【百三十八話】鉄格子を超えて…。
引き続きシンデレラの視点です。
寂しい時は、恋をした時の事を考えよう。
悲しい時は、素敵な男の子の事を考えよう。
そうやって現実を少しずつやり過ごそう。
◇◇◇
でも私はーー
素敵が恋物語が上手く想像出来なくなってしまった。
弟を刺してしまったその日から。
この冷たい地下牢に閉じ込められてしまってから。
私の夢は近づく所か、凍り着いてしまった。
どうすれば?
どうしよう?
素敵な王子様と素敵なお姫様のお話を考えなければ、心が寂寥感に満たされてしまうから。
だから、直ぐにでも考えなければいけない。
王宮と。
色取り取りの素敵なドレス。
ワクワクしながらお城にやって来る令嬢達。
普段は地味な子も。
口数が少ない子も。
みんなみんなこの日を楽しみにしているの。
私もその会場にドキドキしながら到着する。
だってその日は私の大好きなお姉様が第二王子様と結婚する日なのよ?
妹の私は鼻高々。
本当に素敵な二人なのだから。
お姉様は可愛らしい人だから、白いドレスがとっても似合うの。
このドレスは妹の私も一緒に考えたデザインで。
レースの部分には、お姉様が大好きだった小さな小花が刺繍してあるのよ?
職人が一つ一つ刺したオリジナルデザイン。
この世に二つとないドレスで、私が結婚するときはお姉様におねだりをして貸して頂くの。
お姉様はきっと優しい人だから。
ニッコリ笑って貸して下さるわ。
私のお姉様は公爵令嬢から王子妃になるのよ?
なんて素敵なのかしら。
足元は私にも貸してくれた事がある、硝子の靴を履いて。
それがお姉様にピッタリで。
ああ………。
考えていたら、気持ちが満たされて行く。
最近、頭の中の想像はお姉様の恋話ばかりね。
何故なのかしら?
自分の夢はまったく見られなくなった。
何故なの?
目を瞑るとミシェールお姉様の花嫁姿ばかり。
後から後から浮かんでくる。
ブーケが作りたいわ。
真っ白なブーケ。
晴れの日にお姉様に持って頂くの。
その花に、七年間の私の思いを乗せるの。
可愛がってくれてありがとう。
私を見てくれてありがとう。
大切にしてくれてありがとう。
ありがとうの気持ちを沢山乗せて。
お姉様に贈ろう。
あなたがいたから、世界は少し暖かい。
そしてーー
今も。
あなたを思うと、少しだけ世界は暖かい。
こんな地下牢でも。
あなたの陽だまりの欠片が、差し込んでくる。
頭の中に。
胸の中にーー
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