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ご指名はサイコパス^^  作者: 麟^2
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004 初めてのお使い的な

出来るお嬢さんウルスカさんの事だからそこまで心配はしてはいなかったが…


「クソ寒い!」


雪がまだ残る緑深い森の中にポツンと立っていた。鼻腔が寒さでひりつくが緑と土の匂いが強い。雪解けの泥路脇から新芽の芽吹き。


「春先…か?」


温暖化なんて無縁な世界だろ。春でも寒い…いや待て、冬ならもっと寒い!?寒いじゃなく厳しいってヤツか?


―――人里離れた場所なのか、森を抜ければ街か村でも見えるのか。少し泥濘んでいる路には足跡や轍が残る。


「馬車…か?」


迷子と言えなくもない状況だが、まぁ考えても然程意味がない。季節が分かっても周期が分からない。方位が分かっても、人里までの距離感が分からない。文明規模が分かっても、今の俺に助けになる事はない。


(勇んで出てきたはいいが、やることコレしかないな)


カレー食おう…


辺りを散策しながら道端の朽ちた倒木を見つけ腰掛けた。


(失敗したかもな。ナビ的な守護精霊でも憑けて貰えばよかったか?代々木くんに憑いてるからいいか。モンスターや獣の類いがカレーの香りに誘われて出てきたら…武器無ぇな)


気持ち萎びたサラダを掻き込んで一先ず武器になりそうな得物を探して周囲を伺うが、棒にしかなり得ない木の枝がただ見付かるだけだ。(現代人は平和だね…)十徳ナイフでも持ってれば違ったかもしれないが、残念ながらあるのはフォークにスプーン。手持ちのフォークが頼もしく見える時が来るとはね。


―――


「ほぉ、旨そうな匂いじゃのぉ」


(なんだこの爺さん?)


いきなりだった。ボロいローブを纏った片眼の老人が気付くと目の前に立っていて、珍しいモノを見るように俺を…俺じゃなく正確にはカレーを凝視していた。


「ワシに寄越さぬか?」


「は?」


「その旨そうな匂いをさせているモノをワシに寄越せと言っておろう!」


「…くれてやる理由が無ぇだろ?」


カレーを見て、俺を見て、またカレーを見る。行き倒れてるのでもなく、なかなか矍鑠(かくしゃく)としてやがる見ず知らずの爺さんに譲る理由はない。この後何が起こるとも知れない。食えるときに食っておくべきなのだ。


なのだが、爺さんは頑として動かない。俺にしても従う理由はない。平行線を辿るだけだ。


「しつけーな、やらねーよ。俺のメシだ。って、テメー、ジジィ!?」


この老害、事もあろうに俺から引ったくる様にカレー奪い、一心不乱に食べ始めやがった。


(老害かよ、初エネミーエンカウントは老害か…)


ウマイ!

ん~辛い!

が、後を引く旨さと辛さじゃ!

こんな食べ物があるとは。

手が止められん!


ジジィが何か言ってるが、最早耳には入らない。


(丁度いいか…物は試しだ)


沸々と湧くある感情に委ねるままに(軽い気持ちで)()()()()を入れた。


▼▼▼


結論から言ってしまえば特に“コレ”と云う“モノ”は何も感じなかった。


まぁ、今ではなくこれからじわじわと実感が湧くモノなのかもしれないな。


一歩一歩踏み締める足取りを確認しながら“ソレ”に向かって歩み出す。


雪で靴の中グチョグチョ最悪だな

トカ、

木に積もった雪が吹き飛ばされ、舞い散って綺麗だな

トカ、

森林破壊はイケないな

トカ、

思い浮かんだのはそんな事。


100メートル強は森の中を進んだか。一直線にへし折られた木々で目印には困らない。(まさかこんな事になろうとはね…)ぬかるむ足元から僅かに視線を上げれば、胸の真ん中から槍の生えたジジィが刺さる、一際大きな大木まであと少しの処まで来ていた。


▼▼▼


ツンツン…ツンツン…

おまけにツンツン…


拾った枝で念には念を十二分に入れて、ジジィを刺激している。仕方ないだろ?殺した経験は無いし、元来生物はなかなか死なないらしいじゃん?ショックで仮死状態なだけかもしれんし、死んだふりしてるのかも。ビビってるわけじゃないが、そう見えても状況的に仕方なし。こっちの世界では威張れないのだろうが、俺達の世界の一般人は殺しの経験値が圧倒的に低いんだ。小さな事から積み重ねていかなきゃならないんだよ。


「まぁなんだ、動物やモンスターから始めるべきだったのは分かってはいたさ」


(初めての殺し、か…SorryNotSorry…)


ジジィの死を確認し、誰にも見られていなかったからか掌を合わせて感傷に僅かに浸った。


▲▲▲


「なぁ、人の子よ。無駄じゃ止めておけ」


スイッチ入れたら無理だ。目的達成までは切らない。幽鬼の様にゆらりと身を起こし、フォークを握る手には力と明確な殺意が込められる。


「ワシにはお前の攻撃は効かんぞ?」


「知らねぇよ」


効くかどうかはどうでもいい。目か、心臓か、喉か。目を潰しても死にはしないだろう。心臓は深くは刺せないうえに肋骨が邪魔だ。喉、いや頸動脈だな。


「命が無駄になるだけじゃぞ?」


「食い物の怨みは恐いんだぜ?知らないか?」


的を絞ってタイミングを伺う。


「お前がワシに献上した食べ物はなかなかに旨かった。褒美に命は取らないでおいてやる、それでよかろう?」


「献上?傲慢なジジィだな。そのニヤケ面が気に障るんだよ。代金代わりにオマエの命、置いてけよ。無いよりはマシだ」


「このワシに向かってよくそんな口が利けるのう…」


「お前が誰でも何でも興味無ぇ…」


今か今かと待ちわびて、我慢を堪え切れずに気持ちが逸る。


「せめてこの食べ物の入手方法なり作り方ワシに話してからにせんか?」


「まだ喋り足りねぇのか、ジジィ…」


もぉ待てねぇ…


「なぁに、教えたら用は無い、不敬なお前を軽く捻って罰してやろう」


「俺を満たす為だけに死ね」


早く試させろ!


Continued on the following page…

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