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4. 生活パターン 2



「ありがとうございました」


「おうよ」


 決して優しくもなく、かと言って酷くもない返答を受け、フレッドは今日の夕のお仕事を終える事にした。


「よしっ。夕のお仕事はお仕舞いだ。さあ、帰ろう」


 やはり、決して楽しい作業でも、良い扱いでもないはずなのだが、そんな事は何とも思っていないかのような笑顔の少年は、元気よく家路につくのだった。



 夕のお仕事でそれなりの銅貨と食料を確保した後は、ぼろ小屋に戻ってのお食事と、今日の活動を思い返しながら日記を書く。


 それは誰も読まない活動報告なのだが、フレッドにとっては自身のスキル等の確認作業をまとめられる良い機会となっていた。



 流石にもう暗いので、生活魔法の『ライト』で小屋を照らし、黙々と作業に当たる。


 暫くすると、小屋の扉が乱暴に叩かれ、男のものと思われる声が響いた。



「おいっ。外まで臭いだろうが。帰る前にクリーンを掛けなさいと言ってあるろだうが。まったく、よくこんな所で生活できるものだ」


 などと注意と感想を受け、追加で仕事を頼まれた。


「ご、ごめんなさいっ。《クリーン》!」


 と急いでクリーンを掛けたのだが、その男が扉を開ける事はなかった。


「ああ。そうだった。また頼む」


 これだけ言い残して去って行った。



 フレッドもフレッドで、確かに毎回言われているのだが、つい早く帰りたくなってクリーンを掛けるのを忘れているのだ。


 そう言われても気付かないくらいに集中している時もあるので、本人はそこまで頻繁に言われているとは思っていないのだが。


 臭さに慣れてしまった弊害なのだが、フレッドは1人なのだから仕方ない。これが普通だと思っているのだから。


 ぼろ小屋が狭いお陰で臭いも籠っているのだが、ぼろ小屋のお陰で隙間風も入る。だから外に臭いが漏れてしまうのだが。それがいいのか悪いのか。恐らくいい事ではないのだろう。普通ならば。



 ぼろ小屋の隙間風のお陰で気付いた事もある。ゴミ箱設置の有効活用だ。設置できるゴミ箱の数は『5』だ。今では1つは『便利収納保管箱』として活用しているので、残りの4つを使っての小屋内小屋の作成。


 ぼろ小屋の壁代わりにゴミ箱を使ってみたのだが、これがまた思った以上に快適で、眠る前には扉のある壁にも設置してやる事で、鍵代わりににもなってくれていた。物理的に入れなくなるのだから、鍵換わりというのもおかしいが。


 それに、接触部分もしっかり調整すれば、隙間風など一切入って来なくなった。歪みのない直方体だからこそ出来た芸当だろう。まさに神業か。


 それなりに天井高もあって天井は空いてたから良かったが、仮に全て塞いでしまっていたら、数日後に遺体となって発見されていたかもしれない。窒息死。フレッドが思いも付かない死因によって。



 ゴミ箱が設置されている間は動かない。動かせない。フレッドの意思によってでしか回収できないゴミ箱の壁。どこまで耐えられるかの確認は出来ていない。残念ながら手伝ってくれる人も、手伝いを求める気もないのだから仕方ない。


 ただ、もの凄く頑丈でびくともしない壁。ゴミ箱なのだが、そこまでの強度、耐久性が必要なのだろうか。疑問は残るが、そういう仕様なのだ。これも受け入れるしかない。


 フレッドにとってはそこはどうでも良かったみたいだが、これが何かと有効活用も出来る壁、足場となるのだが、それはまた別の話。




 話は戻り、毎朝、礼拝の後に教会のゴミ処理はしているのだが、たまにゴミが多いとこうして呼ばれる事がある。仕事というか、ゴミ処理という雑用を頼む為に。


 勿論、金なんてもらえないし貰うつもりもなく、言われるがままに置いてあるゴミを処理して行く。


 今では1日に200回も処理できるのだから余裕のはずなのだが、フレッドは、スキルの確認前で良かったと心からほっと安心するのだった。



 基本的には、眠る前には全て使い切るようにしているのだ。毎日毎日。くる日もくる日も。雨であろうと雷が鳴ろうとも。暑い日も寒い日も。


 だからこそレベルが上がるのも早く、様々な確認が出来ているのだが。本人は楽しいのだから苦とも思っていない。環境によって効果が変わるのか。その程度にしか思っていなかったりする。



 雨が降っても屋根を作れるし、雨水の処理の確認も出来るので、逆に喜んでた時期もあったくらいだ。


 その応用でゴミ箱を横向きに設置したり、逆さまに設置できる事にも気付けた。


 落ちている物なら、処理可能な物なら、ゴミ箱に入っていると認定されればしっかり処理できた。これなら、態々ゴミを拾い上げる事もなく、場合によってはいちいちゴミを移し代える手間が大幅に軽減される事になる。


 これは時と場合にも依るので、町中ではあまり使っていないだけの事。1度、お客のゴミ箱もまとめて処理してしまいそうになった為、怖くて使ってないという理由もある。



 ささっと教会の追加ゴミを処理し、いつもの楽しい確認作業に入る。今日は何を確認しようかな。なんて考えているだけでも幸せな時間が流れて行くのだが、それはそれ。


 フレッドは日記を読み返したりしながら、今夜も暫し確認作業をしてから眠る事になる。



 教会員の生活規範に『早寝早起きを基本とする事』とあるだけに、それを破らない範囲でだが。当然のようにフレッドの事など気にする者は居ない。


 時に明け方まで集中してしまった事があったのだが、何も言われた事はなかった。だからフレッドの中では『早寝早起き』の定義が曖昧になっているのだが。それを注意する人も、相談できる人も居ないのだから仕方ない。



 それから数日後、またしても扉越しではあったが、フレッドにとある命令が下る事になった。


『身体は常に綺麗にしておく事』


 教祖様からの命令という形でフレッドに告げられた。これはフレッドだけに下った命令なのか、それとも教会員の生活規範として加えられたのか。


 結果として後者となったのだが、フレッドの行動が教会の規範を追加させた。まさか自分の行いがこんな影響を及ぼしていたなんて、そんな事は微塵も思っていないフレッドなのだった。



 これにより、フレッドの無頓着な汚れや臭い生活が終わる事になった。これは確実にフレッドの為になったのだが、フレッドにしてみば、教会法にある所の『教祖様の言う事は絶対である事』に従っているだけだった。


 そして、他にも改善された教会員が数名居たと言う事は特に語られる事はない。


 


 朝。


 フレッドの朝は日の出前にやってくる。日の出が近くなると目が覚める。これは、孤児院で皆で生活していた時に身に付いた習慣だ。


 誰よりも早く起き、誰よりも早く支度を済ませる。コミュ障故にそうなった。なるべく1人で居られるように、余計な会話をしなくて済むように。


 そして、純粋故に教会の規範を守りよく働いていたのだが、それを評価する者は居なかった。


 教会で大事なのは、あくまでも上納金と教会員集め。その他の雑事など、雑事以外の何ものでもなく、どうでもいい作業だったのだ。


 フレッドの性格のせいというのも少なからずあるのだが、それは、過激な思想を持った武闘派集団だったのだから仕方がなかったのかもしれない。


 新興宗教のトラッシュブルクン教。後にこの世から消える事になるのだが、それはまた別の話。



 1人で生活するようになった今でも、この習慣だけは残っていて、起きて直ぐに『クリーン』を掛けて身を浄め、軽く朝食を摂る。


 朝食と言っても、残り物のパンや冷めた料理。腐りかけの果物なんかもあったりする。


 パッと見ただけなら、それなりに豪華な食卓に見えるのだろうが、実際は昨日の残り物が殆どで、食卓なんて立派な物があるはずもなく、ただの板を重ねて置いてあるだけの台だ。


 ゴミ箱を横置きや逆さ置きして台代わりにする事も出来るのだが、今は小屋の壁として使用している為、そういった使い方はされていない。


 食後は教会で礼拝をして、外に置いてあるゴミ箱の処理をする。そしてここからフレッドの朝のお仕事が始まる。



読んで頂きありがとうございます。

3日目にして、『12』PV。こ、こんなものです。

振り出しに戻っただけ。ふりだしって便利ですよね。

出汁の方ですけど。

私は負けません。

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