表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/171

【百五十五話】エピローグ1 ラプンツェル。

エピローグに入ります。

ミシェールの視点になります。

 高い塔に閉じ込められるといえば『ラプンツェル』かしら?

 私は長い螺旋階段を登って妹に会いに行く。

 オリヴィアお姉様の取りなしで、地下牢から貴族牢に移っていた。

 ドアは施錠してあり、見張りもいるのだが、地下牢とは比べものにならないくらい清潔で過ごし易い。この貴族牢は、第三公爵令嬢ティアナが幽閉された場所と同じだ。

 ティアナが私に毒をぶっかけて、ここに囚われていたのだ。今は容疑も晴れ、外に出ているのだが……。


 彼女の罪は、殺人未遂から薬を騙し取られたという罪に変わっていた。

 貴族牢に入るような罪じゃない。殺人未遂とは雲泥の差だ。

どちらかというと、沢山の毒を栽培していたという方が大きな罪になる訳だが、それは全て王家預かりになるという事で落ち着いている。

つまり今の所彼女は、厳重注意、管理の徹底、情状酌量の上、執行猶予中のような状況だ。情状とは状況等を鑑み、考慮する事。酌量とは事情を汲み取った扱いをする。

 そして執行猶予は、罪の償いを直ぐに執行せず、期間を決めて様子を見、その期間中、罪を犯さなければ、刑を執行しないという事だ。


 前世でもあるあるの、超が付く甘々刑の代表。まあ、薬の管理をもっと徹底しろよ? 次あったら罪にするぞ。という所だ。彼女は毒の栽培地を王宮内に移し、特殊薬草の管理という、仕事をしている。新規に作った、王宮薬師、薬室部門、麻酔科特殊薬草温室管理人いというのが正式名称。ちなみに上司は一人も存在せず、部下も一人も存在しない。


 正真正銘の一人科らしい。まあ、小さな温室だしね、今の所、薔薇の管理人の方がずーーーっと身分が上だったりする。薔薇とは権威も歴史も違う上に、特殊薬草って苦しい命名からも分かるように、きな臭い匂いがプンプンする、あまり表立って活動してはいけない雰囲気がする科なのだろう。


 家は、離籍したまま、元第三公爵令嬢となっている。執行猶予期間が終われば戻る事も可能だが、ティアナ自体、あまり家は好きではなさそうだし、家の方も別に戻って来なくて結構という雰囲気なので、このままなし崩しになるかもしれない。まあ公爵令嬢という身分で、毎日温室の雑草を抜かれても微妙に扱いに困る。


 私は最上階に辿り着き、牢番にしっかりとお菓子の差し入れをしてから、シンデレラの牢に入った。貴族用の牢なので、小さな二間になっている。シングルベッドだけが置いてあるベッドルームと応接間。その応接間にいたシンデレラが私に飛び付いて来た。薔薇の匂いがふわりとする。


「お姉様、ミシェールお姉様。大好き」


 彼女は私の背中に手を回し、ギュッと抱き締める。ここに来ると彼女は決まって私を強く抱くのだ。薔薇色の頬に透き通った蒼色の瞳。綺麗な腰まである金色の髪。随分と顔色が良くなった。

手足も温かくなり、生気が戻った。


「お姉様、大好き。私を助けてくれた大好きなお姉様」


 そう言って、まるで宝物を抱くように、何度も何度も私を抱くのだ。


「大好き。大好き。ミシェールお姉様だけが私を見てくれる。私の大切な大切な人」


 私は柔らかい金髪を撫でる。縁あって姉妹になった私の妹ーー


「さあ、一緒にお菓子を食べましょう?」


 私は持って来たお菓子とお茶を取り出す。


「今日は何のお菓子ですか?」

「今日は、あなたの好きな苺パイよ」


 シンデレラが嬉しそうに笑う。私は紅茶から立ち上る湯気を感じながら、心が温かくなっていくのが分かった。目の前で妹が笑う。塔の窓からは、陽射しが入り。そして苺パイは変わらず甘酸っぱい。


「シンデレラ」

「はい?」

「あなたがこの牢に移れるよう、取り計らって下さった、オリヴィアお姉様の結婚式が決まったわ」


 そう。最後の最後、心を砕いてくれたオリヴィアお姉様の結婚が決まった。


「綺麗なブーケを作るわよ。白薔薇にブルースターを添えるの」


 白い薔薇の周りを、星のような水色の小花で彩る。水色は彼と彼女を結び付けた色だから、必ず入れたい。私の尊敬するお姉様。私はここでお姉様の幸せを祈りながら、一本一本ブーケを作るわ。心を込めて作ったら、お姉様に届けるわ。そうして、彼にも同じ花で作ったブートニアを。新郎の胸に付ける小さな花飾りだ。妹と一緒に。どうかーー幸せになって下さい。私のたった一人のお姉様。


誤字脱字報告ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ