表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/171

【百四十七話】メデューサが見つめるものは。





 天井裏って………。

 隙間はないのかしらね?



 私が慎重に匍匐前進していると、扉が開かれる音がする。

 姉は早々に着いていたので、もちろん待ち人が入って来たのだろう。



 キター。

 キタキタキタ。


 真打ち登場?

 それとも悪の大伯爵?



 もとの身分より落ちてるって。



 私はじっと耳を傾ける。



 …………。



 でも。

 何にも話してない。



 どうゆうこと?



 二人分の気配はするし。

 お茶を飲んでいる感じがするのだが。



 話し声一つしない。



 ………。



 人払いも済んでいるから、何を話しても大丈夫なのに?



 ………。



 それなりの時間は過ぎたと思う。



 何なのかしら?

 不自然ね?



 天井裏といっても昼下がりで、空気がそれなりに暖かくて。

 要はあんまり黙っていられると眠くなるって話だ。



 十五分くらい経った?

 いや三十分くらい?



 ちょっと時間の感覚が分からないけれど……。



 ずっとうつ伏せもつらいから、私は仰向けになり息を吐く。

 まあ、うつ伏せだろうと、仰向けだろうと音は聞こえる。



 ただ耳の形状上うつ伏せの方が音が入りやすい。

 耳の外耳は後ろに向かって覆うように出来てるしね。



 私はボンヤリとしながら目を瞑る。

 睡魔がヤバイ。



 普通に眠い。

 天井裏って屋根に近いから、太陽の熱に結構近いんじゃないかしら?



 しかし王宮のような作りの建物に天井裏か………。

 日本家屋には必ずあるし、日本の城にも武家屋敷にもあるものだ。



 石造りの場合はどうなのだろう……。

 そんな事を考えている時、ふと下からオリヴィアお姉様の声がした。



「静かね……」



 静かだから静かだと言ったまでなんだろうけど。



「……そうかな?」



 と言い返される。



「ペットがさ……」



 ペット?



「鳴いてる」



 ティーカップを置く音がカチャリと聞こえる。



「ずっと鳴き続けてる」



 淡々とした抑揚のない声で言う。

 オリヴィアお姉様も相づちを打つように答える。



「どんなペット?」


「君に懐いているネズミ」



 私はギクリといて唾を飲み込む。

 別に私は鳴いてはいない。



 でもネズミって……。

 どこか天井裏を走るものの代名詞のように使われる部分あって。



 だいたい次には天井裏に長刀が刺さったりしない?

 時代劇の見過ぎ?



「オリヴィア」


「何?」


「飼い始めたの?」


「…ううん。お友達になったのよ?」


「僕の嫌いなネズミでも?」


「あなたにも好きになって欲しいから……」


「……そう」


「このお茶おいしいわね?」


「……味に興味はないよ」


「このお菓子も美味しいわ」


「……良かったね……」


「ねえ」


「何?」


「私、結婚することにしたのよ」


「…………」



 天井裏からでも、部屋の空気が変わったのが分かった。



「……カールトン公爵家は不祥事によって取り潰す話が出ているよ?」


「そうなの?」


オリヴィアお姉様はケロリとした口調で答える。


「三女が第三王子を刺した訳だからね?」


「そう? 困ったわね? 身分が無ければ結婚が出来ないかも知れないわ」


「誰とするの?」


「誰だと思う?」


「……候補は沢山いるけど、君が頷くとは思えないな」


「身分が高い人よ?」


「………」


「カールトン公爵家令嬢の名がなければ嫁げないわね」


「………誰?」


「聞いてどうするの?」


「どのみち直ぐに分かるだろ」


「そうね」


「……侯爵以上?」


「どうかしら」


「侯爵以上で歳の頃を考えれば直ぐに割り出せる」


「割り出してどうするの? 落馬させるの? それとも刺殺?」


「…………」


「殺されるのは困るのよ?」



 お姉様の冷たい笑い声が響いた。

 きっと彼女は羽扇を仰いで勝ち誇ってるわ。

 そんな気がする。






いつもお読み頂きありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ