【九話】 拗らせ王子の治療開始
スピード婚約ですね?
治療と言っても、何からすれば良いのかしら?
私の目的は至ってシンプル。
ダンスパーティでの断罪イベント&シンデレラの婚約だ。
その為には、必ず王子様という存在が必要になって来る。
王子様抜きで、話なんか進みようもない。
目の前の男はその王子様の一人なのだ。
こんなチャンスは逃したくない。
というより、とっとと話をまとめて進めたい。
ちょっと斜に構えていようが、この際細かい事は気にしてはいられない。
彼は打って付けのターゲットなのだ。
しかし、その気のない王子をその気にさせる為にはどうしたらよいのだろう?
シンデレラの一番の売り、見目という要素には食いつかない。
でもね、彼女の売りは見目だけじゃないのよ?
意外に心根も優しい子なんだから。
「ルーファス様、シンデレラとは話をした事がありますか?」
「ここに来た時に、必要最小限の遣り取りを数回」
「というと、私の治療に何回来たんですか?」
「十四回です」
「!?」
それ毎日なんですけど!?
暇なの!
やっぱり十四日間眠っていたのか。
シンデレラの言葉じゃなくて指の本数が正解でした。
「毎日ですね?」
「ええ、毎日です」
「何でまた?」
「容態が気になりましたので」
「……そんなに、性格の悪い令嬢が気になりますか?」
「気になりますね。というか毎日治癒魔法を使わないと死んでましたよね」
魔法! 治癒!
やっぱりあったんだ、魔法。
魔法万歳!
これでカボチャの馬車が用意出来るわ。
私は一ミクロンも使えないけど。
アレ?
使えないわよね?
ミシェールの記憶に全くないもの。
というか、この世界に魔法があるかないかを、この世界の人間であるミシェールが忘れていて良いもの?
あり得なくない?
「ルーファス様、治癒魔法をお使いになられる?」
「使えますね。内密ですが……」
「内密?」
「母はそもそも海洋国フィラルの出身ですからね。フィラル国の王族は使えたり使えなかったりです。母は使えませんが、フィラル国、現国王陛下。母の兄ですが、使えますよ」
そうなんだ。
全然知らなかったよ。
内心で吃驚してます。
王族にだけに伝わっている秘め事。
もしくは、王族の血の中にだけ伝わっている?
決して公にはされていない。
秘中の秘。
それをなぜ私に言った?
ヤバイ気がします。
さらっと聞いてしまいましたが、聞いちゃいけないやつじゃないですか? この情報。
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