【十四話】王子様の悪巧み?
三人目は現れそうにありませんよ?
私が一人で感心していると、視界の隅でルーファス様がニヤリと笑ったのが分かった。
「ちょっと、今悪巧みしたでしょ?」
「いえいえ、あなたのように珍案を考えついた訳ではありませんよ」
「じゃあ何よ?」
仮にも婚約者が涙ながらに感謝の気持ちを伝えているのに、悪い顔で笑うってあるかな?
普通は無いよね。
綺麗な涙ですね? とかさ。
泣かなくても大丈夫ですよ? とかさ。
気の利いた台詞の一つでも聞きたいところなんですけど?
ニヤリ…って。
ニヤリはなー。
どうなんだろうなー。
「良い台詞が聞けたなーと思いまして」
「良い台詞って?」
「貴方の為なら何でも致しましょう。という素晴らしい台詞ですかね」
「そこ?」
「そこです」
そこ……。
つまり何ですか?
言質を取ったと。
そうゆう事ですか?
言葉の人質。
その名も言質。
うーん。
何か無理難題を言われたりするのかしら?
言葉を間違えたかも知れない。
そこはさー。
感謝しています。で結べば良かったかしら。
わざわざ『何でも致します』はさー。
言うべきじゃなかったかなー。
私は感謝の言葉を述べた時の感動や、鼻にツンと来た感情も吹っ飛んで、シビアな心配をしていた。
「ちなみに、ルーファス様は私に何かさせたい事があるのですか?」
勿論聞いて置くでしょう。
そうじゃないと、何かスッキリしないというか、心配というか。
「勿論あります。当然です」
何を自信満々に答えてるんですか?
王子様はお茶目で困りますね。
「具体的に何をさせたいのですか?」
「取り敢えずは、僕の質問に何でも答える。ですかね」
「何でもですか?」
「何でもです。その上でしてもらいたい事は十個くらいはありますよね」
「多いですね?」
「少ないですよ?」
十個って(笑)
そんな(笑)
命の恩人という偉大な方は、謙虚とか全然ないんですね。
私、立場的にまったく逆らえなくなってますよね。
弱味を握られたって感じですかね。
「取り敢えずは質問良いですか?」
「どうぞどうぞ、何なりと聞いて下さいませ」
私はヤケクソ? のように返事をする。
別に質問くらい全然平気。
朝飯前よ?
「意中の方はいらっしゃいますか?」
「いません」
私は自信満々に答える。
いませんいません。
思い付きもしません。
心当たりもありません。
「王家に嫁ぐ事をどう思いますか?」
決定事項かい!
どう思う? と聞かれてもなー。
考えた事も無いんだよね?
「想像出来ないって感じでしょうか?」
前世の私が想像出来ないのは分かるのだけど、ミシェール自身も想像した事が無さそうである。
「僕に対する感情の成分分けを教えて下さい」
「?」
なぬ?
成分分け?
「ちょっと質問の意図が……。成分分けというのは、どういう風にお答えすれば良いのでしょうか?」
「成分分けは成分分けです。例えば恋心五十パーセント。友情三十パーセント。崇拝二十パーセントとかです」
崇拝って。凄い例えですね?
崇拝はないでしょー。
ゼロパーセントだよ。
それにこの王子様の思考回路的に、崇拝されるのは嬉しくないと思う。
そこを敢えて例え話に出したということは、崇拝のパーセンテージが聞きたい分けだ。
「すみません。崇拝? という崇め拝む感情は然程高くありませんが、尊敬っぽい感情は若干ありますよね」
「若干とは?」
「若干とは……二パーセントくらいでしょうか」
少なっ。
言ってみたけど少な過ぎでしょうっ。
「でもですね。敬愛というかそういう種類の感情は、ほんの少し前に突如生まれました」
ええ。本当に直前と言うか、感謝の言葉を口にした瞬間だよね。
言霊って怖いな。
口にした瞬間、言葉に力が宿った気がする。
その気になったというか。
そういう感じ。
「敬愛は何パーセントですか?」
「敬愛は……」
敬愛とは、親しみの心を持つこと。
何となく。
何となくね。
「三十パーセントくらいですかね」
結構多いよね?
「敬愛の敬と尊敬の敬って被ってません?」
「そうね。確かに。じゃあ足して三十二パーセントでしょうか?」
質問攻めに合っているところですが、三つ目の質問が長引いてます。
残り六十八パーセントはどうしましょうか?
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