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【十二話】王子様の恋愛パターンて?

魔導書(グリモワール)はいつでも味方?




 私は深く思考の海を泳ぎながら、一目惚れの次に多い恋愛パターンについて考察していた。



 それって『ギャップ』じゃない?



 そうよ、クールキャラというのは、一目惚れで落ちないパターンが多々ある。

 そういうキャラが何に弱いかっていうと……



『ギャップ』だ。



 古今東西ギャップに弱いはず。



 やったー。



 私は心の中で小さくガッツポーズをする。

 やりました! なかなかの名答に辿り着けたんじゃないだろうか?



 私は自然と笑みが漏れる。



「悪巧みをしましたね」

「え?」



 今まで黙っていたルーファスが口を開く。



 あらあらあら、私って分かりやすー。

 目の前の王子様にバレてますがね。



「やーね。悪巧みなんて失礼な。名案が思いついたのよ」

「怪しいです。きっとそれは珍案です。実行に移さないで下さいね」



 アラ? 一瞬で釘を刺されたわ。

 もちろん気にしませんけどもね。



「ルーファス様は私に恋心を抱いてませんよね? 打算で婚約を結んだということでオーケーですか?」

「全然違います」

「?」



 さっき王家に嫁いで、とことん苦労させてやるって言いませんでしたか?



「違うんですか?」

「違いますね。王家でも充分遣っていけるタフな素材だとは言いましたけど、打算とは言ってませんよね?」


 人はそれを打算と呼びません?



「じゃあ、悪友が欲しかったのがメインの理由なのでしょうか?」

「あなたは、私の悪友になるつもりなんですか?」

「それが一番近いと理解していましたが」

「一部そういった役回りもあるかも知れませんが、それもメインとは言い難いですよね?」



 違うんだ?

 じゃあ何?



「あなたは、落馬した悪友を助けますか?」

「助けますよ? 自分に助ける力があるのなら」



 助けるでしょ? 悪友と言っても友人だ。

 婚約は出来ないけども……。



「まあ、助けますね。でももう少し切羽詰まった感じであなたをお助けしたのですよ? 王族でも一部しか知らない治癒魔法の力を使って」

「………どうもありがとう」

「もっと、心を込めてお礼を言ってくれると嬉しいですよね」



 心を込めて!?



 了解です! 心を込めて命の恩人にお礼を言わせてもらいます。



「ルーファス様、あなたが私の命を大切に思って下さらなかったら、私は今ここにいなかったでしょう。それはとても寂しい事です。私は性悪令嬢と言っても、まだ十六歳でした。もう少し生きてしてみたい事がありました。ルーファス様ともこうして再び会えたこと嬉しく思います。どうか私に出来ることは何なりと仰せ下さいませ」



 私はちゃんと心を込めてお礼を言ってみた。

 言っている途中で少し涙が滲んだ。

 ヤバイ! 拭かないと!

 バレちゃう。


 私はチラリとルーファス様の様子を窺うとバッチリ目が合った。

 わーぉ。



 言いながら胸が詰まってしまったのだ。



 ミシェールは悪役令嬢。

 高慢ちきで鼻持ちならないやつ。



 誰がそんな人間の命を大切に思ってくれているというのだろう?



 多くの人は私が死んでもなんとも思わなかったんじゃないだろうか? 万歳三唱とまではいかないまでも、自業自得と言う人間はいっぱいいたんじゃないだろうか?



 そう思ったらとても胸が痛くなってしまったのだ。死は誰にとっても避けられないものだけど、死んでもなんとも思われない人生って。



 なんて寂しい。



 思えば前世で、本の角に頭をぶつけて死んだ時、ひとりぼっちだったんじゃないだろうか?

 本に囲まれて死んだと思えば、本の虫である私は本望だろうが、でもーー



 私は本好きではあるけれど、決して人間嫌いではなかった。



 だって、本は人間が書いたものだもの。

 今も昔もこれからも、その事はずっと心に留めて置こうと思う。



 本は人の頭から生まれた物で。

 人がいなければ本は生まれない。



 もしも世界に自分一人しかいないなら。

 本は存在しないのだ。




 第二王子様。

 もといルーファス様。



 この人は、少なくとも私に死んで欲しくない、と願ってくれた人だという事になる。

 理由は『王家に嫁いで苦労しろ』??

 だったとしてもだ。



 口先ではなく、自分の婚約者にして、王家の秘事を明かしてくれてまで助けてくれた。

 それが揺るぎない事実なのだ。




 私は今になってこの事実の大きさを受け止めた。

 


 私……。



 あまりに大きな借り過ぎて、返せる気がしないのですが……。



 どうしよう?

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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