【十七話】王子様帰宅
悪魔王子と呼びます。
私はルーファス様が帰った後、昏々と寝続けていた。
何かとても寝苦しい。
息苦しさが止まらない。
病み上がりだというのもあるだろうし、これからの事を考えると不安というのもあるだろう。
だけどーー
一番の理由は夢だ。
落馬した時の恐怖体験。
息も出来ないほど程強く、地面に体を打ち付けられた痛み。
エポルという愛馬を、私は飼っていた。
芦毛のこの馬を私はとても可愛がっていたのだ。
お転婆な私は毎日エポルと散歩するのを日課にしていた。
『エポルどうしたの? そっちは散歩コースじゃないわよ?』
『エポルどうしたの? 今日はやけに興奮してるのね?』
どうしたの?
落ち着いてエポル。
落馬する直前の事が頭の中に何度も何度もフラッシュバックするのだ。
いつものコースからそれた愛馬。
興奮して何かに気を取られていた愛馬。
騎乗でどうすることも出来なかった私。
薄い眠りの中、幾度も幾度も夢を見る。
気を失っている間にも、きっと何度も見ていたに違い無い。
私は全身汗びっしょりにになりながら目を覚ます。
またあの夢。
けど夢とは呼ばないのかな?
現実の追体験。
早く忘れたい。
気分転換にルーファス様に本を借りてきて頂こう。
王立図書館の本。
難しい本じゃなくていい。
物語が良い。
空想に浸れる本が良いな。
私はベッド横にある水差しから水を入れる。
今日、ルーファス様が置いて行った器。
綺麗な器。
そして高そう。
金属の器といのは、水が冷たく感じて心地良い。
そしてあからさまな毒検出用の銀。
物語の中でも鉄板よね?
自分で使うとは思ってもみなかったが……。
今日、悪魔契約を行ったルーファスの事を思い出す。
様という気分でもなくなったので、心の中だけ呼び捨て。
私の微かな反抗(笑)
現実に反抗なんて出来ないからね。
心の中だけこっそりと。
しかしアレだね。
第二王子様の線は厳しそうね。
硝子の靴を拾うのは、他の王子様と仮定する必要があるのかな。
消去法だけどね。
どうにか他の王子様に会えないかしら?
二週間で話をまとめなくてはいけないのだから。
一日一日が貴重になってくる。
けれど、第三王子様からはな……ー。
歳がどうなのって話。
今すぐ結婚とかいう年齢じゃないのよねー。
第三王子様が十三歳。
第四王子様が十歳だ。
シンデレラとの年の差を考えれば、二歳差と五歳差なので、二十歳を過ぎれば有りっちゃあ有りな話だが、うーん。
そんなことを考えて居ると、まだ眠気が襲ってくる。
夢見が悪いので、寝たくはないのだが、寝ないことには回復しない。
私はゆっくり瞼を閉じる。
そしてまた浅い眠りに誘われるのだった。
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