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【百七話】大動脈とそこから分岐する動脈




 魔力による止血が済んだ所で、処置室に移す。

 処置室と言っても客室みたいな所で、繋ぎの間とベッドルームの二部屋。

 ベッドルームはツインだ。



 王宮内で泊まる方のために用意された部屋だと思う。

 夫婦とか親子とか兄弟とか。



 そういう近しい関係の人が二人で相部屋で泊まっていく事が想定された部屋。



 もちろん、同僚などと相部屋でという可能性もあるが。

 その場合は、繋ぎの間はないと思う。



 いきなりベッドルームで充分だ。

 つまりは王宮内の部屋の中でも、間取りの広い部屋と言うこと。



 まあ、ぶっちゃけると身分の高い人が泊まる部屋。

他国の王族でも行けそうな感じ。



 手前側のベッドにキースを寝かせると、厳重にカーテンを閉め、室内の明かりを出来るだけ多くして、手元や患部が見えやすくする。



 手術もそうだけど、やっぱり床に寝た人間を処置するのは視覚確保しにくい。



 テラスなんて。

 暗いわ。

 床だわ。

 雑菌入るわ。



 どれだけやりにくかったのか、想像に難くない。

 速やかに部屋に移したいわよね?



 ブレットやセイやその他令息方が、視界を遮断してくれていたが、見られていないと思っても、やっぱり少し落ち着かないものだ。



 第三王子様と言えば、この世で十本の指には入るだろう身分の高い人間。

王族ですし。

 というか王子だし。



 その人物の怪我の処置というのは、見せるべきではないのだ。



 そもそも卒業ダンスパーティーで王族が刺されるなんて、どうフォローしようが大事だ。



 これだけの怪我を負ってしまった以上、内々で処理なんて、有り得ない。



 私はベッドに寝かされたキースの様子を見守る。



 見張りというのは、人が出入り出来る所に立つ。

 壁に注目して立っても意味がない。


 出入り口のドアの外側左右にアーロンの友人の令息方二人。

 内側に一人。


 繋ぎの間の窓にアーロン。


 そして繋ぎの間の入り口にブレッド。


 ベッドルームの窓にセイだ。


 人口密度、高くない?



 そして何故か最重要ポジションであるベッドの脇。



 ルーファスは当たり前として。

 その横に私。

 向かいにティアナ・オールディス。



 ティアナ・オールディスが何故かポールポジション何ですけど!

 そこ!?

 と突っ込みたい。



 テラスの柵に括り付けたシンデレラは衛兵に連れて行かれた。

 たぶん地下牢に行くのじゃないかしら?



 ティアナ・オールディスの時とはまるで違う。

 そもそもアレは、元第三位公爵家令嬢と現第四位公爵令嬢の毒の掛け合い?



 というようなもので、殺人未遂の確証は出ていない。

 証拠もない。



 毒を持参した令嬢というのはかなり怪しい存在だが、というか普通じゃない。

 が、私は毒を飲んでいないので、実際微妙だ。



 しかしシンデレラは違う、完全な現行犯捕縛だ。

 証拠もある。

 目撃も複数有る。



 謀反とは時の為政者を打つことで、王子というのは為政者の子供となる。

 兵を挙げた訳ではないが、王子に手を挙げることは、主君に逆らう事だ。



 普通に考えて死刑。

 成人前の女子と言うのは、まかり通るだろうか?



 第四公爵家は第三公爵家なんかより、ずっとマズい立場になったわ。

 爵位返上の上、お取り潰し……。



 笑えない……。



 だがしかし。

 そこは今は考えるべき事じゃない。



 私はベッドの横に膝立ちになる。

 そして手を合わせた。



 どうか、死なないでね。

 キース。



 私は、走りながら、ずっと考えていたのだ。

 彼の傷の事を。



 シンデレラは私の左胸を狙っていた。

 そして右からキースが庇うように入って来たのだ。



 彼の背は私と大差ない。

 つまりは、位置から考えて右胸に刺さった訳だ。



 しかも下向きに刺さっていた……。



 あの出血量。



 出血の臓器と呼ばれている肝臓が傷付いたのではないだろうか?



 大量出血の原因は二つ。


 大血管系を傷つけたか?

 内臓を傷付けたか?



 どっちかなんだと思う。



 胃や腸の場合は腹膜に血が溜まるし。

 肝臓、脾臓は十五分でデッドゾーンだ。



 肝臓だった場合、ちょっとギリギリではないだろうか?

 私の合わせた手の平から、冷たい汗が滲む。  



 目が血走りそうです。

 いえ、きっと今の私って、凄い形相ですよね?



 まあ、そんな事は些末な事です。

 人の命の前ではーー略ね? 






誤字報告ありがとうございます!

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