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【十話】 消される?

毎日ですか?



「あの……」



 私は珍しく歯切れが悪くなる。

 聞いちゃいけない事を聞いてしまった?

 ……よね。



 いや意図的に聞かされた。

 という事だろうか?


 つまりその意味する所は、逃げ道の封鎖。

 私は強制的に従うか、死ぬかの二択になったのかな?



 うーん。



 落馬した……。

 死んでいただろう大事故。



 治癒魔法を使える王子との婚約。

 その上での治療開始。



 ああ、なるほど。

 つまり、落馬以外は繋がっているのだ。



 第四公爵家の次女は見捨てられる立場にあった。

 治癒魔法が執行される序列に入っていない。

 


 それを覆す為の婚約。

 第二王子様の婚約者という事は、行く行くは王族に上がる事になる。

 準王族的な、そんな所。



 故に落馬した直後に婚約が結ばれたのだろう。

 婚約者なら仕方がない。

 治療魔法の執行。



 更に世迷い言を言い出す前に、秘密を強制共有させ、国を出て行く選択肢を潰した。

 いずれは分かる事だから、まあ早めに言っとく?

 抑止力として。みたいな?

 王家の秘密を知る者、王国と共に生き王国と共に死ぬ。


 そんな所だろうか……。

 先手必勝ね。



 治癒魔法といえば、非常に汎用性が高いというか……早い話が引っ張りだこだ。

 聖者といえば、大概、国中を巡り人を助けるのが常道。



 だがしかし、行き過ぎると過労死が待っている。

 魔力は枯渇し、生命力はすり減る。



 現実問題制約が必要だよね。

 という話なのだろう。


 

 夢も倫理もない話だが。

 


 例えば家族に限るとか?

 国王周りに限るとか?



 東に出向いている間に、王が毒を盛られたらどうする?

 西に出向いている間に、王妃が事故に合ったらどうする?



 治癒魔法の使い手は王都にいなければならない。

 王族の至宝だから。



 そして治癒魔法の存在を知る者は、少なければ少ない程良い。

 そういう事なのだろう。


 

 

 彼は私に治癒魔法を施す為に婚約した。

 つまり彼の為ではなく、私の為に婚約したという事になる。



 なぜ?



 なぜ、彼は私を助けてくれたのだろう?

 自分の身を切って助けてくれたのだ。


 

 自分で言うのもなんだが、私は真実取り柄のない娘だ。

 どころか生かして置くと害悪ですらある。

 なんせ悪役令嬢だし。



 悪役令嬢は良くて国外追放。

 悪ければ身も蓋もなく殺される。

 見て見ぬ振りが定石だろう。



 言わずもがな、私は王族ではない。

 国にとって重要な、宰相や将軍でもない。



 死んだ所で誰が困るというのだろう?

 王族しか知らない治癒魔法を掛けるに値しない。



 我が家は腐っても公爵家。

 貴族の中ではトップ中のトップだ。

 遡れば王族の血が入っている高貴な家柄。



 けれど治癒魔法の有無は伝わっていない。

 公爵家に伝わっていないものが、他の貴族に伝わるだろうか?



 否だ。やはり王族の秘。

 どちらかというと海洋国フィラルの。



「あの、考えてもわからないのでぶっちゃけて聞きますが、私を助けて何かメリットがあったのですか? 無いですよね?」

「……まあ、無いですね」

「じゃあ、何で助けたんです?」

「………」



 王子は少し考え込む。



「まあ、メリットで助けた訳ではないという事です」

「じゃあ、何を理由に助けたんですか?」



 前世の法治国家ですら罪に問われない。

 保護責任者遺棄致死傷は同級生には適応しないだろうし。

 

 そもそも秘事なのだから、助けない方が推奨される。

 治癒魔法の存在を、広く知られたくないのだから。



「そろそろダンスパーティがあるじゃないですか?」

「ありますね」

「ミシェールは誰にエスコートを頼むつもりでしたか?」

「?」


 誰に頼む?

 と言われても、誰も思い浮かばない。



 そして誰にも誘われていない。

 ………。

 ミシェールって寂しいのね?


 そうなってくると、最早身内しかいない。

 カールトン公爵である父か、二歳年下の弟だろうか?

 

 個人的に父よりは弟の方が頼みやすいし、居心地も良い。

 となるとーー



「弟のキースでしょうか? それ以外思い当たりませんよね?」

「でしょうね。あなたは性格が悪いですから」

「まあ、性格は悪いですよね。ですがそんなに広く殿方にまでバレていたわけではありませんよ?」

「まあ、見る人が見れば分かります」

「そうですか? 結構、浅めの演技力だったんですね。ミシェールって」



 今回は客観的分析を採用する。

 主観的分析を優先する時は、譲れないものの時だけと限定した方が角が立たない。


 故にルーファスがバレていると言い張るなら、それで由とする。

 拘る所じゃないしね。



 それより、私が弟にエスコートされる事と、私を助けた事がどう繋がるのだろうか?



「僕がミシェールのエスコートを申し出ようと思っていたのですよ」

「……なぜ?」

「同級生だからです」

「………」



 同級生だからと言われても納得出来るものではない。



「同級生はいっぱいいますけど?」

「そうですね。まあ他にもいますよね」

「じゃあ、なんで私なのですか?」

「さっきも言いましたが、あなたが性格の悪い令嬢だからです」

「性格が悪いから、王族に嫁いで苦しめというアレですか?」

「そうアレです」

「苦しませる為に、落馬して重体になっている私を助けたと」

「そうです」

「そうですか」



 王子様、矛盾してますよ?

 落馬で死ぬ事だって十分苦しいじゃないですか?



「ルーファス様」



 私は彼の手を取った。

 拗らせ王子、放って置けないわ。



「あなたはまだ十六歳なのです。そんな訳の分からない理由付けをする恋など捨てておしまいなさい。シンデレラのような、可愛い娘とドキドキする恋をするべきです。もっと甘い時間に身を委ねてみませんか?」

「そっくりそのままその言葉をお返しします。ミシェールは僕の事、性根の悪い王子と言いましたよね」

「言いましたね。挨拶みたいに」

「あなたは僕の事を性格が悪いと認識している。僕の事はお嫌いですか?」

「嫌いなら手なんか取らないわ。ルーファス様と話しているのわりと楽しいわね。楽っていうか? 取り繕わなくて良いっていうか、素っていうか、話が早いっていうか、異様に噛み合うっていうか……」

「そういうことです」

「そういうことなの」

「僕にはね、性格の悪い高慢ちきな令嬢くらいがピッタリなのです」

「………」



 へー……。

 つまりはこの王子様は、十六歳にして既に楽な婚約者が欲しいと言っている訳だ。


 口の悪さや性格の悪さに驚かない素でいられる人が良いと。


 その上、王家に嫁いで苦労させても、何も感じない不貞不貞しいタイプなら尚よしみたいな。




「参考までに聞かせて欲しいんだけど、姉じゃ駄目なの?」


 悪役令嬢が良いなら姉の方が打って付けだ。


「あれは論外です」

「なぜ?」

「手に負えません」

「……手に負えないのね」

「ええ、犯罪者擦れ擦れですよね。やってる事が笑えません」

「まあ、そうね」

「あんなの王家に入れたら死人が出ます」

「……確かに笑えないわね」

「ええ、洒落になりません」




 私と王子様は何故かそっと溜息を付いた。



 確かにこの王子様と私、タイミングが合うわね。溜息まで同時だなんてどうなんだろう。  

 同族っていうやつ?



 私の計画は前途多難である。








いつもお読み頂きありがとうございます。

また、ブックマーク&評価をして頂いた方、

ありがとうございます。


この話にてストックしていた話数は全て

投稿済みになりました。

以後不定期投稿になるかと思いますが、

書き続けて行ければと思います。


少しでも作品を気に入って頂いた方の中で、

ブックマーク&評価をしていない方がいましたら、

執筆の励みになりますので、

入れて頂けたら嬉しいです!

宜しくお願いします。

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