表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/171

【百二十三話】硝子の靴を履いた時。





「決めたわ。私、この硝子の靴を履いて、会いに行く」



 そう。

 あの。

 地下に繋がれた女にーー



 ケジメを付けに行く。

 ある意味決戦だ。



 このビリビリのドレスではなく。

 勝負服に着替える訳だけど。



 足元はこの硝子の靴で行こう。  



 私を本気で殺そうとした女。



 私達は、少なくとも七年間は姉妹をしていたのだ。

 それなのに、殺される程憎まれていたことになる。



 シンデレラを毛嫌いしていたのはオリヴィアお姉様なのだけど、殺されそうになったのは私と考えると、そういった事での報復とは違うという事になる。



 白黒付けないとすっきりしないじゃないの。

 そうよね?



 私がルーファスの方を見ると、彼は呆れたように私を見ていた。



「まさか地下牢に行く気じゃないでしょうね?」


「行く気です!」


「あそこは、身分の高いあなたのような御令嬢が行く所じゃないですよ?」



 私はそこまで聞いて吹き出しそうになる。

 身分の高いって!



 身分が高いのはお前だーと言いたくなるじゃないの。

 王子様に言われる台詞じゃないわよ。



「めいいっぱい着飾って行きたいです」


「凄く浮きそうですね?」



 そりゃあ浮くでしょうよ?

 でも、私ねーー



 シンデレラに後悔させたいのよ?

 馬鹿な事をしたって。



 人なんか殺そうと思ったから、自分は今、惨めな牢屋なんかにいるんだって。

 人殺しがどれほどリスクの高い選択肢か。



 教えてやりたいの。

 だから地下牢でもなんでも、着飾って行くのよ?



 場違い結構。

 地下牢上等!



「ミシェールが行くのなら、もちろん僕も行きますよ?」


「そうなの?」


「それはそうでしょう。一人で行かせる男なんかいませんよね」



 うーん。

 キースは絶対に一人にはしたくないのよね?



 ブレットに頼むか。

 セイに頼むか。

 ティアナは論外。



「じゃあ、今度こそエスコートしてくれるの?」



 嫌味たっぷりに言うと、ルーファスは笑う。



「させて貰います。お嬢様」



 彼は膝を着き、私の手の甲に口づけをする。



 不思議ね?


 どうして、義理の姉の私が、王子様の口づけを受けているのかしら?


 一時は振られることも覚悟したのよ?



 なのにーー

 十二時の鐘が鳴って、硝子の靴を履いているのは私。




 その靴を履いて。

 ダンスパーティーではなく、地下牢にエスコートされる。



 子供が読んだら、泣き出しそうな童話ね。



『シンデレラはー??』



 とブーイングが起きそうよ?



 シンデレラはどうなったの?

 子供はみんな聞きに来そうだから。



 私が敢えて答えるわ。



 彼女は地下牢に繋がれているわ。

 王子様の弟を刺してしまったから。



 私は第三王子様とシンデレラの物語を聞きに行く。

 彼と彼女の間に、何が合ったのかを?



 キースがきっと教えてくれるけれど。

 その前に。



 シンデレラが何でこんな事をしでかし、こういう結末になったのかを。

 私は知ろうと思う。




 ーー第三王子を刺したのだ。



 彼女の未来は既にない。



 順当で死刑。



 ここがアッシュベリー王国である以上、それが妥当。



 未成年なので、国外追放もありえるが、その場合は奴隷としてではないだろうか?



 どちらにしろ。


    

 死んで償うか。

 生きて償うかの二種類だ。



 つまりーー



 殺人未遂者に未来は存在しない。



 存在してしまったら。

 王族の権威が落ちてしまうから。



 怖いわよね?



 未来を失うその瞬間ってーー   







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ