプルだ。

 二週間に渡り気を失っていた為、固形物が摂取出来ない。

 それだけの理由。



 病み上がりの人間は、パンがゆとかから始めるんだろうけど、今朝はそれすら飲み込む事が出来なかった。ちゃんとルーファスが置いていった銀食器に入れましたけどね。



 というか王子は既に毒を警戒してた訳だよね。そう思うと少々複雑。せめて口に出して説明して欲しかった。言わなくても分かるでしょ? 的なものを期待しないで欲しい。



 現公爵と血の繋がっていない継子の令嬢は、命を狙われる事に鈍感なんですよ?

 王族とは違います。



しかしーー


 私は今、餓死という現実が目の前に迫っている。

 どうなんでしょう?


 二週間絶食していて、王立図書館まで歩いて来られるもの?


 故に私は魔法的な何かで、栄養補給をしていたことになる。

 生物学的には、水さえ摂取していれば、人は二ヶ月生きて行けるという。



 が、それは本当に生命を維持しているだけというレベル。

 人が人として身体的にも精神的にも健康でいられるのは、一週間から二週間弱。

 意外に短いのだ。



 個人差はあると思うが、その辺りから意識が朦朧とし、手足に痺れが出るらしい。

 大変危険な状態になる。怖っ。



 私も固形物を一口でも食べられるようにしないと。

バスケットにはローストビーフのサンドイッチが山と詰まっているのだが、とてもじゃないが食べられそうにない。



 というかローストビーフはアウトだ。

 外側のパンを水で溶かして流し込もう。

 麦がゆよりはパンがゆの方が敷居が低そうではないか?



銀の食器を持って来たので、そこに水を入れて、毒を検知してみよう。

 しかし、それだけでは大量に余ってしまう。もったいないかな?



 この王立図書館内で働いている方にお裾分けとも思うが、その場合、パンだけじゃなく、挟んであるサラダとローストビーフの毒検知もしないとよね?



 その辺に魚でもいないかしら?

 虫? 小鳥?

 小鳥か……うーん。

ちょっと勇気がいるわね?




 平日の昼間だというのに、結構な人の出入りのある図書館だ。

 多分、資料室的なものが併設されているのだと思う。



 そんな王宮勤めの人から、凄い視線を感じるのよね?

 何て言うのかな、好奇の目。

 好奇の目は、好奇心と同じ字を書くけれど、好奇心とは別の意味も含んでいる。

 軽蔑。見下し。そんな意味。




 しかも噂話がほんのり聞こえる訳よ。


「あれが、落馬までして第二王子を射止めた公爵令嬢だよ。凄いな」

「第二王子も気の毒に。あんな毒婦に騙されるなんて」

「何でも王族中が反対したらしいぜ」

「あの顔みろよ、気が強そうで鼻持ちならない女」




 最初は興味津々で聞いていたけれど、途中から少し耳を塞ぎたくなった。

 やっぱりあれね。

 自分の悪口というのは、なかなか心に突き刺さって、元気とか気力とか明るい気持ちを取り去ってしまうものね。



 大丈夫と言い聞かせても、心が澱のように沈んで行く。

 だって私、昨日殺されかけたしね。

 この世の何処かに、私の死を心から願っている人がいる。

そんな存在。



 私からのお裾分けなんて、誰もいらない。

小鳥にでもあげてしまおう。




いつもお読み頂き、ありがとうございます。

ブクマ&評価して頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ