【百十五話】ウンディーネの一部は海の一部。
留学はさておき。
……子供……。
私が今十六歳で、三年経って十九歳で……。
前世なら、若いお母さんですね?
といった年齢だろうか。
………子供……。
「フィル様? 王女様方にも、もちろん精霊の申し子を産む可能性はあるのですよね?」
「……ぶっちゃけないね。ゼロパーセント」
え?
マジでぶっちゃけた。
王家の機密だろって話なのだが。
ゼロ……って。
なんでそんなに断言出来るの?
直系でしょ?
ルーファスの母上であるアッシュベリーの王妃様は精霊の申し子ではない。
ならば申し子が申し子を産むという訳ではないのだろう。
「……恥ずかしながら、私は恋愛結婚なのだよ」
いや…。
別に……。
恥ずかしがらなくて良いって。
まあ、王族のトップにしては大変珍しいが……。
「私の父上である先王に言われたものだよ? 彼女は精霊の申し子を産まないだろうって」
何でまた?
分かるものなの?
直感?
「彼女は王妃として素晴らしい人格者だった訳だが、ウンディーネの力を子孫に顕現させるという点に於いては、使命は果たせなかった」
そういえば……。
私は王女様を見た時、アレ? と思ったのも事実だ。
何故なら、フィラル王家の王族の髪の色は、何故かプラチナブロンドか、瑠璃色か金髪と思い込んでいたからだろう。
亜麻色。
薄茶色の事だが。
前世では非常に良く見る色だし、この世界でも大変多い色だ。
でもーー
フィラル王族のイメージカラーじゃない。
つまりはフィラル国の王族は、基本海を連想される色素を持っているのだ。
海底の深い蒼なんてのもアリっぽい。
「亜麻色を好む精霊というのは、火山のような粉っぽい薄茶色の山に住む、サラマンダーだね」
えーー……。
「水の精霊ウンディーネと炎の精霊サラマンダーは犬猿の仲でね………」
うっわー。
精霊って分かりやすいわ。
物凄く直球、ストレートなんですね。
「つまりは、そういう色には力を継承させにくい訳だ」
ああ。
成る程。
好みというより、性質的に無理みたいな。
しかし、そこで私は首を捻る。
私、めっちゃ赤毛じゃない。
どこをどう見てもサラマンダー系?
つまりは、私も絶望的みたいな?
「……あの、今までのお話しを窺っていて、疑問に思うのですが……、私の赤髪もウンディーネの力を継承させにくくないですか?」
見たまんまで申し訳ないですけれども。
母も姉も燃えるような赤髪で、正にサラマンダーが溺愛しそうなんですけど。
性格も、癒やしというよりは、全てを燃やし尽くしそうな勢いです。
「アッシュベリー王国の第四公爵家の令嬢は、長女は母の髪を色濃く継いだ赤髪。三女は金髪。そして次女は父と母の色が混ざり合ったストロベリーブロンド」
?
あれ?
今、私の父がカールトン公爵だと言った?
「海の底に咲き誇る珊瑚に良く似たその色は、きっとウンディーネに愛される。彼女の大好きな海の色の一つ。海の一部」
フィル様は私の髪と瞳を見る。
正に海の色をしたその瞳で。
私の髪は、姉より若干くすんでいて、瞳の色素もやっぱり薄い………。
「先代の王が、我が妃からは生まれないと言った精霊の申し子。私も今ここに宣言しよう、ルーファスとミシェールの間にきっと生まれる。私の中に流れるウンディーネの血がそう言っている」
「…………」
……いや。
えっと。
そんな大それた事、宣言しないで下さい!
私は未婚で生娘でーー
つまりはとっても恥ずかしいんです!!