少女と妖精4
これまでに発見された旧世界の遺物は数えきれない。どのように扱うのかさえ不明な遺物や現在の技術では加工不可能な硬度を持つ素材がたくさん存在する。
その中にはもちろん文献も数多く当時のテクノロジーや軍事的な資料は発見されている。とは言え未だ解明していない事柄のほうが遥かに多いのだが…
—――それでもこれまでに一度だって当時の人々の生活や何を思い考え生きていたのか、些細な日常の記憶を今に伝えるモノは一つも見つかってはいない、いなかったのだ。
ましてや感情を伝える文章など皆無だった。だからこそクレアの心はその一文に奪われた。
「…愛――――」
刹那、空間が揺れたように感じた。あるいはクレアの心が震えたような…そんな違和感。
――「――レア! クレアッ!! 聞いてるの?」
「えッ?」その声で現実に戻される。
「クレア…大丈夫かしら?急にぼーっとしてたわ!…それより何か良くないモノが近づいてるようね」
言われて初めて気が付いた。先程とは明らかに異質の―――心がざわめき立つような、不穏な違和感があり得ない速度で音もなく忍び寄る。
『ソレ』はすぐに姿を現した。否現すという表現が正しいのかわからない。
それまで無かったものが気付くとそこに元々存在していたというのが一番適しているように思えた。
不明瞭で明らかにそこに存在していい筈がない。だが確実に『ソレ』は存在していた。
嫌悪感――とでも表現すればいいのだろうか
目に入った瞬間に心がざわつき理由もわからない恐怖に身を包まれる。
蛇に睨まれた蛙ならばまだ良かったと思えるほどに『ソレ』を認識した二人は感じ取ることができた。
―――黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒―――
これは関わってはいけないものだ。
暗い地下でカンテラの仄かな明かりだけが頼りのその場所で、はっきりと闇を認識した。
「――ッ…バグ?なんで――」
言い切るよりも早くアティが動き出す。
闇から不気味に伸びる手を躱しながら叫ぶ!
――「何ぼーっとしてるの!?あんなモノが現れた原因なんてわかるはずないわ!!」
普段は落ち着いた猫撫で声のアティが焦りながら語気を強めた。
「アレに捕まったら最後、心まで喰われてしまうか!!…良くても精神汚染よ!妖精たる私たちならともかくクレアみたいな生身の体で耐えれるものじゃないわ」
そうだ、バグとはそういう存在だ。人を喰らう闇。
「…ッく、わかってる」…そう…(そんなこと、わかってるんだよッ!!また、また奪うのかッ、私から全て、すべて、スベテ)
頭の中をかき乱されるような思いが!!怒りが!!憎しみが!!
クレアの中で大きく膨れ上がる。精神を汚染する闇『バグ』の影響は本人さえ無意識のうちに心に忍び寄る。
そして負の感情を読み取り闇は蠢く。暗く世界を蝕んでいく。
はじめまして、じぎたりすです。
粗末な文章ですが感想などいただければとても喜びます。
想像したものを文章にするのは難しいですね。
少女と妖精はこのお話で終わります。
(話はまだまだ続きます…もうしばらくお付き合いください)