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【番外編1 第四王子殿下の誕生日】

 人物紹介を書いたので、第四王子殿下の閑話を一本書いてみました。

 


 アッシュベリー王国第四王子殿下の生誕祭は大変こぢんまり執り行われる。

 隣国及び各国の来賓は呼ばずに行う。どころか国内貴族も呼ばない。祭ではなく会だ。 

 王の権威を示すという意味では、王の子である王子の生誕祭がこぢんまりしていてはいかがと思われがちだが、王の権威は正妃様がお産みになれられた、第一王子殿下、第二王子殿下の生誕祭に盛大に執り行われる事で示される。


 第三王子殿下に関しても、カールトン公爵家で行われる為、特に内外に示したりはしない。第四王子殿下に関しても王宮内で慎ましやかに誕生会が行われる。


 国王陛下からの贈り物。王妃陛下からの贈り物。第一王子殿下からの贈り物。第一王子殿下自身、何が毎年送られているかは知るよしもない。第二王子殿下からも同等である。


 彼の誕生会は、王宮のガゼボでガーデンパーティーのような形式で行われる。そこに普段より豪勢な食事やお菓子を盛り付け、届いた贈り物を並べて終わりとなる。


 貴族令息より余程こぢんまりしているが、第四王子ネイト・アッシュベリーには十分であった。袖を通す衣服があり、豪華な食卓があり、祝う場所がある。それだけで十分なのだ。それ以上は望まない。

 望むものがあるとするならば、カールトン公爵家に預かりになっているお兄様に会うことだけだ。


 月に一回はお茶会と称して会ってはいるが、誕生会があると月に二回会える。一回と二回は倍も違う。それはとても大切な事。そわそわしながら待っているとお兄様が現れる。第四王子であるネイトは小さく駆け出しだ。


『お兄様、お兄様 お兄様!』


 ネイトは殆ど声を出さない為、内心で何度も呟く。

 彼は今日、フワフワの綿毛のような帽子を被っていた。去年の誕生日に第三王子であるお兄様がプレゼントしてくれたものだ。とても可愛くて気に入っている。


 お兄様は僕の欲しいものを良くご存じでいて下さる。僕には綿毛のような帽子が本当に必要だった。触ると柔らかくて暖かい気持ちになる。僕は僕の心がフワフワの綿毛を欲したとき、お兄様がくれたこの帽子を被る。優しい感触の先がお兄様へと繋がって行く。


 今年のお兄様のプレゼントは巻き貝の帽子だった。僕はヤドカリの縫いぐるみをいつも持っていたから、それを見てプレゼントしてくだされたのだろう。

 嬉しい。嬉しい。嬉しい。


 僕は貰ったその帽子をそっと抱きながら思うのだ。また一年、僕は生きていける。僕は貝になりたかった。海の底から、遠い光を見上げながら。僕は貝になりたいのだ。柔らか過ぎる僕を、どうか堅い殻で覆って欲しい。そうして海の底から空を見上げて、緩い日差しの中で、僕は海の水の中で息をする。





本編に登場する事が出来なかった、年下の忘れられた第四王子殿下を書くことが出来て、ほっとしております。


 読んで頂いてありがとうございました。

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