【十八話】眠れるだけ眠ろう
今はエポルは白馬です。
私は何度目になるか分からない寝返りを打っていた。
瞼を通して感じるのは夜の帳。
まだ真夜中?
病人の夜は長い。
エポルはどうしたのだろう?
あのまま何処かに行ってしまったのだろうか?
ミシェールは柄にも無く動物が好きだった。
馬はもちろん、猫とか、犬とか。
悪役令嬢らしくないのだが。
ちなみに前世の私も大好きよ。
特に猫。
読書をしていると膝に乗って来る猫に目が無いわ。
可愛いくて可愛いくて。
本に窓辺に紅茶に猫。
読書好きの必須アイテム。
窓辺というのは、大概絵になるからと思われがちだけど、ただ単に明るくて文字が読みやすいという実質的な理由だ。
紅茶は喉が渇くから。
本当は利尿作用があるのでノンカフェインのお茶を頂くのがお勧め。
だって物語の佳境で、トイレとか行きたくないしね。
読書家あるある。
トイレを我慢しがち……。
そして最後に猫。
猫は寒いから。
いると膝がポカポカ暖かくなる。
つまり暖房。夏は汗だく。
これ読書に心地が良い三種の神器。
それが全て揃うと幸せよね。
恋しいといえば恋しいそんな暮らし。
何とか手に入れたいものだ。
しかしーー
王族に嫁ぐとはどんな生活が待っているのかしら?
読書中心の生活は難しそうよね。
王子様は公務で忙しそうだし……。
そうすると私も芋づる式に公務で忙しくなるわね。
読書家あるある。
出不精。
王子妃のお努めとは真逆の性質の持ち主。
けれど、王立図書館を私物化出来るかもしれない。
なんて贅沢!
王族権限で全て読み放題よ!
頭の作りが生粋の悪役令嬢だからか、直ぐにアンダーグラウンドな世界に足を踏み入れてしまう。
いけないいけない。
王族→王族の権限を最大限に活用しよう。
と考えてしまうわ。
これは絶対ミシェールの特性ね。
早く行ってみたいわ。
明日辺り行っちゃおうかしら?
午前中、こっそり行くなら大丈夫そうじゃない?
第二王子様はいつも夕方に来ると言うし。
私はこのままボンヤリしていたら王子妃行き。
ルーファスの方が一枚も二枚も上手な気がするし。逆らえないし。
そして彼が望む通り王宮のドロドロとネバネバを一身に受ける……。
病むわ。
隣国で図書館司書をする可能性はどうかしら?
平民とかになってさ。
身分は無いけれど、明るさと素直さと聡明さで人生を謳歌する的な。
別に明るくも素直でも聡明でもないけども。
三拍子、全て揃ってないね!
素直さだけは、努力するつもりでいるが……。
隣国とは言っても、行き先は海洋国フィラル一択。
治癒魔法の事を聞いてしまった以上、そこしか有り得ないし。
しかし、この異世界、図書館なんてそうそう無いんじゃ?
王立図書館くらいかしら?
そこまで考えると、兎にも角にも王立図書館を実際の目で見たくなって来た。
どんな規模で、何人くらいの人が働いていて、どんな身分の人がいるのか。
明日はまず厩舎に行く。
エポルが帰ってきているか確認してから、王立図書館に行ってみよう。
ランチを持って行くのはどうかしら?
焼きたてのパンに果物を持って。
シェフにお願いして、ローストビーフを挟んで貰っても良いし。
沢山作って、バスケットに詰め込むの。
寝てばかりいては、気分が滅入ってしまう。
取り敢えず、行動を起こしてみよう。
計画は万全。
私は湧いてくる唾液を飲み込んで、再度眠りに就いた。
美味しそうな夢が見られたら嬉しいなと思いながら。
ええ、全く公爵令嬢らしく有りません。
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