【十三話】王子様は誰に取って特別な人?
お礼が手遅れぎみ?
ルーファス様という個人を、私は初めて意識した。
今までは、ずっと王子様の一人だと考えていたのだ。
それ以上でもなければそれ以下でもなかった。
けれど、よくよく考えてみればどうだろう?
そんなに簡単な話ではなかったんじゃないだろうか?
第二王子様が公爵家に十四日間も連続で通い続ける。
それ自体が異常な行為だ。
身分の上の者が下の者を毎日見舞う。
端から見ればどうなんだろう?
周りを驚かせる行為だったんじゃないだろうか?
私も吃驚なんだし。
「ルーファス様、今回の婚約は随分と急に進みましたが、反対者も多かったのではないですか?」
ルーファスはやっと理解したか? というような顔で溜息を付く。
「恥ずかしい話ですが、第二王子は公爵令嬢に騙されているというのがもっぱらの噂ですよね?」
申し訳ない。
土下座して謝りたいくらいだわ。
輝かしい王子の経歴に汚点が!
どうしよう。
しかし……。
意識不明だったので、騙しようもないのだが。
半分は噂を聞きたがる聴衆の願望かしら?
悪口はいつだって願望から生まれるものだから。
王族の意見に真っ向から反対して、助けてくれたのに、その王族の前で振ってくれだなんてあんまりな提案ではないか。
ルーファス様の立場がないのにも程がある。
シンデレラを今の境遇からすくい上げるのに、誰かの不幸を踏み台にしてはいけない。
不幸になるのは悪人だけで十分なのだ。
善人は決して追い込まない。
そして、あまり性格の宜しくないと思っていたこの王子様は、私にとって、善人に当たるのだろう。
当たり前だ。
私の命を大切に思ってくれた数少ない人なのだから。
助けてくれたのが、何にも勝る証拠だ。
動かぬ証拠というのは、こういうものを言うのだろう。
今、深く実感する。
「ルーファス様」
私はその名前を改めて呼んだ。
「お礼が遅れて本当に申し訳ありません。私は些か無神経な事を口にしてしまいました。その事も合わせて謝罪致します」
彼の前で頭を下げる。
私ったら、命の恩人というものがどういうものか全然分かっていなかったのね。
私が目覚めたと聞いて、一番に駆けつけてくれた人。
それは父よりも、母よりも、姉よりも速かった。
わたしが目を覚ましてから、一番に会ったのはシンデレラで、二番目に会ったのが第二王子様。
この順番をしっかり心に留めておくわ。
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